平成599日目

1990/08/29

この日のできごと(何の日)

【海部俊樹首相】中東和平貢献策を発表

政府は29日の持ち回り閣議で日本の中東和平に向けた貢献策を正式了承し、海部首相が記者会見して発表した。

貢献策は米国を中心に中東地域に展開している多国籍軍支援のため①政府チャーターの日本の民間航空機、船舶の提供による輸送協力②砂漠地帯での水源確保のため資材提供による物資協力③計100人をめどとした医療チームの派遣による医療協力④多国籍軍参加の各国の航空機、借り上げ経費負担による資金協力ーの4項目と、紛争周辺国への支援策として①商品借款など担当規模の経済協力②ヨルダンの難民支援のため1000万ドル強の緊急援助の2項目を加え、計6項目が具体的な柱となっている。

首相は会見で今後の地域紛争など緊急事態に備えた法体系の整備について「国連平和協力法」(仮称)のような憲法の枠組みの中での新規立法の検討を表明するとともに、自衛官の海外派遣の検討にも含みを残した。

「中東における平和回復活動にかかわるわが国の貢献策」と題した貢献策では「多国籍軍」との言葉は使用されていないものの、「湾岸の平和と安定回復のため(国連)安保理の関連諸決議に従って活動している各国への思い切った協力」と位置付けており、事実上、米軍を中心とする多国籍軍支援が最大の眼目。

しかし多国籍軍支援は集団的自衛権を禁じた憲法に抵触する恐れがあることに加え、要員派遣による初めて本格的な「ヒト」の派遣に踏み切ったことは、これまでの財政的協力にとどめてきた地域紛争に対する日本外交の転換にもつながるだけに今後、大きな論議を呼ぼう。《共同通信》

海部首相は29日夜の中東貢献策に関する記者会見で、将来の国際緊張事態に対応する新規立法、法改正など中長期的対策について「憲法の枠組みの中でできる限り責任を果たす観点から“国連平和協力法”のような(新法)制定も真剣に考えるべきだ」と述べ、国連や加盟国による「国際的な平和維持活動に人的、物的に一層の貢献を可能にする新法制定に積極的に取り組む考えを明らかにした。

自民党から提起が出ている自衛隊法改正について首相は「今後何が憲法の枠内で許されるか、真剣に議論していく」として同法改正問題も排除せず、自衛官の限定的な海外派遣に含みを残した。

首相は、中東貢献策の必要性について①イラクの露骨な侵略行為を見過ごせば平和国家の理念が内外から問われる②日本が石油輸入の7割を依存する湾岸地域の平和と安定は重大な国益だ③湾岸地域の情勢は世界経済の発展と繁栄にも死活的に影響する–と指摘。「冷戦が終わり、21世紀に向けた国際新秩序構築に日本も先進民主主義国の一員として国際的責任を負わねばならない」と“大国”としての貢献の必要性を訴えたうえで、あくまで国連決議に基づく平和維持活動への支援であることを強調した。

貢献策作成に対する米側要求に関して、首相は「日本が主体的に判断してできる限りのことをした」と、力に屈したとの見方を否定。多国籍軍に提供する航空機、船舶の輸送対象については「武器、弾薬、兵員は入っていない」と改めて明言するとともに、多国籍軍への資金協力は「武力ではなく、平和へ汗を流している人々への費用分担」とし、憲法上問題ないとの考えを強調した。《共同通信》

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【在クウェート日本大使館】事実上の閉鎖

在クウェート日本大使館にとどまっていた城田安紀夫臨時代理大使と内藤浩二書記官は29日、大使館から退去し、同日午後3時(日本時間午後8時)すぎ、イラク航空機でバグダッドに到着した。外務省は「一時的な退避であり、閉鎖ではない」としているが、西側主要国の中では初めての措置。日本政府はクウェート国内に外交拠点がなくなることになり、事実上の大使館閉鎖といえる。

他の西側主要国はイラクに対する結束の象徴として、在クウェート大使館機能を維持しており、日本の者が「脱落」と受け取られることを懸念する声も出ている。

外務省は一時退去に踏み切った理由について「25日以来、電気、水道、電気を切断され、非常食は底をつき、これ以上とどまれば、身体の危険が生じると判断した」と説明した。

しかし、城田臨時大使ら2人はイラク側の命令で26日以来、夜間は市内のホテルに宿泊していたことが初めて明らかにされるなど、外務省側の対応に不透明な点が残った。《共同通信》

【政界メモ】

◯…中東貢献策が大詰めを迎えた29日午前、海部首相は予定より大幅に早く首相公邸から官邸に出邸し、周囲を慌てさせた。もともと出邸予定は中山外相らとの協議のため1時間早められてはいたが、首相はなぜかそれよりさらに30分も早く官邸執務室へ向かった。

突然の出邸のため、いつも出入りする執務室のドアはまだ施錠されたまま。首相もすぐ自分のミスに気付き、執務室わきの秘書官室に顔を出して「すまん。(時間を)間違えた」と釈明した。中東貢献策づくりに対する意気込みは相当なものだが、この時ばかりは上滑り。

◯…社会党の矢田部理外交政策委員長はこの日昼記者会見し、国連からの要請の下で非軍事的な協力を行うことを柱とした中東貢献策の方針を発表した。「国連の平和維持機能の強化を確立せねばならない」などと、大上段に振りかぶった調子でとくとくと説明していたが、具体的に何をやるのか方策は見当たらない内容。

記者団から「社会党としては今どうするのか」「これでは何もできないのではないか」などと鋭く問いただされると、次第に声も小さめに。最後は「記者団との紛争処理は逃げるが勝ち」とばかりに、「きょうはこの辺で」と、さっと席を立ってしまった。《共同通信》

【向島信用組合】57歳女性元支店長代理、19億円着服

今年4月、都民信用組合に吸収合併された向島信用組合の女性支店長代理が顧客の貯金などから勝手に現金を引き出していた事件で、警視庁捜査二課と本田署は29日、東京都葛飾区、元向島信用金庫葛飾支店支店長代理A子容疑者(57)を詐欺の疑いで逮捕した。

余罪も含めるとA子容疑者の着服額は15年にわたり総額約19億円に上るとみられ、金融機関のずさんな管理体制が改めて指摘されている。《共同通信》



8月29日 その日のできごと(何の日)