平成2320日目

1995/05/16

この日のできごと(何の日)

【オウム真理教・麻原彰晃教祖】逮捕

東京の地下鉄サリン事件で警視庁は16日、オウム真理教(本部静岡県富士宮市)代表で教祖の麻原彰晃容疑者(40)=本名松本智津夫=を山梨県上九一色村の「第6サティアン」内で発見、教団が組織的にサリンを製造、不特定多数の殺害を狙って使用したとする殺人・同未遂容疑で逮捕した。また午前11時までに、同容疑で教団「科学技術者」ナンバー2のW容疑者(36)ら、女性2人を含む幹部、信者計15人を逮捕した。

死者12人を含む5500人以上の被害者を出した地下鉄サリン事件は犯罪史上例のない宗教団体による無差別大量殺人と判明、発生から58日目で首謀者とされる麻原容疑者が逮捕され、解決に向け大きく動き出した。 捜査当局は、地下鉄事件の全容解明とともに監禁など教団絡みの事件の解決を急ぎ、長野県松本市のサリン事件や坂本弁護士一家失跡事件などの関連を追及する。

警視庁の井上幸彦総監は16日午前記者会見し「残存するサリンはない」との見方を示した。 警視庁は15日、麻原容疑者どサリンの原料調達、製造、実行行為などにかかわった計41人の殺人・同未遂容疑の逮捕状を取り、16日朝から全国の23都道府県で教団施設計130カ所を一斉捜索していた。未発見の容疑者についても発見次第、逮捕する。

調べでは、麻原容疑者らは共謀し、不特定多数の人を殺害しようと企て、あらかじめ上九一色村の教団施設内でサリンを製造。3月20日朝、東京の地下鉄3路線5本の地下鉄車両内にまいて、乗客、駅員ら約5500人を殺傷した疑い。

サリン製造は「化学班」責任者土谷正実(30)、「厚生相」遠藤誠一(34)両容疑者=いずれも犯人隠匿容疑で逮捕済み=らが中心となり、地下鉄事件の実行犯は事実上の「諜報相」井上嘉浩容疑者(25)が指揮。「治療相」林郁夫容疑者(48)=犯人隠匿容疑で逮捕済み=も実行犯に加わっていたとされる。

警視庁は16日午前5時25分、捜査員約2000人を動員し殺人予備容疑で捜索に着手。上九一色村では麻原容疑者の居室がある「第6サティアン」を中心に捜索した。 「第6」ではエンジンカッターやバールでドアをこ」じ開けて捜査員が施設内に入り、施設の3階床からつり下げられた隠し部屋に1人でめい想しながら潜んでいる麻原容疑者を発見した。一見したところ、体調は悪くなさそうだという。

同日、東京に護送され、午後0時35分、警視庁に到着した。 また、この日の捜索で、東京・南青山の東京総本部で岐阜県警が私文書偽造容疑で指名手配中の女性信者(33)を発見、逮捕、都内の施設2カ所から、子供計10人を一時保護した。

警視庁に逮捕された麻原容疑者は「目の見えない私がそんなことができるでしょうか。信じてもらえないでしょうけど」と容疑を否認した。《共同通信》

「ハルマゲドン」(最終戦争)後の「千年王国」づくりをうたう裏側で武装化を進め、地下鉄サリン事件への関与がささやかれた「疑惑の教団」。そのカリスマ的指導者の素顔は—。

オウム真理教の教祖、麻原容疑者=本名松本智津夫=は昭和30年、熊本県金剛村(現八代市)で7人きょうだいの6番目の四男として生まれた。先天性緑内障のため、熊本県立盲学校を卒業。努力家で学生時代には7度目の挑戦で柔道二段に。勉強好きで数学が得意だった。

幼いころから政治家を志望し、手相を見てもらうと「政治家になれるか」と必ず聞いたという。20代前半に上京。予備校に通って東大法学部を目指したが、受験に失敗。千葉県船橋市で針きゅう師となり、薬局も経営した。57年、偽薬を販売したとする薬事法違反事件で警視庁に逮捕された。

22歳からヨガなどの修行を始め、59年に「オウム神仙の会」を設立。「麻原彰晃」の名前は字画で決め、偉大な人物になるとの意味が込められているという。61年、ヒマラヤ山中で最終解脱、翌年「オウム真理教」と改称した。

平成2年の衆院議員選挙に教団幹部とともに立候補したが、全員落選。最近は糖尿病や肝臓疾患で体調を崩しているといわれていた。《共同通信》

村山首相は16日午前、オウム真理教の麻原彰晃教祖が逮捕されたことを受けて首相官邸で緊急記者会見し「製造されたサリンを関係者が隠匿、所持している可能性も否定できず、引き続き厳重な警戒が必要だ」とサリンによる類似事件の再発を警戒、政府が一体となって対応する考え強調した。

併せてオウム真理教をめぐる一連の事件の全容解明に全力を挙げる意向をあらためて表明した。

焦点のオウム真理教に対する宗教法人の解散請求問題に関し、首相は「そういうことになるのではないかと思う。(認可主体の)東京都とも十分連携を取って進めていかねばならない」と述べ、解散請求に前向きの考えを初めて明らかにした。

ただ、首相は解散請求の時期などに関しては「(文部省などの)関係者で議論してもらっている。時期や、具体的なことについては全体状況を見ながら検討したい」とだけ述べた。宗教法人法の改正についても「今度の事犯に照らし、関係者の議論の経過を踏まえて必要があれは検討しなければならない」と発言するにとどまった。

首相は今回の事件を振り返り「大変難しい事件だった。広範で組織的で、かつ宗教法人によるもので、警察はようやく山にたどりついた。若干の時間がかかり、苦労は多かった」と述べた。《共同通信》

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【オウム真理教・麻原彰晃教祖】隠し部屋「自分で出ます」

赤紫色の法衣姿が、深い霧の中に見え隠れする。執念の捜査で逮捕されたオウム真理教の教祖、麻原彰晃容疑者(40)が16日、鉄格子窓のワゴン車で警視庁へ連行された。地下鉄サリン事件で無差別殺人を指揮したとされる教祖は「第6サティアン」の隠し部屋に潜伏していた。

「オウム王国」の野望の果てに「ハルマゲドン」(世界最終戦争)を自作自演しようとしたのか。世界に衝撃を与えた毒ガステロの恐怖から間もなく2カ月。幹部信者も次々と捕まり「国民の期待にこたえた」と胸を張る井上警視総監。松本サリン事件や相次ぐ拉致など数々の疑惑に包まれた「終末の教団」は今、崩壊のふちに立った。

麻原彰晃教祖を乗せた結色のワゴン車が午後0時半すぎ、警視庁東側の副玄関に滑り込んだ。待ち構えた200人近い報道陣から一斉にフラッシュが光る。車内にはカーテンのすき間からわずかにのぞく長髪、ひげの見慣れた顔。 早朝の一斉捜索から約4時間後の逮捕、冷たい雨の降る山梨県上九一色村を出発して2時間。警視庁の周りに約50人の警察官を動員しての異例の警戒態勢の中、麻原教祖はアッという間に地下駐車場に姿を消した。

ワゴン車の後部シートに乗せられた長髪の麻原教祖は、赤紫色の法衣に身を包み、背筋を伸ばしたまま身じろぎ一つせず、目をつぶっていた。

教団“本丸”の「第6サティアン」中3階にある、高さ1メートルほどの秘密の小部屋でめい想中だった麻原教祖。病身と伝えられたが、やつれた様子もなく、捜査員が「逮捕する」と告げると「自分で出ます」としっかりとした足取りで歩いたという。妻子は1階の部屋にいた。

午前10時40分、深い霧の晴れ間から教祖を乗せた車がゆっくりと動き出し、高速隊のパトカーなどに先導され中央自動車道を警視庁に向かった。施設近くのプレハブ小屋からは、お経を読むような男女の声。小屋にいた約50人の信者は、列をつくった機動隊員に阻まれ教祖を見送ることはできなかった。男性信者の一人は「気持ちの整理がついていないので、コメントできない」と「尊師」の逮捕に複雑な表情だった。

この日は午前5時48分、機動隊員が「第6」裏側の出入り口ドアをエンジンカッターでこじ開けて突入。広い建物の内部は電気が消され、暗やみの中を懐中電灯を手に慎重に捜索した。建物にいた若い女性信者らが、次々に屋外に連れ出された。 建物内部は複雑な構造で、捜索は難航。関係者には一時焦りも見られたが、教祖逮捕にようやく安ど感が広がった。

出勤途中に自宅マンション前で銃撃され、重傷を負って東京都文京区の日本医大病院に入院中の国松孝次警察庁長官は16日午前9時45分すぎ、関口祐弘次長から「麻原容疑者逮捕」を電話で知らされると「警視庁をはじめ全国の警察がよくやってくれた。ありがとう。ありがとう」と話したという。《共同通信》

地下鉄サリン事件で警視庁が殺人などの疑いで逮捕状を取った41人のうちの1人が、オウム真理教付属医院の院長で教団「治療省大臣」林郁夫容疑者(48)=犯人隠避容疑で逮捕=だったことが16日、分かった。

調べに対し、林容疑者はサリンの入ったナイロンポリ容器を地下鉄車内に持ち込み、穴をあけた犯行の実行犯だったことを自供したという。

同容疑者は元ピアニストに対する監禁容疑で逮捕されていたが、逮捕後「元ピアニストが妊娠中だったのに薬物を注射し、反省している」などと供述したほか、拉致された東京の目黒公証役場事務長に自白剤を投与したことも認めていた。《共同通信》

警視庁は16日、地下鉄サリン事件の殺人・同未遂容疑で逮捕したオウム真理教代表で教祖の麻原彰晃容疑者(40)=本名松本智津夫=らの本格的な取り調べを始めた。また同日午後、すでに公務執行妨害容疑で逮捕していた事実上の教団「諜報相」井上嘉浩容疑者(25)と「科学技術省」ナンバー4の豊田亨容疑者(27)の2人を再逮捕、地下鉄事件の逮捕者は19人になった。

麻原容疑者は調べに対し「目の悪い私がそんな事件をやれるでしょうか」などと容疑を否認。他の容疑者も黙秘か否認の態度を取っているが、警視庁はこれまでの捜査や逮捕信者の供述で、麻原容疑者が指示し教団が組織的にサリンを製造、地下鉄事件を実行したのは確実とみている。

警視庁は同日、地下鉄サリン事件と目黒公証役場事務長拉致事件の捜査本部を統合、合同捜査本部を築地署に設置した。捜査本部は新たに逮捕した幹部信者の取り調べを突破口に、犯罪史上前例のない宗教教団による無差別大量殺人事件の全容解明を目指すとともに、事務長拉致事件など教団による事件の解決を急ぎ、長野県松本市のサリン事件や坂本弁護士一家失跡事件などとの関連を追及する。

この日、静岡県富士宮市の総本部など全国の130カ所で行った一斉捜査は、夕方までにほとんど終了した。一部施設では17日も捜索、検証を続ける。《共同通信》

【東京都庁小包爆破事件】

16日午後7時ごろ、東京都新宿区西新宿の東京都庁第一庁舎7階の知事秘書室で青島幸男知事(62)あての郵便物が爆発、郵便物を扱っていた知事秘書のUさん(44)が倒れた。Uさんは病院に運ばれたが、左手のすべての指を吹き飛ばされるなど両手に重傷を負った。

青島知事は議会棟で開会中の都議会に出席しており、無事。知事秘書室内にはほかに職員6人がいたが、けがはなかった。 新宿署は、青島知事を狙った爆弾テロ事件の疑いがあるとみて、殺人未遂などの容疑で捜査を始めた。昨年12月、東京都千代田区の日本テレビで起きた郵便物爆発事件と爆発物の構造が似ており、関連を調べている。

調べによると、郵便物はビデオテープを入れたほどの大きさで白い紙で包んであった。渋谷区松濤の都知事仮公舎に12日に届き、この日午後、知事室職員が知事秘書室に運びUさんに渡した。Uさんがはさみを使って開こうとすると「パン」という大きな音とともに爆発。Uさんは、「やられた」と言って倒れたという。

爆発物を調べたところ、ラジコンカーのエンジンの起動用に使われる「グロープラグ」と呼ばれる起爆装置が見つかった。日本テレビで子役タレント安達祐実さんあての郵便物が爆発、開封した制作会社社員ら2人が負傷する事件でも、これと同じプラグが使われていたという。

4月の知事選で当選した青島知事は、世界都市博中止をめぐって議会などと対立していたほか、オウム真理教の事件では解散請求を積極的に認める発言をしていた。また都議会で「自衛隊は違憲」と述べ、警視庁などは周辺の警戒を強めていた。

都庁によると、都市博やオウム真理教の問題で苦情の電話などはかなり多いが、知事あての郵便物などについて、内容のチェックはしていなかったという。

青島知事は16日夜、記者会見し、爆弾事件について「ごく近くにいる人間が(爆弾で)負傷した。全く許せない。こんな卑劣な行為はない」と怒りを表明した。青島知事は、連日の深夜までの議会審議も重なって目が充血し顔色もすぐれない。「犯人を特定して、二度と起きないように関係者に努力してもらいたい」と声を震わせた。会見の後、青島知事は東京医大病院で負傷したUさんを見舞った。《共同通信》

【村山富市首相】退陣を重ねて否定

衆参両院は16日午後、それぞれ本会議を開き、1995年度第一次補正予算案に対する質疑を行った。村山首相は答弁で「山積する課題に取り組み、未来に向かって展望を切り開くのが私に課せられた使命だ。退陣は考えていない」と言明。

もはや国民は期待していないとして退陣を迫った野党の要求を一蹴。その上で「政治空白は許されない」として解散・総選挙を否定した。《共同通信》

【中国】核実験停止の用意

北京発インタファクス通信によると、中国訪問中のロシアのグラチョフ国防相は16日、中国の遅浩田・国防相との会談後、遅国防相が中国は核実験を停止する用意があると言明したと語った。

中国側はこれまで、包括的核実験禁止条約の締結、発効後に核実験を停止するとの立場を表明している。

グラチョフ国防相の発言では、中国側がこれまでの立場から踏み出して核実験停止を表明したのかどうかは不明。

米国、ロシアなど核大国が核実験を一時停止している中で、中国は核拡散防止条約の無期限延長が決まった直後の15日に核実験を強行、国際的な反発を呼んでいる。

グラチョフ国防相によると、国防相会談では、中ロ国境の100キロ圏内での兵力相互削減で合意できなかった。国防相は「中国側の求める数字をロシアは受け入れられない」と述べた。

国防相に同行しているロシア軍筋の説明によると、ロシアの極東、ザバイカル両軍管区の兵力の約90%は中ロ国境沿いに集結しているが、中国側は国境地域に大きな兵力を展開していない。中国側は兵力を半減するよう提案しているが、これはロシア側にとって事実上の一方的削減につながるため受け入れ難いという。《共同通信》

【大相撲夏場所】10日目

大相撲夏場所10日目(16日・両国国技館)横綱貴乃花は右四つ万全の体勢から栃乃和歌を寄り切って10連勝、単独首位を守った。横綱曙は関脇安芸乃島をはたき込み、大関武蔵丸は、肥後ノ海をパワーで圧倒してともに1敗を堅持した。大関若乃花は厳しい攻めで朝乃若を押し倒し2敗を守り、勝ち越した。大関貴ノ浪は寺尾のもろ差しからの寄りに屈し4敗目。平幕の武双山、春日富士は3敗となった。この結果、幕内は依然全勝の貴乃花を落と武蔵丸が1差で追う展開。十両は土佐ノ海が9勝1敗でトップに立った。《共同通信》



5月16日 その日のできごと(何の日)