平成1998日目
1994/06/28
この日のできごと(何の日)
【松本サリン事件】第一通報者宅を捜索
長野松本市の有毒ガス事故で、同県警捜査本部は28日夜、現場に隣接する同市北深志の会社員男性(44)方がガスの発生源との見方を強め、被疑者不詳の殺人容疑で会社員宅を家宅捜索、箱詰めの数種類の薬品などを押収した。
会社員は27日午後11時すぐ「のどが苦しい」と119番した最初の通報者。激しい頭痛などを訴え松本協立病院に入院しており、捜査本部は会社員の回復を待って事情を聴く方針。
事故当夜は西寄りの微風があり、会在員宅から風下側の東隣のマンションなどで7人が死亡、58人が重軽症となった。捜査本部は、現場周辺に流れた有毒ガスと押収した薬品との関連性の調べを急いでいるが、薬品は液体や粉末状で混合すると有毒ガスを発生するという。
会社員は、容体が悪く面会謝絶の状態。家族に対し入院する際「(警察から)調べがあるかもしれない。覚悟しておけ」と話していたという。これまでの調べでは、会社員宅の池で魚が全滅、犬が死んだり、庭木の荒れ方がひどいことなどが判明、捜査本部は有毒ガスの発生と何らかの関係があるとみて池周辺を重点的に調べていた。
また会社員は事故発生の前に除草をしていたとみられ、捜査本部は自宅にある薬品を使って除草剤を作ろうとしていたのではないかとみている。
近所の人の話によると、会社員の妻は人付き合いが良いが、会社員はあまり姿を見せたことがなかった。会社員の大祖父は著名な植物学者で、松本市でもかなりの旧家だった。
事故は27日午後11時10分ごろ、長野県松本市の住宅街に刺激臭を伴った有毒ガスが立ち込め、住民から「目が痛い」などの症状を訴える119番が相次いだ。同市北深志の明治生命社員寮と近くのマンション2棟に被害者が集中し、計7人が死亡、重症3人を含む58人が治療を受けた。捜査本部は瞳孔が縮小するなどの症状から、有機リン系の有毒ガス中毒の可能性が高いとみて調べていた。《共同通信》
◇
庭の雑草取りのため使おうとした薬品から音もなく立ちのぼるガス。寝静まった近くのアパートや会社の家に外壁をはいあがるように侵入していく致死性の霧ー。
7人の命を奪い多数の住民を正体不明の相手への不安に突き落とした長野県松本市での有毒ガス中毒事故は、28日夜になって、現場に住む会社員(44)が除草剤を作ろうと混ぜた何種類かの薬品が化学反応を起こし、有毒ガスが発生した疑いが濃くなってきた。
一つひとつはさほど危険ではなくても、一緒になれば一般の人には予想もできない命にかかわる物質を生み出す、化学薬品に囲まれた日常生活の落とし穴なのか。住民たちは恐怖をぬぐえないまま再び夜を迎えた。
発生後、丸一日近く原因などが明らかにならなかったため、住民は分散して市内のホテルに避難するなど再び不安な夜を過ごした。一方、死亡した7人の遺族らは遺体が安置された松本署で悲しみの対面をした。現場周辺の道路は同日午後8時すぎに通行止めが解除されたが、約300人の捜査員が深夜まで現場検証を続けた。《共同通信》
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【社会党】連立復帰強める
羽田後継政権の枠組みづくりをめぐる与野党攻防は28日、社会党が連立復帰志向を強めたことから新たな局面に入った。
羽田首相(新生党党首)ら連立与党を構成する7党首・代表と村山社会党委員長は同日午後、国会内で初のトップ会談を開き、社会党との再連立を目指した政策協議の開始などで合意。29日午前11時から第一回協議に入る。これを受け河野自民党総裁は村山氏と緊急会談し、「村山首相」を公式に推したが、村山氏は自民党との政権協議入りを拒否、首相就任要請も固辞した。
社会党内には連立復帰に強い抵抗がある。与党側は政権安定のため「政策一致」を求めていることから消費税問題などで社会党と対立するのは必至で、協議の成否は微妙だ。会期末の29日を迎え、会期延長論も浮上した。
党首会談では①政局混乱を収拾し会期末までの首相指名に努力②政策・政権構想は社会党が提示する③社会、新生、公明、日本新、民社5党で協議する―との方針を決めた。社会党は、新生・公明両党主導の連立運営への反省と民主化、新党さきがけへの参加要請の2点も合意事項に追加するよう求め、これら計5項目を基本に協議、合意時点で政権協議に入ることになった。
これに続く与党代表者会議では、小沢新生党代表幹事が社会党の「反省」要求などについて「政権協議に移った時の課題だ」と強く反発。社会党が難色を示してきた消費税率引き上げ問題などで新たな譲歩案を求める強硬姿勢を確認した。
村山氏は28日夜、連立を模索してきた武村さきがけ代表と会談した。
河野・村山会談では、河野氏が政権協議に応じるよう重ねて迫ったのに対し、村山氏は「与党との協議と並行してはできない」と述べた。また「自民党の方針として首相に推したい」との要請に村山氏は「承っておく。今はそれ以上、言う立場にはない」と断った。《共同通信》
【政界談話室】
○…羽田首相は28日、首相官邸を訪れた新生党若手議員の激励を受けた。社会党の連立復帰の可能性も出てきた局面だけに、記者団から「再登板の話が出たのか」と問われると「いや、ただ頑張ってくれと…」と言葉を濁した。問い詰められても、笑いでごまかしながら「ぼくはいつも平常心。平常心すぎるのかな」と述げの一手。この日、2カ月間住んだ公邸の引っ越しを始めたばかりだが、また荷物を運び戻す事態が来ることも脳裏をかすめたかどうか。
○…自民党の森幹事長はこの日午後、社会党の久保書記長との会談の後、記者会見。自社連立に冷たくなった社会党の出方について「わたしの政治的な勘では、自社党首会談はしたくない、あるいはしない方向で考えているのではないか」と悲観的に分析。久保氏が会談で「自民、連立の両方を手玉に取っている印象で受け取られるのは不本意だ」と釈明したことをわざわざ明らかにし、自民党に気を持たせ続けた社会党の対応ぶりを暗に批判。さらに連合の連立復帰の働き掛けに影響された社会党の「主体性のなさ」をなじったことも事細かに紹介するなど、無念さもちらり。《共同通信》