平成732日目

1991/01/09

この日のできごと(何の日)

【海部俊樹首相】韓国・盧泰愚大統領と会談

海部首相は9日午前、就任以来初めて韓国を公式訪問した。午後3時すぎからソウルの青瓦台(大統領官邸)で行われた盧泰愚大統領との第1回首脳会談では、朝鮮半島情勢、ペルシャ湾岸危機など国際情勢について約1時間意見を交換した。

今月下旬から始まる日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国交正常化本交渉を控え、大統領が「南北対話の進展に合わせて進めてほしい」と日本側の慎重な対応を重ねて要請したのに対し、海部首相は「朝鮮半島の緊張緩和に資する形で取り運んでいく」と述べ、韓国側の懸念に配慮しながら進める方針を公式に伝え、理解を求めた。

両首脳は湾岸危機に関し、イラクが平和的解決のため局面を打開すべきだ、との認識で一致した。日朝関係改善に関連し、大統領は、特に北朝鮮が国際原子力機関(IAEA)の核査察を受け入れていないことに強い憂慮を示した。首相は「核査察問題は日朝本交渉でぜひ取り上げたい」と答えるとともに、昨年10月の金丸元総理訪韓時に大統領が示した。①韓国との事前協議②南北対話と連携③核査察受け入れーなど5項目を念頭に進める方針を確約した。

ただ同時に首相は「日朝正常化は日本の戦後処理問題の一つ」と指摘、日本として避けられぬ課題であることを強調した。

両首脳は、アジア地域の平和と安定のため朝鮮半島問題の解決が不可欠との認識で一致し、朝鮮半島の緊張緩和のため両国が協力することを改めて確認した。

首相は、昨年の韓ソ国交樹立など韓国の北方外交(対共産圏外交)を高く評価しながらも、今後の韓ソ関係の展開に関しては、北方領土問題を抱える日本の立場を踏まえ、緊密に連絡を取るよう韓国側に求め、大統領も日本側との十分な協議を約束した。

中国に対する第三次円借款再開などの対中政策に関し、大統領は、中国の一層の開放化は「日韓共通の利益」との観点から評価した。《共同通信》

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【海部俊樹首相】植民地支配で謝罪

訪韓中の海部首相は9日夜、ソウル市内の青瓦台(大統領官邸)で開かれた盧泰愚大統領夫妻主催の夕食会であいさつし、日韓間の過去の歴史について「盧泰愚大統領訪日の際、不当な過去について反省とおわびの気持ちを申し述べたが、このような歴史認識は、わが国国民が等しく共にするところだ」と述べ、改めて謝罪の意を表明した。

その上で、首相は「過去を忘れず、その反省を現在に生かしてこそ、曇りのない未来への視野が開けてくる」と述べ、日韓両国の友好関係の強化にはわが国の国民が歴史認識を深めることが直要であると強調。その視点に立って「わが国国民の(韓国の歴史、文化、社会への)理解を一層深めるよう努力する」との決意を明らかにした。

これに対し、大統領は「(首相の)韓国訪問は両国が未来志向的な同伴者関係をさらに進める契機となろう。両国は不幸な過去の残滓を洗い、人類共栄の21世紀に向かっている」と述べ、両国関係の明るい将来を確信しているとの考えを表明。さらに「開放と改革の時代的潮流が、この分断の凍土にも和解の春を促すよう日本国民の声援を望む」と述べ、日韓関係だけでなく朝鮮半島全体の平和と安定に向けての日本側の理解と協力を要請した。《共同通信》

【世界水泳】

水泳の第6回世界選手権第7日は9日、パースのスーパードロームで競泳5種目などの決勝を行い、女子400メートル自由形で千葉すず(大阪・近大付中)が4分11秒44の日本新をマークし、銅メダルを獲得した。《共同通信》

【米・イラク外相会談】

湾岸危機の和戦の行方を左右するベーカー米国務長官とアジズ・イラク外相の会談は9日、ジュネーブのインタコンチネンタルホテルで二回の休憩をはさみ約6時間半にわたって行われ、同日夕(日本時間10日未明)終了した。

会談終了後に記者会見したベーカー長官は、イラク側が平和解決に向けた新提案を行わず、事実上、クウェート撤退拒否の姿勢を示したことに「失望した」と言明。会談が物別れに終わったことを明らかにする一方、国連安保理決議が定めた撤退期限(15日)までに、デクエヤル国連事務総長の行う調停活動に期待する、と語った。

ベーカー長官の後に記者会見したアジズ外相は、双方が互いに立場を詳しく説明できたことに満足の意を表明したものの、会談の具体的成果には触れず、15日以降、米軍がイラクを攻撃すればイラクは応戦し、イスラエルも攻撃すると改めて警告した。

会談でアジズ外相は、フセイン・イラク大統領にあてたブッシュ米大統領の親書をベーカー長官から受け取ることを拒否した。外相は「書簡は(主権国家の)」元首間に示されるべき丁重さに欠けていた」との理由を挙げた。

平和解決の糸口がつかめるのではないかと期待を集めた米国とイラクの初の外相会談が、平行線をたどったまま終わったことで、開戦の危険をはらんだ軍事的緊張の高まりは避けられない状況となった。《共同通信》

ブッシュ米大統領は9日午後(日本時間10日未明)ホワイトハウスで記者会見し、アジズ・イラク外相がベーカー国務長官との会談で、イラク軍のクウェート撤退要求を「全面的に拒否した」と非難し、会談結果への失望を表明した。

その一方で大統領は「まだ遅くない。湾岸危機の平和解決は断念しない」と強調し、国連安保理決議が撤退期限と定めた15日まで、同盟諸国とも緊密に協議して最後の外交努力を続ける意向を示した。

この関連でデクエヤル国連事務総長と9日、電話で会談したことを明らかにし、事務総長がバグダッドを訪問して外交工作を展開することに反対しないと述べた。《共同通信》

【ロシア・エリツィン議長】北方領土はロシアが交渉

ソ連急進派のリーダーであるエリツィン・ロシア共和国最高会議議長は9日、訪ソ中の土屋参院議長ら参院代表団との会談で、北方領土問題について「ロシアの領土であり、ロシアが直接日本と解決すべきである」と述べ、ゴルバチョフ政権でなく、ロシア共和国が直接領土交渉の当事者であるとの考えを初めて示した。

持論である領土問題の「五段階解決論」の説明として語ったもので、議長は、第一段階として、ソ連指導部が領土問題の存在を公式に認めることを指摘した上で「残りの四つの段階はロシアが直接日本と解決するというのがわれわれの考え方である」と強調した。解決の内容に議長は触れなかったが「ゴルバチョフ大統領と相談する」と語り、大統領と領土問題で協議していくことも示した。

エリツィン議長は昨年11月、領土問題で連邦政府と共和国との間で事前の立場調整をし、ロシアの主張を尊重することで大統領と一致したと言われているが、今回の発言は、議長がさらに一歩踏み込んで、交渉当事者はロシアだけであるとの立場を明確にしたもので、今後の日ソ間の交渉に大きな影響を与えることになろう。

特に、大統領が議長の主張を受け入れることは考えられず、領土問題が、対立関係を続ける大統領と議長の政争に巻き込まれる可能性が大きくなった。《共同通信》

【東京都知事選】自民都連は鈴木氏

自民党東京都連と都議団は9日午前、党本部で合同幹部会を開き東京都知事選候補者問題について協議した結果、鈴木知事を擁立するとの基本方針を決定。これを受けて粕谷茂都連会長らが小沢幹事長と会い、鈴木氏擁立の線で公明、民社両党との調整を進めてほしいと要請した。

これに対して小沢氏は「自公民の枠を崩さないことが基本」とした上で、①10日に都選出国会議員を集め、鈴木氏擁立で一致できるか打診する②国会議員の合意が得られれば公民両党との調整に入るとの考えを伝えた。

これについて都連側は小沢氏が鈴木知事擁立決定を党本部も受け入れたと解釈している。

ただ小沢氏の条件に沿って鈴木氏擁立を決めるためには、自民党国会議員と公民両党の二重の関門を設定したことになり、公明党の首脳が鈴木氏擁立に難色を示していることを考えると、調整は振り出しに戻る可能性が強いとみられる。《共同通信》

【都議会公明党】磯村氏は注目に値する人

東京都議会公明党は9日午前、都議会内で執行部会を開き、都知事選候補者として名前の上がっているNHK特別主幹の磯村尚徳氏(61)について「注目に値する人」との認識で一致、公明党本部などから正式な打診があれば「前向きに検討する」との方針を決めた。《共同通信》

【政界メモ】“海部丸”の波も高し

○…9日、韓国訪問に旅立つ海部首相を見送った留守番役の坂本官房長官は「けさはえらく寒かったが、いい天気だった」と雲一つ見えない好天に、幸先良しと上機嫌。

しかし、その後の記者会見で世界注視の米イラク外相会談の見通しに話が及ぶと「僕に聞いたって分かるか。日本としても平和的に解決されることを念願し、全神経を集めて注目している」と一転表情を引き締め、会見後も「天気晴朗なれど波高し」。年明けて海外から押し寄せてきそうな荒波に坂本氏も心休まらず?

○…一方、この日、社会党の山口書記長も土井委員長ら中東和平代表団を成田空港で見送り。結団式であいさつした山口氏は「委員長が“やるっきゃない”と言ってきたことを思い出している。世界の人々が武力行使に反対し、反核、軍縮を望んでいる。アラビアンナイトにも“開けゴマ”の話もある。イラクに行って、和平の重い扉も重々しく開くことになるだろう」と熱弁を振るった。

傍らの土井委員長は神妙な様子で聞いていたが、経由地のパリから先の日程は空白のままで、肝心のイラクに入れるかどうかも定まらないだけに、「心ここにあらず」といった表情だ。《共同通信》



1月9日 その日のできごと(何の日)