平成1645日目

1993/07/10

この日のできごと(何の日)

【日米経済協議】

宮澤首相とクリントン米大統領は10日午前、都内のホテルで共同会見し、日米両国間で大きな懸案になっていた日米包括経済協議の枠組みを設置することで合意した、と発表した。合意内容はマクロ経済分野では経常収支黒字などの数値目標設定は見送られたものの、日本が巨額の経常黒字削減努力をし、米国は財政赤字削減を目指すことになった。個別分野では政府調達、規制緩和、自動車を含む主要分野などで日本市場の改善を図ることになった。

最大の焦点となっていた市場改善の度合いを測る基準では、米国が要求した「数値目標」は見られ、「客観的基準」を採用することで合意した。

日米両国は年2回の首脳会談で包括協議の進展状態を発表することとした。宮澤首相は「今回の合意は、日米関係の中長期的安定や国民生活の向上、世界貿易の進展に極めて重要である」と語り、枠組み合意が「日米関係の進展に大きな意味を持つと強調した。

会見でクリントン大統領は「自動車、コンピューター、電気通信、衛星、医療機器、金融、保険の分野での今後の成果を期待する」と述べた。

枠組み交渉は、貿易不均衡是正を求める米国が日本の経常黒字を国内総生産(GDP)比2%以下に削減する数値目標導入を要求、それに強く反発する日本側が対立し、難航していた。今回の急転直下の合意成立は、総選挙を目前に控え少しでも外交面で得点を稼ぎたい宮澤首相と、低下した支持率を回復させたいクリントン大統領の思惑が一致、政治決断を図った結果といえる。《共同通信》

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【米ロ首脳会談】

クリントン米、エリツィン・ロシア両大統領は10日午前、東京・赤坂の米大使公邸で約1時間会談し、クリントン大統領は、冷戦時代に制定された米国のロシアに対する通商上の差別措置の撤廃を早急に進めることを約束した。また両国が対立しているロシアのインドなどへの軍事技術輸出問題について、早期決着を目指して協議を続けることで合意、クリントン大統領は、来週にも交渉の進展状況について何らかの発表ができるとの見通しを明らかにした。

両大統領による首脳会談は4月のカナダ・バンクーバーに次いで2度目。会談後記者会見した両首脳は「会談は非常に有益だった」との認識を表明、米ロ両国のパートナーシップをさらに強化していく決意を強調した。《共同通信》

【米・クリントン大統領】韓国国会で演説

日本での日程を終えたクリントン米大統領は10日午後ソウルを訪問、金泳三・韓国大統領と初の会談をし、続いて韓国国会で演説した。

演説の中でクリントン大統領は、アジア太平洋地域の安全保障に関する基本的な考え方を明らかにし、この地域の安定のため米国は、①米軍の軍事的プレゼンスの堅持②核、大量破壊兵器の拡散防止努力の強化③地域内の多元的な安保対話の促進④民主化の促進—の4つを柱とする政策を推進する方針を表明した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発、カンボジアでの国連平和維持活動(PKO)など、個々の課題別に関係国による安保対話体制構築を提唱しているのが大きな特徴。

首脳会談では、北朝鮮の核問題解決まで在韓米軍削減を凍結することを再確認した。《共同通信》

【自民党・三塚政調会長】首相退陣を示唆

自民党の三塚政調会長は10日、熊本県益城町の熊本空港で記者会見し「選挙の結果がどうなろうと三役は去るのが政治家としての筋道だ」と述べ、総選挙後に党執行部の一新を図るべきだとの考えを表明した。

宮澤首相の進退問題については「総理・総裁は党のトップだから選挙が終われば自ら決せられると思う」と退陣の見通しを示唆した。三塚氏は新体制について「政治改革を第一弾とし、国際貢献、経済問題を含め、パーフェクトに近い実行体制をとることが大事だ」と強調した。《共同通信》

【新党さきがけ、日本新党】統一会派結成で合意

新党さきがけの武村代表と日本新党の細川代表は10日午後、それぞれ滋賀県彦根市と大阪市で記者会見し、選挙後に召集される特別国会から両党が院内統一会派を組み国会活動で同一行動をとるなどとした合意事項を発表した。

合意では院内統一会派結成のほか、選挙後に発足する政権との関係について「政権の枠外で影響力を行使する」と明記、当面は自民党とも新生党を軸にする非自民勢力とも一線を画して「第三の勢力」として独自の立場を貫く方針を鮮明に打ち出した。《共同通信》

【大相撲名古屋場所】7日目

大相撲名古屋場所7日目(10日・愛知県体育館)横綱曙と関脇若ノ花はともに全勝を守った。曙は苦戦の末に小結若翔洋を寄り倒し、若ノ花は落ち着いて久島海を寄り切った。大関貴ノ花は小城ノ花を圧倒して1敗をキープ。関脇武蔵丸も三杉里に快勝、1敗を守った。この日の結果、全勝の曙、若ノ花を追う1敗は貴ノ花、武蔵丸、琴錦、栃乃和歌の4人。十両は旭里が全勝を守り、1敗で魁皇が続いている。《共同通信》

【井伏鱒二さん】死去

文壇の巨匠で文化勲章受章者、日本芸術院会員の井伏鱒二氏が10日午前11時40分、肺炎のため東京都杉並区の東京衛生病院で死去した。95歳。広島県出身。井伏文学は庶民生活を映す鏡といわれ、庶民の笑いや悲哀から賢明さまでをも反映した多彩な作品で親しまれた。

広島県の地主の二男に生まれた。早大仏文科に籍を置く一方で日本美術学校に通い、日本画を学んだ。大正11年、早大中退。翌年同人雑誌「世紀」を創刊、処女作「幽閉」(後年「山椒魚」と改題)を発表。その後、佐藤春夫に師事。昭和12年「ジョン万次郎凛流記」で直木賞を受賞、14年「多甚古村」では人間や風物への細かな観察眼が注目された。

戦後は、「駅前旅館」「珍品堂主人」など軽妙なタッチの作品を矢継ぎ早に発表。映画化されて広くファンを得た。戦争文学の傑作とされる「遥拝隊長」、芸術院賞を受けた「漂民宇三郎」などを次々に書き、35年日本芸術院会員に。《共同通信》



7月10日 その日のできごと(何の日)