平成739日目

平成3年1月16日(水)

1991/01/16

【イラク】撤退期限切れ

国連をはじめとする和平工作の行き詰まりで ペルシャ湾岸危機は米東部標準時間16日午前0時(日本時間同日午後2時)、 イラク軍のクウェート撤退期限切れとなり、開戦の危険性が一気に増大、一触即発の最悪の事態となった。

今後、戦争回避の唯一の道はフセイン・イラク大 統領が従来の強硬姿勢を一転させ、撤退の意向を明らかにするかどうかにかかっている。このため、一部アラブ筋の間には、米国が軍事的圧力をかけながらもなお数日間の“猶予期間”を与え、フセイン大統領の翻意を促すとの観測が 根強く残っている。

エジプト、サウジアラビア、ヨルダン、モロッコなどアラブ各国首脳は15日夜、イラクに対し相次いで 「最後の平和アピールを発表した。

米軍を主体とする多国籍軍がイラクを攻撃したり、イスラエルが何らかの形で戦争に関与する事態となれば、強力なイスラム原理主義勢力や民衆の反米感情に火を付け、エジプトなど親米・反イラク政権に危機的状況となることも予想される。このため中東各国政府はテロ対策など取り締まりを強化しており、市民の間には重苦しい空気が漂い始めた。

バグダッド放送は撤退期限切れ1時間前のイラク時間16日午前7時に「一切の妥協はしない」とするフセイン大統領の強硬な言葉を伝えた。一方、サウジアラビアに展開中の米軍を中心とする多国籍軍は、撤退期限切れ とともに本格的な作戦活動の準備に入り、米空軍は戦闘攻撃機などへのロケット、ミサイル搭載作業を完了、いつでも出撃できる態勢を整えた。

軍事専門家の間には、米 一軍などが行動を起こす最初の機会は新月の暗やみとなる16日夜から17日未明の間にやって来るとみる向きもある。《共同通信》




【海部俊樹首相】撤退期限切れは遺憾

海部俊樹
https://www.kantei.go.jp/

海部首相は16日夕、首相官邸で報道各社のインタビューに応じ、国連安保理決議のイラクのクウェートからの撤退期限が過ぎたことについて「今のような状況になったことは誠に遺憾なことだ」と深い憂慮の念を示した。

首相はさらに「(撤退の)時間は超えたが、戦闘はまだ起きていない。イラクは国際社会の総意、特にデクエヤル事務総長の声明を十分かみしめて和平への行動を起こすことを期待する」と述べ、イラクのフセイン大統領がクウェートからの撤退を決断するよう強く求めた。

また、戦端が開かれた場合、政府が米国を中心とする多国籍軍の軍事行動を支持するかどうかに関しては「不幸にして(戦争が)起きた時にきちっと言う」と明言を避けた。

その上で「多国籍軍がいち早く展開して努力してきたことは評価する。平和的に最後まで国連が粘り強い努力をしているのだから、開戦を想定せずに、イラクは撤退しなくてはいけない。平和のカギを握っているのはイラクだ」と重ねて強調した。《共同通信》

【政府、自民党】危機管理対策を協議

政府、自民党は16日夜、イラク軍のクウェート撤退期限が切れたのを受け、湾岸有事の際の新たな多国籍軍支援、難民、在留邦人ら「被災民」の救出・保護など危機管理対策をめぐり、海部首相、中山外相らと小沢幹事長ら党四役による調整を行った。しかし、輸送、医療協力をめぐって、民間協力を求めて乗り切りたいとする政府側の原案に対し、自民党側は自衛隊輸送機の出動や防衛医官の派遣協力を強硬に主張。現時点では応じられないとする首相との話し合いは難航、結論を持ち越した。

党側は多国籍軍への追加資金協力の財源でも石油関係税などの時限増税によって賄うよう求め、それでは間に合わないとする大蔵省との間でも意見の相違が残り調整がもつれた。

海部首相、小沢幹事長ら政府、自民党首脳、関係閣僚の会議は午後6時すぎから首相官邸で行われたが、協議は約一時間で中断。坂本官房長官と大島、石原両副長官が午後10時半ごろ、自民党本部で小沢幹事長ら党三役と調整。さらに、17日午前0前、党三役が首相、橋本蔵相、中山外相らと改めて協議したが、結論は出なかった。《共同通信》

【社会党、共産党】多国籍軍支援中止を要求

野党各党は16日、イラク軍のクウェート撤退期限切れに当たり、書記長、政審会長による談話を発表し、多国籍軍に対する日本政府の新たな財政支援などへの対応を明らかにした。

社会、共産両党は「多国籍軍への協力援助の中止」を強く求めるとともに、中山外相がプッシュ米大統領との会談で、米国の武力行使に全面的な支持を表明したことについて「国際紛争を解決する手段として武力行使を否定する日本国憲法に抵触するもので、強く抗議する」(山口社会党書記長)などと反発している。

公明党は「無原則な支援は行うべきではなく、難民、医療など人道的な分野に限るべきだ」(二見政審会長)と限定的な財政支援を要請。民社党は「湾岸平和基金への拠出を含め、新たな財政支援の検討・実施」(中野政審会長)を求めている。ただ、米沢書記長は「平和憲法を逸脱しないことが最低限の原則だ」との見解を示した。《共同通信》

【政界メモ】後ろめたさ?発言修正

◯…海部首相は16日午前、イラク軍のクウェートからの撤退期限切れを目前にしたデクエヤル国連事務総長の声明について、官邸で記者団から開かれ「平和的解決に向けた最後の…」といったん言いかけたが「最後と言ってはまずいかな。事務総長の度重なる努力の表れだから」と慌てて軌道修正。

湾岸危機では「最後まで平和的解決に向けてできる限りの努力をする」が“公約”の首相だが、事務総長やフランスなど各国の瀬戸際の外交努力に比べ「日本は何をやったのか」との声が野党などに根強いだけに、とっさの言い直しの裏には努力不足への首相の後ろめたさがあったのかも。

◯…この日、社会党の田並広報局長は国会内での記者会見で、湾岸危機への対応について「土井委員長もイラク訪問から帰国するので、なるべく早く都内で街頭行動に出てもらう」と説明した上で、昭和16年の太平洋戦争突入時の記憶を振り返りながら「私は小学生だったが、ちょうど今のフセイン大統領に指導されるイラク国民みたいな気持ちだったのを思い出す」としんみり。

旧制中学入試の口頭試問で「お国のために戦うため中学に入る」と答えて合格、その夏に終戦を迎えたそうで、“元軍国少年”の一人として、戦争になれば犠牲になるイラク国民にしきりに思いをはせていた。《共同通信》

【大相撲初場所4日目】北勝海、琴錦が4連勝

大相撲初場所4日目(16日・両国国技館)3横綱と大関霧島がそろって勝った。北勝海は平幕起利錦を押し出して4戦全勝、旭富士は寺尾を寄り切って1敗を守り、大乃国は小結安芸ノ島を倒し連敗を免れた。

大関霧島は曙を豪快な右下手投げで快勝した。関脇琴錦は陣岳を押し出して無傷の4連勝。勝ちっ放しは北勝海と琴錦の2人だけになった。《共同通信》



1月16日のできごと