平成2984日目
1997/03/10
この日のできごと(何の日)
【薬害エイズ裁判】安部英被告、初公判
薬害エイズ事件で、業務上過失致死罪に問われた前帝京大副学長安部英被告(80)の初公判が10日、東京地裁(大野市太郎裁判長)で開かれ、安部被告は被害者の血友病患者に対する非加熱血液製剤の投与について関与を否定し「当時は何ら疑念なく、医学界の定説だった」などとして、起訴事実を否認した。その上で「疑いを晴らすまでは死ねない」と無罪を強く訴えた。
弁護人も非加熱製剤によるエイズウイルス(HIV)感染の予見可能性などについて詳細に反論し「責任は厚生省などにあり、起訴は不当」と主張。検察側は午後の冒頭陳述で、医師、厚生省、製奏会社の「複合過失」とされる戦後最大級の薬害事件の経緯を指摘する。
この日の初公判は計5人が起訴された一連の事件の初審理。各被告の起訴事実の被害者は1−2人だが、法廷では死者400人余りを含む1800人以上もの被害者を出した薬害全体も検証される。
被害者の遺族側から被害者名を法廷で読み上げないように求める上申書が裁判所に提出されたことをめぐり、午前10時の開廷直後、検察、弁護双方から意見が述べられ、大野裁判長は「特殊性にかんがみて、一定の範囲で被害者名を匿名とすることを認める」との判断を示した。このため、起訴状は被害者名を「患者である被害者」として匿名で朗読された。
安部被告は起訴事実を否認し「被害者の死は誠に残念。医療の進歩が追い付けなかった。エイズの危険性を最も主張したのは私で、加熱製剤の早期開発を主張していた」と述べ、約10分間陳述した。
続いて弁護人が125ページに及ぶ意見陳述。①業務上過失致死罪の要件の業務性(責任を問われる立場にあったか)②予見可能性(危険性の認識)③結果回避可能性(非加熱製剤に代わるクリオ製剤の投与ができたか)をいずれも全面否定した。
さらに、東京HIV訴訟で国側代理人の検察官が今回の弁護側と同様、予見可能性などを否定していた矛盾を指摘し起訴の不当性を訴えた。
起訴状などによると、安部被告は1987(昭和62)年まで帝京大病院第一内科長などとして、血友病治療の方針を定め、所属医師らに指示するなどして患者への危害発生を防ぐ業務に従事。患者に非加熱剤の投与を継続すれば、高い確率でHIVに感染させ、死亡させることを予見し得た立場にあった。
しかし注意義務を怠り、85(61)年5月から6月にかけて、第一内科で血友病患者の男性に非加熱製剤のクリオブリンを投与させてHIVに感染させ、91(平成3)年12月に男性をエイズで死亡させた。
非加熱製剤の危険性について、安部被告は米国のギャロ博士に依頼した抗体検査で、血友病患者48人中23人がHIVに感染していることを知り、このうち2人が死亡した84(昭和59)年11月までには認識していたとされる。《共同通信》
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薬害エイズ事件で、業務上過失致死罪に問われた前帝京大副学長安部英被告(80)の初公判は10日午後も東京地裁(大野市太郎裁判長)で続けられ、検察側は冒頭陳述で、血友病治療の第一人者として絶大な影響力を持っていた安部被告と製薬会社との癒着が事件の背景にあったと指摘した。その上で、安部被告が注意義務を怠らなければ、被害者のエイズウイルス(HIV)感染は回避できたとした。
両者の癒着について、製薬会社から安部被告側への約1億円の資金提供に言及し、安部被告が製薬会社の損害を回避するため、輸入非加熱製剤から安全なクリオ製剤への転換を阻止したほか、加熱製剤の承認時期を半年遅らせた経緯を詳述した。
安部被告は製薬会社との癒着を指摘されたことについて、閉廷後の会見で「製薬会社が多少損をしても患者さんの方が大事という立場だ」と反論。資金提供については「個人的に使ったものはない」と述べた。《共同通信》
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【遠東航空128便ハイジャック事件】
台湾の国内線、遠東航空の高雄発台北行き128便ボーイング757(乗員乗客158人)が10日午後2時(日本時間同3時)すぎ、乗っ取られた。同機は約1時間後に中国福建省アモイの空港に着陸、犯人は間もなくアモイの公安当局に逮捕された。同航空によると、日本人は搭乗しておらず、乗乗客にけがはなかった。
同機は乗員乗客を乗せて10日夜、台北の松山空港に無事戻った。台湾当局は中国公安当局に拘束された犯人の早期送還を求めている。
1986年5月、台湾の中華航空貨物機が広州に着陸、機長が中国に亡命を求めた例はあるが、台湾の旅空機が乗っ取られ、中国に着陸したのは初めてとみられる。
台湾当局などによると、犯人は「劉善忠」と名乗る台湾居住の元新聞記者の無職男性、中国湖北省出身の外省人で、台湾軍勤務を経て、新聞記者になったという。ガソリンのような液体を体にかぶり、ライターで「火を付ける」と乗員を脅して中国へ向かうよう要求」た。「政治的迫害を受けた」としているが詳しい動機などは分かっていない。
アモイと福州の空港が当初、いずれも受け入れを拒否したが、燃料が切れかけたため、アモイに着陸したという。台湾空軍は戦闘機4機を緊急発進させたが、乗客の安全を考慮、進路妨害などの措置はとらなかったとしている。
中台間では93年から94年にかけ、中国の旅客機が乗っ取られ、台湾に飛来する事件が続発、双方の間で機体や犯人の身柄引き渡しをめぐる協議が行われた。《共同通信》
【民主党】沖縄県と協議
米軍基地視察などのため沖縄県を訪れた民主党調査団(団長・前原誠司衆院議員)は10日午後、大田昌秀知事らと会談し、米軍用地即別措置法の改正や、沖縄に駐留する米海兵隊の兵力削減問題について協議した。
前原団長は「日米特別行動委員会(SACO)の報告に甘んずることなく、さらなる基地の整理・縮小、兵力構造に切り込めるか探ってみたい」と述べ、兵力削減に積極的に取り組む考えを示した。
大田知事は「安保堅持と言っている政府の立場を傷つけない形で県民の希望をかなえるのに、一番効果的なのは兵力削減だと思う」と述べ、兵力削減に対する同党の姿勢を評価した。《共同通信》
【橋本龍太郎首相】「5.15メモ」公表を指示
橋本龍太郎首相は10日昼、諸富増夫防衛施設庁長官と田中均外務省北米局審議官を国会内に呼び、1972年の沖縄返還時に日米両国政府が交わした沖縄米軍基地の使用条件などに関する「5.15メモ」を早期に公表するよう指示した。
この後、首相は記者団に「中身の整理は大体できているようだ。翻訳するのに時間がかかる。予想していないことで時間がかかることもあるようだ」と述べ、軍事機密関連事項の公開などをめぐって、米側との調整が手間取る可能性を示唆した。《共同通信》
【政界談話室】
○・・・橋本龍太郎首相は10日、名古屋市の嫌煙家らが首相に在任中はたばこを吸わないよう求める訴訟を起こしたことについて国会内で記者団に問われ「ほう。それは知らなかった」とまるでひとごとのそぶり。在任中の禁煙については「だから(午前中の予算)委員会中は吸わなかったじゃないか」とはぐらかし、午後の参院予算委前には委員会室で堂々と一服。原告は「首相のヘビースモーカーぶりは健康な生活を保障した憲法に反する」と訴えているが、首相は「ぼくは約束しないよ」と早々と禁煙の拒否宣言。
○・・・新進党の西岡武夫幹事長はこの日の記者会見で、衆院税制問題特別委で新進党などが提案した特別減税法案の採決が見送られていることに不満をぶちまけた。「2兆円減税にどういう態度を取るか明らかにすることをちゅうちょしている政党がある」と批判の矛先は民主、社民両党に。「情報公開が議論されている時に、個々の議員の考えを公開しないのはおかしい」と情報公開法制定に熱心な両党を皮肉った。オレンジ疑惑で手痛い批判を浴びているだけに、嫌みたっぷりに逆襲していた。《共同通信》
【大相撲春場所】2日目
大相撲春場所2日目(10日・大阪府立体育会館)横綱、大関陣はそろって2連勝。横綱曙は小結土佐ノ海をはたき込み、貴乃花は突っ張りから玉春日を寄り切った。綱とりの大関若乃花は力強い相撲で剣晃を押し出し。武蔵丸は琴竜を寄り切った。貴ノ浪は取り直しの末、新鋭栃東を上手投げで下した。新小結の旭鷲山が小またすくいで安芸乃島に勝ち、初白星を挙げた。関脇貴闘力は2連勝した。《共同通信》
【在ペルー日本大使公邸占拠事件】ペルー政府側が対話拒否
日本大使公邸人質事件で、十日予定されていたペルー政府とトゥパク・アマル革命運動(MRTA)との10回目の対話は、政府側交渉担当のパレルモ教育相が同日、保証人委員会に欠席を通告し中止となった。交渉はMRTAがトンネル問題を理由に7日の対話出席を拒否して中断、今度は政府側の拒否で再開が遅れることになった。対話がいつ再開されるかは発表されていない。
教育相は同日午後4時半(日本時間11日午前6時半)記者会見し、欠席の理由について「対話再開の条件がはっきりしない」と述べ、MRTAに対し「一方的な中断のための(トンネル疑惑などの)口実によって、これまでの進展が後退すると懸念される」と批判した。しかし、ペルー政府は7日の記者発表で「保証人の協力で対話が再開されるよう期待する」と述べて、対話継続の意向を確認しており、今回の突然の出席拒否は交渉の主導権を取り戻し、有利に導くための政府側の揺さぶり戦術ともみられる。
日本政府現地対策本部筋も「深刻な事態とは考えていない」と述べ、交渉の流れに大きな変化はなく、対話が再開するとの見通しを示唆した。政府側の出席拒否を受けて保証人のシプリアニ大司教、ビンセント駐ペルー・カナダ大使は声明を発表。教育相が午後になって急に欠席の連絡を伝えてきたことを明らかにし、「対話の早期再開を期待する」と表明した。《共同通信》
【萬屋錦之介さん】死去
「錦ちゃん」の愛称で親しまれ、「笛吹童子」「宮本武蔵」や「子連れ狼」などに主演した戦後時代劇の大スター、萬屋錦之介さんが10日午後2時41分、肺炎のため千葉県柏市の国立がんセンター東病院で死去した。東京都出身。萬屋さんは昨年7月にのどのがんを手術、闘病生活を続けていた。
歌舞伎の名女形、三代目中村時蔵の四男に生まれ、3歳のとき、東京・歌舞伎座で、中村錦之助の名前で初舞台を踏んだ。
昭和29年、美空ひばりと共演した「ひよどり草子」で映画デビュー、東映の専属に。続く「笛吹童子」「紅孔雀」が大ヒット、時代劇のアイドルスターになった。
「織田信長」でアイドルスターからの脱却を図り、以後、「宮本武蔵」シリーズ、「反逆児」「武士道残酷物語」などに出演、時代劇の黄金時代を築いた。《共同通信》