平成1999日目
1994/06/29
この日のできごと(何の日)
【村山富市氏】第81代首相に選出
社会党の村山富市委員長(70)が29日、第81代、歴代52人目の首相に決まった。国会は通常国会会期末の同日夜、衆院本会議で首相指名選挙を行った結果、自民、社会、新党さきがけ3党の推す村山氏が決選投票を経て旧連立与党の支持する海部俊樹元首相(自民党を離党)を破った。
社会党からの首相誕生は昭和22年就任の片山哲氏以来、47年ぶり2人目。自社連立政権は初めて。村山新首相は憲法重視の「ハト派」政権構築を目指す考えを表明した。30日中にも組閣作業に着手する考えだ。
衆院本会議は29日午後8時すぎ開会、最初の首相指名選挙で村山氏241票、海部氏220票となったが過半数の253票には達せず決選投票となった。決選投票の結果は村山氏が261票を獲得、214票の海部氏を破り、首相に指名された。参院でも村山氏が指名された。
首相指名選挙では自民党の党議決定に反し、渡辺元外相が海部氏支持に回ったのに対し、社会党中間・右派の一部勢力は自社連立に公然と反対するなど両党とも分裂の兆候を示した。55年体制下で38年間にわたり、対決してきた自社両党が連立を組んだことで、小選挙区の区割り法案成立後の解散・総選挙含みの中で、政界は再編第二幕に入った。
村山新政福の行く手には、7月8日の先進国首脳会議(ナポリ・サミット)、日米関係な外交案件のほか景気対策、区割り法案処理など難問が山積しており、政権の前途は多難だ。
羽田内閣総辞職に伴い、社会党との再連立を目指す与党と社会党は29日、政策協議を行ったが、結局、消費税率引き上げなど税制問題で対立したまま協議を打ち切った。これを受け社会党は後継首相候補に村山氏擁立を決定した。
左右両派が一致して村山氏を擁立した背景には、党分裂の危機を回避するという狙いもあった。しかし投票では造反組が出るなど左右両派の対立が改めて顕在化した。《共同通信》
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海部元首相は29日夜、首相候補に社会党の村山委員長擁立を決めた自民党の方針に反発、離党した。
海部氏は記者会見で、自身が連立与党と自民党の一部に担がれた首相候補となることに積極姿勢を示し、「政治改革を完結せねばならない」と強調した。
また「村山氏を推すことはできない。(党議には)私情を乗り越えて従わなければならない。党議決定に反することは、それなりの責任をとらねばならない」と述べた。《共同通信》
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「村山富市さんを、本院において内閣総理大臣に決しました」—。決選投票に持ち込まれる難産の末、新首相が誕生した。29日夜、激動国会は会期切れまで約2時間で劇的な幕切れ。自民、社会、連立、三すくみが一挙に崩れる。社会が連立との政策協議を打ち切り、自民党も海部元首相が離党した。混とんとした中で午後10時すぎ「ウオー」と、声と拍手が議場に響いた。
深々と頭を下げた村山新首相の顔は、こわばっていた。かつて政界を二分した自民、社会対立の55年体制が崩壊してから一年。この間、連立の組み合わせは揺れ続け、二人の首相が変わった。今回は、自社に新党さきがけの連立。「心臓のときめきを感じます」と新首相。第二幕が開いた政界再編の動きはさらに続く。
「20票差だぞ」と大きな声が社会、自民席から上がった。かき消すように拍手が続く。立ち上がった村山新首相は一度、二度と、深々と頭を下げた。
29日午後9時半すぎ、決選投票の行われた衆議院本会議場。投票する村山氏の姿に拍手が起きる。開票になると、腕を組んで正面を見据えた。新首相に指名。表情がこわ張った。トレードマークの、白い八の字まゆに隠れそうな目を閉じ、唇を真一文字に。
一方、海部元首相は投票結果が読み上げられても全く動かず、議長席を向いたまま。斜め前では自民党の河野総裁が、笑顔で幹事長に手を差し伸べ、橋本元蔵相も加わった。
小沢新生党代表幹事はムッツリ。隣の羽田首相は議場を出るなり「本当の野党になっちまったな」とぽつり。海部元首相は「結果はその通り受け止める」と言葉少なに語り、報道陣に「ありがとう」と、車に乗り込んだ。
一回目の投票は過半数なし。「決選投票を行わなければなりません」。土井議長の言葉に村山氏はかすかに笑みを浮かべた。ほぼ同時に行われた参議院では、先に村山新首相が誕生した。社会党の伊東秀子氏は「これで自社とも分裂し、本当の意味で55年体制が終わったといえる。すっきりした」と話した。
日本新党党首の細川前首相は「勝てる」と言って、一回目の投票に臨んだ。しかし決選投票で敗北が決まると「自社なれ合いによる55年体制の最後のあがきという印象だ」と、批判した。さらに「日本はいま政治的焦土と化した。連立政権は野合といわれたが、今度できる政権こそ野合以外の何物でもない。長くは通用しまい。私たちは改革の旗を掲げて守り抜く」とボルテージを上げていた。
地元大分、初の首相に喜び
村山氏の地元大分では、初の郷土出身首相誕生のニュースに喜びの声がわき起こった。漁民運動を振り出しに、長年労働運動に携わってきた庶民派。「トンちゃん」のニックネームで呼ばれ、政党の枠を超えて幅広く市民の支持を得ている。人気者だけに期待も大きい。
テレビ中継で「村山首相誕生」が報じられた瞬間、後援会事務所(大分市)では一斉に「よしっ」の声。後援会関係者ら約20人が決選投票を祈るような気持ちで見守っていた。村山氏の弟、安男さんは「年齢的にも首相は夢にも思っていなかった」と喜びの表情でいっぱい。
社会党大分県本部では重野安正書記長が「厳しい時期の就任だが、転換期において社会党は一丸となって村山政権の船出を迎えることができた」とコメントを発表。ただ党内部に離党の動きも出ており、結束の乱れが見られることから首相就任についても「複雑な心境」(中津留富子副委員長)と不安視する声もある。《共同通信》
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【フジ系連続ドラマ・古畑任三郎】最終回
【松本サリン事件】会社員を聴取
死者7人、重軽症者58人を出した長野県松本市の有毒ガス事故で、同県警捜査本部は29日、ガスの発生源とみられる同市北深志の会社員(44)宅から押収した薬品類の鑑定を急ぐとともに、同日朝から再度会社員宅を家宅捜索、新たな薬品類の発見に全力を挙げている。
これまでに押収されたのは薬品が入った瓶など二十数点で、自宅の納戸などに分散して保管されていた。薬品の種類は17、8種類に上るとみられる。会社員は中毒で入院しており、捜査本部は病状が回復すれは一両日中にもガスが流出した前後の状況について事情を聴く方針。
また3遺体を解剖した結果①臓器にうっ血があった②瞳孔(どうこう)が収縮していたーなどが判明。捜査本部は死因について有機リン系の中毒死と断定した。 これまでの調べでは、会社員は入院する前、家族に対し「(警察の)調べがあるかもしれない。覚悟しておけ」などと話していたという。
会社員宅では立ち木が枯れたり、他のザリガニや飼い犬2匹が死ぬなど、庭先に有毒ガスによる被害が集中していた。捜査本部は会社員が自宅の庭で除草剤を作ろうとして薬品類を混合していた際に、何らかの原因で有毒ガスが発生した可能性が強いとみて、押収し、た薬品類の成分分析を進めている。
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長野県松本市の有毒ガス事故で、ガスの発生源とみられ、殺人容疑で捜索を受けた会社員(44)宅へ駆け付けた救急隊員が29日、救助の様子を語った。
それによると、27日午後11時9分、会社員が119番、第一通報者だった。別棟にいて無事だった長男が西側の門を開けて待っていた。会社員は、一人で歩いて救急車に乗り込み担架に横たわると、「家の中に妻(44)と娘がいます」と隊員に話した。
別の隊員が、重症で呼吸困難の妻の手当てをする間、会社員は「犬が2匹死んだ」「毒を盛られた」などと口走ったという。薄緑色のジャージーようの上下を着て、靴下ははいていたという。《共同通信》
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死者7人、重軽症者58人を出した長野県松本市の有毒ガス事故で、同県警捜査本部は29日、有毒ガスを発生させたとみられる同市北深志の会社員男性(44)から入院先の同市内の病院で参考人として事情聴取するとともに、押収された薬品類の入手経路などを中心に捜査を進めた。会社員は聴取に対し「自分は被害者で巻き込まれた」などと話しているとみられる。《共同通信》
【政界談話室】
○…公明党の市川書記長は29日、連立与党が5日前自民党に提示した政策協定案の「返事」を森幹事長から受けた。森氏が「自民党との協議を望むなら、対応できるよう準備している」と一般論で回答したのをこれ幸いと、市川氏は4分後にとって返し「申し入れがあれば連立側と会うということか」と一方的に協議を申し入れ。さらに新生党の小沢代表幹事を伴い、森氏を訪ねるパフォーマンスをしてみせた。渡辺元外相ら自社連携に反発する自民党内勢力と、いつでも手を組めるとけん制するのを狙った神経戦?
○…社会党の久保書記長はこの日の代議士会であいさつ。連立与党との政策協議に触れ、「幾つかの問題点が提起された」としながらも「特に対立した状況ではない」と連立政権復帰にかける立場を強調。社会党が提示した政策のうち、国連安保理常任理事国入りを「背伸びせず、慎重に対応していきたい」とした部分に対して、連立側から「われわれの考えと同じではないか」と好意的な意見が出たことを紹介。党内に根強い自社連携論の息の根を止めるのに腐心していた。《共同通信》
【オリックス・イチロー外野手】打率4割に
オリックス12−4近鉄◇29日◇日生
オリックスが今年チーム最多の12点を奪って大勝し、連敗を3で止めた。4−4で迎えた五回、左前打の小川を一塁に置いて、藤井がこの日2本目の本塁打を左翼席に運んで勝ち越し、六、七回にはタイゲイニーがいずれも適時打を放つなどして追加点を挙げ、近鉄を突き放した。 イチローは4安打2四球と全打席で出塁し、打率を4割台に乗せた。星野は3連勝。近鉄は先発江坂、二番手入来がともに不調。連勝は7で止まった。
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すごい、を通り越して、もう気味が悪い。安打を量産するイチローの打撃には、こんな表現がはまりそうに思えてくる。4打数4安打。今季3度目の4安打でついに打率を4割台に乗せた。
打率3割9分8厘で、スタートした第1打席はカウント2−1から右前へライナーを飛ばして大台へ。第2打席は強いゴロが二塁大石のグラブをはじいて中前打。第3打席で四球の後、第4打席には再び中前に運ぶというすさまじさだった。 圧巻は四球を挟んだ九回の最終打席。「狙うつもりで(ボックスに)入った」という初球のセーフティーバント。風のように一塁を駆け抜けた。
長い球史に、シーズン打率4割以上を残した打者はいない。63試合目にして初めて4割ラインを突破するのは、過去を照らし合わせても珍しい。最近はどの対戦チームも内野安打を警戒し、積極的に前に出て打球をさばくようになったと本人は感じている。日ごとに増える取材依頼。
「ゲームになればいつもと同じ気持ち。4割は一回やってみたかったから、まあ良かったなって感じかな」。20歳の若者は、まるで重圧を感じていない。《共同通信》