平成754日目
1991/01/31
この日のできごと(何の日)
【湾岸戦争】イラク軍、再びサウジに侵攻
サウジアラビア東部国境の町カフジで起きた多国籍軍とイラク軍の局地戦闘は31日、多国籍軍側がカフジ制圧に成功したものの、イラク軍はクウェート南部国境の町ワフラ周辺に6−7個師団規模約6万人の地上部隊を集結中と伝えられ、再び大規模な地上戦闘に発展しかねない情勢になってきた。
サウジ東部からの報道によると、イラク軍の戦闘用車両800−1000台・両が、小集団になったり、列をつくったりして、サウジ国境に向けて移動中であることが多国籍軍機によって上空から目撃された。米軍機が同日、長さ17キロに及ぶこの隊列に爆撃を加えるなど、サウジ北部国境では一段と緊張が高まっている。前線からの情報によると、爆撃したのはBB戦略爆撃機のもようだ。
イラク軍は今回のカフジ攻防戦について「平和裏に撤退しない米国人は、棺に入って帰国することになるとの最初の警告である」と述べ、戦果を誇示するとともに、越境攻撃を再び敢行する姿勢を示した。カイロの軍事筋は、今回のカフジ攻撃は、地上戦闘の準備が整っていない米軍を中心とする多国籍軍側を挑発して、多国籍軍側を地上戦闘に引きずり込もうとした作戦だと分析する。
西側消息筋は「フセイン・イラク大統領は生来のギャンブラーであり、10%でも勝算があれば、かけに出る」と言明。さらに、「地上戦闘で多数の犠牲者が出れば、米国世論が硬化して反戦気運が盛り上がってブッシュ政権が窮地に陥り、有利に停戦に持ち込めると考えている」として、フセイン大統領のわなにかかってはならないと警告した。
フセイン大統領がこうした作戦に出た時景には、士気の低下が懸念されるイラク軍兵士を激励するためだったとの見方もある。しかし、西側消息筋によると、イラク国内では軍事クーデターを狙って西側秘密情報機関が水面下で工作中とも伝えられており、フセイン政権は微妙な立場に置かれている可能性もある。《共同通信》
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サウジアラビア東部国境沿いの原油基地カフジで起きた多国籍軍とイラク軍の局地戦は31日、多国籍軍側がカフジを奪回したと発表したが、イラク軍戦車部隊は同日夜、カフジ西方約80キロのウムフジュル付近で再びサウジ側に越境攻撃した。
前線からの報道によると、米軍は戦闘で洗車3両を破壊したという。一方、カフジでは2月1日午前中も、市内に潜んだイラク兵の狙撃に対し多国籍軍が応戦するなど、戦闘が続いている。《共同通信》
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【湾岸戦争】両軍は守備布陣
米統合参謀本部のケリー作戦部長とマコーネル情報部長は31日、米国防総省で記者会見し、多国籍軍、イラク軍双方とも依然守備の布陣をとっており、カフジ争奪戦は本格的な地上戦の開始にはつながらない、と強調した。
同時に、ケリー作戦部長は「カフジ争奪戦で夜間飛行能力を持つ米海兵隊の対戦車ヘリ『コブラ』がイラク軍の戦車、戦闘車両への攻撃で威力を発揮した」と述べ、戦車を中心とする重装備のイラク軍部隊に対して対戦車ミサイルを装備した対戦車ヘリが極めて有効であることが証明された、との認識を示した。同部長はまた、カフジ東方の海岸地帯で男女の米兵2人が行方不明であり、捜楽活動が続いていることを確認した。
ケリー部長によると、「砂漠のあらし」作戦に投入された米軍は計50万人以上となり、多国籍軍の空爆回数は計3万2000回に達した。過去24時間以内の空爆はイラク軍の指揮・管制系統、核・化学・生物兵器関連施設、空軍基地、イラク南部とクウェート国内の地上部隊などを重点目標に2600回に上った。
捕虜となったイラク将兵は、カフジ争奪戦でサウジアラビア軍に捕まった将兵を含めて292人。また、ウィリアムズ国防総省報道官によると、イランに退避したイラク機は98機で、一部がイラクに戻ったとの情報を否定した。《共同通信》
【イエメン】日本大使公邸に爆弾
31日夜、在イエメン日本大使館から外務省に入った連絡によると、現地時間31日午前10時25分(日本時間同日午後4時25分)ごろ、イエメンの首都サヌアの野口雅昭イエメン大使公邸の庭で爆発が起き、公邸の一階窓ガラス5枚が破損した。けが人はない。
爆発直後に大使館員が調べたところ、庭に直径約30センチの穴があき、周辺に土が飛び散った。
共同通信が同大使館に国際電話で聞いたところ、事前に爆発物が仕掛けられていた形跡はなく、何者かが高さ約2メートルのコンクリート塀越しに手投げ弾ようの爆発物を投げ込んだらしい。
また同じころ、サヌアの米大使公邸に銃弾3発が撃ち込まれたほか、トルコ大使公邸の庭でも爆弾1個が爆発、トルコ大使公邸では1人が軽傷を負った。
湾岸戦争で多国籍軍関係国に対するテロとみられるが、犯行声明は出ていない。湾岸戦争ぼっ発以来、日本の在外公館関連施設に対するテロは初めてで、警察庁など治安当局も今後、日本の在外公館などを狙った国際テロが続発する恐れもあるとみて警戒している。《共同通信》
【社会党大会】政権構想後退に不満
東京の九段会館で開かれている社会党定期大会は二日目の31日、三つの小委員会に分かれ、91年度運動方針案などを論議した。
運動方針小委では、野党連合政権への具体的展望が大きく後退していることに不満が集中。「(支持関係で)別の選択もあり得る」(全逓)「連合政権に向けた指導性が発揮されていない」(全電通)など、執行部の怠慢を指摘する意見が出た。これらに対し山口書記長は「十分でないところは反省している。今後とも政策協調に努め、協議再開に努力する」と強調した。
同党が目指している「シャドーキャビネット」(影の内閣)づくりに関して山口氏は「あくまでも連合政権を追求すると約束しているので英国流のものは直ちに考えていない」との見解を示した。
自民党の小沢幹事長が「多国籍軍への新たな資金協力が実現できなければ、政権からの下野も考える」と述べたことに関して山口氏は「下野して結構だ。われわれは政権を担う用意がある」との決意を強調。同時に増税法案など財源措置をめぐる関連法案の成立阻止に向け公明党と一十分協議していく意向を示した。
政策小委では自衛隊輸送機の中東派遣をどう阻止するか、に論議が集中。代議員からは「ヨルダンやIOM(国際移住機構)に働き掛けるべきだ」「地方自治体での反対決議を進め、小牧基地を人間の鎖で囲もう」などの意見が相次いだ。
これに対し伊藤政審会長ら執行部側は「参院での反対決議など、国会内外でのあらゆる方法を考える」と約束した。《共同通信》
【自民党・奥野誠亮元法相】都知事選「鈴木氏に礼つくせ」
今春の東京都知事選をめぐって、自民、公明、民社3党は1日、幹事長・書記長会談を開き、鈴木俊一知事を擁立しないとの方針を再確認する予定だが、31日夜の自民党総務会で奥野誠亮元法相ら長老の一部が「鈴木氏に礼をつくしていない」などと、小沢幹事長ら党執行部の手法を批判した。
奥野氏は「都知事選については、勝てるかどうかばかりが焦点になっている。どういう人が適当かを念頭に置き、候補者の選定に当たるべきだ。鈴木氏に対して礼を失しないよう、執行部は考えるべきだ」と指摘。
また鯨岡兵輔元環境庁長官は「公明党がダメというならダメなのか」と迫り、後藤田正晴元官房長官も、新都庁舎問題は批判に当たらないとして鈴木氏を擁護した。《読売新聞》
【海部俊樹首相】論戦控え“作戦会議”
海部首相は31日昼前、中山外相、坂本官房長官、池田防衛庁長官、工藤法制局長官らを首相官邸に招集し、4日からの衆院予算委員会を舞台とする本格論戦を前に、自衛隊輸送機の中等派遣問題を中心とする“作戦会議”を開いた。
首相は「答弁の対策というものじゃないんだ」と否定しているが、外務、防衛、法制各当局が作成した想定問答資料をもとに、約2時間にわたり自衛隊法の暫定政令などの法的根拠、憲法論議、過去の政府答弁との整合性などについて認識の統一を図るとともに、昨秋の国連平和協力法案の審議で足並みの乱れを露呈したのを反省材料に各省庁間の任務分担を明確にするなどみっちりと打ち合わせをしたもようだ。
会議には大島、石原両官房副長官のほか、外務省の渡辺中近東アフリカ局長、丹波国連局長、防衛庁の日吉官房長、畠山防衛局長ら予算委氏審議での“防波堤”を務めるメンバーが参加、予想される野党質問をもとに「いろんな意見を言ったり聞いたりした」(首相)。《共同通信》
【政界メモ】「勉強会」否定に危機感
○…極部首相は31日、中山外相ら外務省、防衛庁の幹部と約2時間、国会答弁の「勉強会」。日ごろ「勉強会」と書かれることを嫌う首相だが、この日も「答弁の対策じゃないんだよ。意見を言ったり、聞いたりしたんです」と「勉強会」を否定。記者団の「これで予算委もうまく乗り切れそうか」との声にも「本会議できちんと答弁してるでしょ(答弁対策の)会議」というが、そんな頼りないもんじゃありません」と、厳しい口調でピシャリ
「政府の対策は万全」ということをアピールしたかったようだが、「勉強会」の存在を否定すればするほど、国会乗り切りへの危機感がありあり。
○…この日昼、自民党経世会(竹下派)の総会が開かれ、渡部予算委員長があいさつ。「予算委員長は飾り物で、実際は国対委員長あっての国会だ。うまくいかなかったら国対委員長の働きが悪かったと言われるものだ」と同派の梶山国対委員長にきつい注文をつけた。
渡部氏自身、消費税国会の際、国対委員長を務め、時に党内から厳しい批判を浴びており、それを踏まえた上での発言。梶山氏が中座したのを見つけた渡部氏、「国対委員長がいなくなったけど、この話を(後で)伝えてほしい」とダメ押しをしていたところをみると、国対委員長時代の苦い思いが忘れられない(?)《共同通信》
【ソ連共産党】独立運動に強硬姿勢
ゴルバチョフ政権の独立運動などに対する強硬姿勢が強まっている中で、ソ連共産党は31日の中央委総会で、秩序の回復のために断固とした措置が必要と主張する声明を採択した。
声明は、1日から開始されるソ連軍、内務省の合同パトロールやバルト地方への軍事介入には直接言及していないが、混乱回避にはある程度の強権発動もやむを得ないとの立場を強く打ち出しており、ゴルバチョフ大統領の最近の保守派寄りの路線転換を公式に追認する内容となっている。
声明は「ソ連憲法に対する軽視が、現在の無法状態への道を開き、一部の共和国での反憲法的な法律制定を招いた」と指摘。これらの法律が人権を侵害し、人々を反抗的行動を駆り立てているとして、バルト三国やグルジア共和国などで反連邦的な法律が次々につくられ、連邦全体に無秩序が、広まっていることを批判した。声明はさらに、これらの共和国で民族主義的な準軍事組織が結成され、徴兵率の低下などソ連軍の権威失墜が進んでいることを念頭に「武装集団結成の禁止、軍、司法機関への圧力排除」も打ち出している。
ゴルバチョフ大統領の強硬路線への転換は、ペレストロイカ(改革)が行き詰まる中で、軍と共産党という旧来の二大勢力が息を吹き返したことと密接に関連しており、この日の声明は軍が街頭パトロールなどで実権の拡大を誇示することに呼応した共産党の政治的アピールの色彩が濃い。《共同通信》
【マリオ・バレンチノさん】死去
世界的知られるデザイナーのマリオ・バレンチノ氏は31日、がんのためイタリア・ナポリ市内の自宅で死去した。63歳。
イタリアを代表する皮を素材としたデザイナーの一人。ミラノの貧しいなめし皮職人の家に生まれたが、靴のデザインの分野で成功。自社をイタリア最大の服飾ブランドの一つに成長させた。ミラノで開かれるコレクションには革製品の作品がほとんどで、皮を絹やレースのように見せる技術を持つとされる。《共同通信》