平成1032日目

1991/11/05

この日のできごと(何の日)

【宮澤内閣】発足

自民党の宮澤喜一総裁は、5日召集された第122臨時国会初日の衆参両院本会議で、第78代、49人目の首相に指名された。宮澤首相は指名後、首相官邸での組閣に入り、渡辺美智雄・副総理兼外相、羽田孜・蔵相など内閣の陣容を決めた。


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この後、皇居での首相任命式、閣僚認証式に臨み、同日夜、宮澤内閣が発足。同夜11時半すぎから初閣議が開かれ、宮澤首相は「歴史的大転換期にある今日、進路に誤りなきよう責務を遂行したい」と説示。「新世界平和の秩序構築」「政治改革」「公正な社会づくり」「生活大国」を目指すとの首相談話を発表した。宮澤内閣は、来年夏の参院選挙での与野党決戦をにらみながら、政治改革や国際貢献などの主要課題に挙党体制で取り組むことになる。

首相は、初閣議の席上、内外の情勢が大きく変ぼうしていることを指摘したうえで、「全力を挙げて責務を遂行する」との所信を表明した。さらに、政治に対する信頼を高めるため、各閣僚の「率先垂範」「公平無私」と「職員の綱紀の厳正な保持」を要請。また「内閣は運命共同体」と強調し、閣議で決定した事項について、圏外で批判したりすることのないよう、「内閣の統一性」と「国政の権威保持」への協力も求めた。

閣僚人事について、首相は31日、綿貫民輔・幹事長(竹下派)、佐藤孝行・総務会長(渡辺派)、森喜朗・政調会長(三塚派)の党三役を正式決定、並行して閣僚人事の調整に当たった。

総裁選で2位に食い込んだ渡辺氏を副総理兼外相に起用、カンボジア和平実現後の国連平和維持活動(PKO)協力や対ソ支援、北方領土返還交渉に当たらせることを決めた。一方、今月末のブッシュ米大統領来日の際、新政権発足後、初の日米首脳会談で話題になるとみられるコメ問題への対応を考慮、農政通の田名部匡省氏(無所属)を新人ながら農相に登用したほか、農業問題の専門家である羽田孜・元農相(竹下派)を蔵相に、また、加藤紘一・元防衛庁長官(宮澤派)、近藤元次・前農相(同)をそれぞれ官房正副長官に充てた。

内政の重要課題である政治改革を担当する自治相にベテランの塩川正十郎・元官房長官(三塚派)を起用、通産、運輸、建設相ポストにそれぞれ渡部恒三・元自治相(竹下派)、奥田敬和・元自治相(同)、山崎拓・元防衛庁長官(渡辺派)を配し、手堅い布陣を敷いた。

大詰めの協議で総務庁長官、科学技術庁長官ポストが入れ替わり、岩崎純二・総務庁(河本派)、谷川寛三・科技庁(三塚派)長官に落ち着いた。

首相を除く20閣僚の派閥内訳は竹下派6人、宮澤派2人、三塚派4人、渡辺派4人、河本派3人、無派閥1人。このうち閣僚経験者と新人が10人ずつとなった。《読売新聞》

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【宮澤喜一首相】「品格ある国へ全力」

宮澤首相は5日夜の初閣議後、次の談話を発表した。

この度、私は、内閣総理大臣の重責を担うことになった。誠に身の引き締まる思いであり、我が国の進路に誤りなきよう全力を傾けてその責務を遂行してまいりたいと考えている。

国際社会は今、何百年に一度というような大転換期にあり、新しい世界平和の秩序の構築を模索している。こうした動きの中で、国連の役割が増大しつつあるが、我が国は、日米の緊密な協力やアジア諸国との友好関係などを不可欠の前提としつつ国連に対し最大限の貢献を行うなど国力に応じた役割や責任を積極的に分担してまいりたいと考えている。

政治改革は時代の要請である。私は、自らの反省の上に立って、政治改革に心血を注がれた海部前総理の志を継いで、真摯に政治改革に取り組んで行く決意である。私は、行政の姿勢を、消費者や国民生活、一般投資家重視へ転換し、公正な社会をつくりたいと考えている。

また、私は、国民一人一人が生活の豊かさを真に実感しながら、多様な人生設計ができるよう、21世紀を展望して、住宅や生活関連を中心とする社会資本の充実を図り、質の高い生活環境を創造して、所得のみではなく社会的蓄積や美観などの質の面でも、真に先進国家と誇れるような、活力と潤いに満ちた「生活大国」づくりを進めたいと思う。

このように、私は、わが国が、国際社会において名誉ある地位を占め、国民が誇りを感ずることができる品格ある国となるよう全力を傾注する所存であるので、国民の皆様の一層のご理解とご協力をお願い申し上げる。《読売新聞》

【海部俊樹氏】首相最後の日

宮澤新内閣がスタートする5日、海部首相は午前9時前に官邸入り、最後の閣議に臨んだ。心境を問われると、笑みを浮かべながら晩秋の日差しのこぼれる空を指さし、「けさのお天気のようだ。明るくてさわやか」。首相在任818日。続投断念を決めたひと月前の苦渋はかけらも見せず、海部さんのネクタイは最後の日も、さわやかさをアピールする水玉模様だった。

海部さんはすでに公邸から引っ越しており、この朝は、東京・千代田区三番町の私邸から幸代夫人に見送られて官邸へ。記者団に「2年3か月支えてくれた人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。激動の時代をここまでやってこれたのですから」と胸を張った。

お別れ閣議は、全員の辞表を取りまとめて十分余りで終了。他の閣僚も笑顔で、海部さんとともに2年3か月を完投した中山太郎外相が「気分はきょうの秋の空」と首相と同じような心境を話せば、関谷勝嗣郵政相は「(組閣で)今晩入って来るならいいんだけどな」とおどけてみせた。

閣議は終始和やかな雰囲気で、互いに握手する場面も。海部さんが「ごくろうさん」とねぎらいの言葉をかけると大きな拍手。近藤元次農水相が音頭を取り、お茶の乾杯で締めくくった。

その後、海部さんは、えんび服姿で、皇居での秋の叙勲の親授式に臨んだ。《読売新聞》

【ロッテ・金田正一監督】辞意表明

ロッテの金田正一監督(58)の辞任が濃厚になった。

同監督は5日、東京・西新宿のロッテ本社で重光武雄オーナーに今季の報告を行い、席上で最下位の責任をとって辞任したい意向を伝えた。

これに対し重光オーナーは「不成績は監督だけの責任ではない。契約期間ももう1年残っている」と強く慰留した。今週中にも金田監督と球団側が再度話し合うことになったが、「冷却期間を置いても、辞めるという考えは変わらない」と同監督の辞意は固く、ロッテは新体制で千葉へ移転することになりそうだ。

金田監督は1990年、有藤前監督からバトンを受け12年ぶりに監督として復帰したが、昨季5位、今季は最下位に低迷した。《共同通信》

【中国、ベトナム】正常化を宣言

ド・ムオイ・ベトナム共産党書記長とボー・バン・キエト首相は5日午後、中国公式訪問のため北京入りし、同夜、人民大会堂で江沢民総書記、李鵬首相と首脳会談を行った。

席上、江沢民総書記とド・ムオイ書記長は両国、両党の関係正常化を宣言し、79年の中越戦争以来続いた対立関係は完全に終止符を打った。

両首脳は、さらに(1)両国の正常化は両国人民の根本利益に合致するだけでなく、アジア、世界の平和、安定の利益ともなる(2)国家関係は平和共存5原則(領土・主権の相互尊重、内政不干渉、相互不可侵、平等互恵、平和共存)に基づいて発展させる–などの点で一致をみた。

また、江総書記は中越正常化は第三国に向けたものではなく、他国との友好関係に影響しない点を強調するとともに、中越が50-60年代のような関係にもどるのは非現実的と述べ、対米関係をはじめ対西側外交に配慮する姿勢を示した。《読売新聞》

【ハーグ和平会議】決裂

欧州共同体(EC)仲介のユーゴスラビア和平会議は5日、ハーグで全体会議を開いた。しかし、ECが準備した包括和平提案の文言修正をめくり、冒頭からセルビア、モンテネグ口両共和国と他の4共和国が激しく対立、決裂した。このため、ECが8日ローマで開く緊急外相会議で対ユーゴ済協力凍結などの制裁を発動することが、ほぼ確実となった。

ECは先月中旬に示したユーゴを現国境線を維持しつつ主権独立共和国のゆるやかな連合体とする和平提案をこの日修正し、セルビアの要求を入れた形で「希望する共和国の参加による連邦国家の存続」などを追加して盛り込んだ。

会議筋によると、この新提案に対し、独立を要求してきたスロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニアの4共和国は了承した。しかし、セルビア、モンテネグロ両共和国は、共和国だけでなく、「希望する民族の連邦残留権」をさらに要求。クロアチア共和国などに住むセルビア系住民を連邦内にあくまでもとどめようとする「大セルビア主義」の表れとして、他の共和国は一斉に反発。クロアチア代表などが「戦闘が続く限り、和平会議続行は無意味だ」と主張し、会議は1時間余りで終わった。《読売新聞》

【米・ブッシュ大統領】訪日を延期

ホワイトハウスは5日、今月末に予定されていたブッシュ米大統領の日本を含むアジア・太平洋諸国歴訪を延期すると発表した。

ブッシュ政権が公約していた国内経済活性化のための重要法案の議会審議が月末に大詰めを迎えることから、国内を留守にできないというのが主な理由。各種世論調査によると、大統領の支持率はこのところ急速に落ち込んでおり、来年の大統領選挙を控えて、ブッシュ政権としても、「外交」より「内政」重視にカジ取りを切り替えたものと見られる。

宮澤政権発足後、初の日米首脳会談の場となるはずだった今回のブッシュ大統領の訪日が延期されたことにより、日米関係“再構築”に向けての取り組みも仕切り直しを迫られそうだ。《読売新聞》



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