平成1501日目
1993/02/16
この日のできごと(何の日)
【NHKやらせ問題】ディレクター停職6カ月
NHKスペシャル「奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン」でやらせの表現があった問題でNHKは17日、やらせを直接指揮した番組のチーフディレクターを同日付で停職6カ月としたほか、川口幹夫会長を減給6カ月(20%)とするなど幹部と直属の上司6人の処分を発令し、た。NHK会長の減給処分は初めて。 チーフディレクターと川口会長以外の処分は、中村和夫放送総局長が放送局副総局長に降格、減給6カ月(10%)、萩野靖乃編成局編成主幹・スペシャル番組部長は解任、放送総局付とした上で減給などとなっている。また「ムスタン取材緊急調査委員会」(座長・中村好郎副会長)は「放送で訂正、おわびした6カ所以外にも、取材・制作方法や放送内容に適切でない点や事実と異なる部分が判明した」とする最終調査報告書をまとめ、同日開かれた経営委員会に提出した。 報告書は、高山病や流砂現象なやらせと指摘された点について「限度を超えた演出だった」と全面的に非を認めた。さらに「小学校でのヤギの解剖シーンを『理科の授業』としたのは誤り」など新たに分かった5つの問題点を列挙。「ディレクタ一が番組を面白くしようと思うあまり過剰な演出、事実の誇張をしてしまった」としている。 オオカミの輸入問題では、チーフディレクターの指示で生息地からオオカミを連れ出した取材スタッフがネパール当局から野生動物保護法違反に問われ、罰金5010ルピー(約1万5000円)を納めていた新事実に言及した。輸入手続きに問題はなかったが「職員として極めて非常識な行為」と断定した。日産自動車のステッカーを張ったり、同社との交渉にディレクタが自ら当たったことについても「番組制作業務の覧囲を逸脱した」と認定した。
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NHKは17日夜、視聴者に対するおわびと調査結果を絞告する特別番組を午後10時から約15分間にわたり放送した。冒頭、川口幹夫会長が「視聴者の期待を裏切り、信頼を損なったことを重大に受け止めている」とわびた後、曽我健理事が調査によって新たに判明した虚偽表現などについて明した。最後に関係者の処分を発表、川口会長が「信頼回復のために努力します」と締めくくった。《共同通信》
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【宮澤喜一首相】政治家不祥事「教育上の問題」
衆院予算委員会は16日、総括質疑最終日の審議を行った。宮澤首相は、民社党の塚本三郎氏が将来の増税で償還するという条件付きの短期赤字国債を発行し、所得税減税の財源に充てる方法を提案したのに対し「そういう条件付きの特例公債の発行は、事態の推移をみていく必要がある」と述べ、予算成立後の追加景気対策の中で検討する可能性に含みを残した。
しかし同時に「今の状況下で近い将来の増税を示すのが賢明か、よく考えておく必要がある」と問題点も指摘した。
さらに塚本氏は、住宅減税や土地譲渡益課税などの税率引き下げの実施を求めたが、林蔵相は税制のバランスの観点から「それぞれ問題がある」と難色を示した。また首相も「景気回復に)ある程度時間がかかる」とし、当面は公共投資中心の対策が有効との考えを調した。
社会党の中西績介氏の質問に対し、首相は佐川急便事件や共和汚職など政界不祥事の続発が子供の教育に与える影響について「政治で不祥事が後を絶たないことはそれ自身が問題だが、青少年に対しては計り知れない大きな影響を与える問題であり、深刻な教育上の問題と考えている」と述べ、教育面への影響に懸念を表明した。
また共産党の山原健二郎氏が、金丸前自民党副総裁に対する東京佐川急便からの5億円献金問題に関連して、旧竹下派出身の中村建設相、中山防衛庁長官、船田経企庁長官、中島科技庁長官、井上国土庁長官の5閣僚に、5億円の分配を受けた事実があるかどうかをただしたのに対し、5閣僚とも「事実はない」と否定した。
新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)に臨む日本政府の姿勢について、田名部農相は「(コメ自由化反対の)国会決議の趣旨し、政府を挙げて努力したい」と、重ねてコメを含む包括的関税化阻止へ向け今後とも各国の理解を求めていく考えを表明、首相も同調した。
この日はこのほか、水田稔(社会)、菅野悦子(共座)の両氏が質問に立ち、総括質疑を終了した。《共同通信》
【宮澤喜一首相】国連・ガリ事務総長と会談
宮澤首相は16日夜、首相官邸でガリ国連事務総長と約1時間半会談した。ガリ氏は「アジア地域だけにとどまらず、アフリカ、中南米にも関心を向けてほしい」と、より一層の日本の国際貢献を求め、特にモザンビークの国連平和維持活動(PKO)への参加を促した。
これに対し宮澤首相は「日本は憲法の枠内で最大限の協力を行う」と述べ、間接的な表現でPKO活動を超える平和執行部隊への参加は困難との考えを示した。またガリ氏は「国連の基本姿勢は内政に干渉しないことだ」と述べ、日本に憲法改正まで求める考えがないことを表明した。
ガリ氏はモザンビークでのPKOについて「停戦の合意もあり日本の条件を満たしている」と指摘した。しかし宮澤首相は先のPKO協力法に関連して「困難な政治状況の下で難しい。政治的決定を行った」と指摘。「国民の中にある意識を尊重して(国際貢献を)行っていくことが必要であり、徐々に国民の問題意識も高まっていくだろう」として当面カンボジアでのPKO活動の成功に全力を挙げる考えを強調した。
またガリ氏はソマリアから多国籍軍が撤退した後の国連の対応について「米軍が3000人の後方支援部隊を残留させ、2、3000人の緊急展開部隊を海上に待機させる」とした上で、米軍が初めて国連の指揮下に入ることを明言。事実上の平和執行部隊がソマリアで実現するとの見通しを示した。
一方、宮澤首相とガリ氏はカンボジア和平について「総選挙後、新カンボジア政府が成立するまでの期間が、永続的平和を確立するために決定的重要性を持つ」などとして①ポル・ポト派とプノンペン政権の双方に自制を求める②5月の総選挙は実施する③ポト派に対しても総選挙参加の門戸は開いておく―など5項目で認識が一致した。
ガリ氏は国連加盟国の国際貢献について「日本だけでなくどの国も制約を抱えている」と指摘し「日本がどのような協力するかは、日本が決めることだ」と述べた。《共同通信》
【政界談話室】
○…宮澤首相は16日、午前、午後と続いた衆院予算委に加え、委員会の昼休みには衆院本会議にも出席する忙しさ。さすがに疲れたのか、本会議終了後、議場を出る際に「あーあ」と深くため息をついた。記者団が「昼食はどうするのか」と尋ねると「どうするんだろう。お茶くらい飲ませてくれるんだろう」と一言。結局、委員会再開までの3分間に、控室でサンドイッチ2切れをほうり込んだだけ。午前中、渡辺外相の入院について「どうみても過労だな。僕だって、行って来いじゃ疲れちゃう」と同情していた首相だが、あまりの過密スケジュールにうんざり顔だった。
○…自民党総務会で、浜田幸一氏が「金は出すが血や汗は出さない。平和は守るが犠牲者は出さない。撤退しろで世界に通用するのか。自分の幸せだけを考えてはいけない」と、国連平和維持活動への取り組みについて持論を展開。「首相と党との間で国家安全保障の定義が明確になっていない。与野党ともに甘えの構造に埋没している」とも。先週の総務会で、政治改革をめぐり梶山幹事長とやり合った浜田氏の発言だけに、佐藤総務会長も会見で「格調高い話を久しぶりに聞きました」と気配りを見せていた。《共同通信》
【横浜・高木豊内野手】調停額を受け入れ
調停に持ち込まれていた横浜・高木豊選手(34)の今季の年俸が16日、昨年より510万円増の9840万円に決まった。
東京・内幸町のコミッショナー事務局でこの日、第2回の調停委員会が開かれて決定したもので、直ちに同委員会の吉国一郎委員長(コミッショナー)から高木選手と横浜の若生照元・球団代表に調停書が手渡された。
記者会見した高木選手、若生代表はともに調停額を受け入れる意向を示し、同選手は17日、沖縄・宜野湾市キャンプに合流するが、早速契約更改が行われる。
今回は高木選手が10%増の1億263万円を主張したのに対して、球団が現状維持の9330万円を提示して契約更改交渉は決裂、91年の落合選手(中日)以来の調停となった。《共同通信》
【緒方貞子・国連難民高等弁務官】人道援助軍の概念確率を
緒方貞子・国連難民高等弁務官は16日、共同通信に対し「軍隊には人道援助を支援するという新たな役割が生まれている」と語り、日本国民が戦闘部隊としての軍のイメージから脱却し、「人道援助軍」ともいえる新たな概念を確立した上で、要員派遣を積極化させるよう訴えた。
弁務官事務所によるソマリア難民帰還援助の視察のため訪れた同南西部の飢餓地帯バルデラなどで語った。平和執行部隊の創設を呼び掛けたガリ国連事務総長構想に近い考え方といえ、緒方弁務官は「ソマリアやユーゴスラビア問題の解決には不可欠な発想だ」と表明した。
緒方弁務官は特に、軍隊の概念について言及。攻撃的な武力集団としてだけでなく、地域の秩序や安全保障、人道援助の一端を担う集団という新たな役割が生まれたと説明した。しかし、こうした軍隊の性格をめぐる議論が、日本では自衛隊の海外派兵の是非をめぐる論議に終始していることに疑問を表明。「多国籍軍がどのような役割を果たしたかという現実的視点から、日本人の意識改革が求められている」と強調した。《共同通信》