平成4659日目
2001/10/10
この日のできごと(何の日)
【テロ対策特別措置法案】審議入り
国会は10日午後の衆院本会議で、米中枢テロに対する米国などの報復攻撃を自衛隊が支援するためのテロ対策特別措置法案と、自衛隊による在日米軍基地警備を可能とする自衛隊法改正案などの趣旨説明と質疑を行い、審議入りした。
小泉純一郎首相は「憲法の範囲内でできる限りの支援協力を行う」として法案の早期成立を要請。法案が自衛隊の活動地域を「戦闘が行われない地域」としていることに関連して「テロの規模、態様はさまざまで、戦闘行為に当たるかどうかは個別具体的に判断すべきだ。散発的は発砲や突発的なテロは戦闘行為に当たらない」と述べ、このような場合でも自衛隊を撤収しないケースがあり得るとの考えを示した。民主党の伊藤英成氏への答弁。
公明党の田端正広氏が「他国の領域への武器・弾薬の輸送は慎重にすべきだ」と述べたのに対し「同感だ」と述べ、他国から武器・弾薬の輸送を依頼された場合も慎重に対応する考えを示した。
一方で「武器・弾薬を輸送の対象から外すと実際の輸送で逐一確認する必要が出て、円滑な輸送業務の妨げになる」と述べ、法案が武器・弾薬を輸送対象から除外していないことに理解を求めた。《共同通信》
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【Jリーグ・ナビスコ杯】準決勝
Jリーグ・ヤマザキナビスコ・カップ準決勝第2戦(10日・カシマスタジアムほか=2試合)雨中戦の2試合とも0−0で引き分け、第1戦を先勝した磐田と横浜Mが決勝に勝ち進んだ。磐田は3年ぶり4度目、横浜Mは初の決勝進出。
磐田は、2連覇を狙った鹿島の序盤の猛攻をしのぎ、安定した守備で第1戦(1−0)のリードを守り切った。横浜Mも守りを固め、GK川口の好セーブなどで名古屋の攻撃を阻んだ。《共同通信》
【F1】佐藤琢磨選手が参戦
自動車レースF1のジョーダン・チームは10日、来季からの正ドライバーとして今年の英国F3選手権で総合優勝を果たした佐藤琢磨(24)と契約したと発表した。契約期間は2年。日本人選手のF1フル参戦は、1996年までの高木虎之介以来3年ぶりで、通算7人目となる。
都内で記者会見した佐藤は緊張した表情で、「F1はずっと夢に見た世界。すぐに勝つのが難しいことは分かっている。一つ一つ確実にステップを踏んで、一刻も早く結果を出したい」と意気込みを語った。同席したジョーダンチームのエディ・ジョーダン代表は、「近い将来、彼が日本人初のグランプリ(GP)優勝者となることを願っている」と話し、期待の大きさをうかがわせた。《共同通信》
【F1】アレジ選手「今季で引退」
自動車のF1シリーズに参戦しているジャン・アレジ(フランス、ジョーダン・ホンダ)は10日、今季限りでF1ドライバーを引退することを明らかにした。
東京都内で行われたブリヂストンのプレスミーティングに、ゲストとして出席したアレジは「今季限りで引退する。来季はもうF1には出場しない」と目を潤ませながら話した。
今後の去就については「ジョーダン・チームの助けになるようなことをするのも選択肢の一つだが、まったく決めていない」と話した。
37歳のアレジは1989年にティレル・フォードでF1デビュー、フェラーリやベネトン・ルノーに在籍した。フェラーリ時代の95年にカナダGPで優勝している。《共同通信》
【参院予算委員会】
小泉純一郎首相は10日午前の参院予算委員会で、米英軍のアフガニスタン空爆で国連に協力していた非政府組織(NGO)職員4人が死亡したことについて「いかなる状況であれ犠牲者が出たのは誠に残念だ。米英軍の攻撃も無辜の人たちの犠牲を出さない配慮が必要だ」と述べた。
米英軍の攻撃がイラクやスーダンに拡大した場合の日本の対応については「その時点でテロ撲滅の行為か日本が主体的に判断する。その時点で(そう)判断し、もし協力が必要ならできるだけの協力をする」と述べ、アフガニスタン以外の地域に攻撃が及んでも支援を続ける考えを示した。《共同通信》
【野依良治名大教授】ノーベル化学賞受賞決定
スウェーデンの王立科学アカデミーは10日、2001年のノーベル化学賞を医薬品などの生産に役立つ「不斉合成反応」の技術を開拓した野依良治名古屋大教授(63)とバリー・シャープレス米スクリプス研究所教授(60)、米企業モンサントの元研究者、ウィリアム・ノーレス博士(84)の3氏に授与すると発表した。
野依氏は名大で記者会見し、「ノーベル賞は自然科学の研究者にとって最大の栄誉で、この上なく光栄に思っています」と喜びを語った。《共同通信》
【マリナーズ・イチロー外野手】会見
米大リーグ、ア・リーグで首位打者と盗塁王の2冠に輝いたマリナーズのイチロー外野手が10日、シアトルで記者会見した。
インディアンスとのプレーオフ地区シリーズ第1戦で、イチローは3安打を放ちながらチームは完敗。「短期決戦だからチーム、個人とも早くいい状態にしたいという気持ちが強い」と、やや敗戦が気になる様子をうかがわせた。この試合で盗塁を狙って挟殺されたプレーについては、「(投手が走者を)一塁にとめておく“作業”など、短期決戦だと集中する度合いが高くなると思う」と、戦い方の違いを感じていた。
大リーグでの最初のシーズンについては、「個人対個人の(戦いの)興味が大きかった。実際にそれが多かった」と、高いレベルでの競い合いに満足。米国の報道陣からは、シアトルでの生活や音楽の好みについての質問も出て、「限りなく日本に近い状態で生活でき、ストレスは少なかった」と1年目から適応したことを説明した。音楽については、「この場でこたえる必要があるのか分からないが、ラップミュージックのスヌープ・ドッグだとか最近ではネリーをよく聴いている」と、照れながらも珍しく私生活の一部をのぞかせた。《時事通信》
【米フロリダ州・炭疽菌感染問題】3人目の感染者
米フロリダ州での炭疽菌感染問題で、米連邦捜査局(FBI)当局者らは10日、新たな感染者が見つかったことを明らかにした。これで感染者は3人となり、当局は刑事事件として捜査を行っていると明言した。新たな感染者の発見による、生物・化学テロの恐れに対する米国内の緊張は一段と高まりつつある。
新たに感染が確認されたのは35歳の女性で、過去2人の感染者と同じく、同州ボカラトンにあるメディア企業アメリカン・メディアの従業員。入院して抗生物質による治療を受けているという。《時事通信》
【タリバン】米の制空権掌握を否定
米英軍のアフガニスタン空爆について、タリバン政権のザイーフ駐パキスタン大使は10日、記者会見し「防空システムを破壊した」とするブッシュ米政権の主張は「真実ではない」と強調、米側の制空権掌握を否定した。
アフガン・イスラム通信は、7日からの空爆で、民間人を中心に計72人が死亡したと伝えた。大使は、米国の食料投下はアフガンの人々への「侮辱」だとして米国への激しい敵意を現し、対決姿勢を鮮明にした。
米英軍の空爆は現地時間10日朝もタリバン本拠地のな南部カンダハルなどで続き、4日連続となった。カンダハルではこの日だけで、民間人13人が死亡、35人が負傷したと伝えられている。《共同通信》
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米軍はアフガニスタン現地時間の10日夜から11日未明にかけて、首都カブールなどへの4夜連続となる空爆を実施した。首都への空爆としては7日の空爆開始以来、最大規模とみられ、アフガン・イスラム通信によると、タリバン政権の本拠地カンダハルにも激しい爆撃が加えられた。
米国防総省は制空権を握ったとの判断から、作戦の次の段階であるグリーンベレーやレンジャー部隊など特殊部隊投入に向けた兵員輸送ヘリコプターやブラックホーク攻撃ヘリコプターの展開準備に着手、周辺国の空軍基地から発進しアフガニスタン国内に着陸するコースの見極めなどを進めているもようだ。《共同通信》
【八木祐四郎さん】合同葬
9月9日に72歳で死去した八木祐四郎日本オリンピック委員会(JOC)会長の合同葬が10日、東京都内のホテルで行われ、故人の人柄と幅広い交友関係を示すように、スポーツ界などから約3000人が参列した。
葬儀委員長の堤義明JOC名誉会長が、雪山とジャンプ台を模した祭壇に向井「あとしばらく日本のスポーツ界を率いていただきたかった。かえすがえすも残念」と弔辞を述べた。
日大時代からつき合いのある古橋廣之進前JOC会長は友人代表として「すべてのことに全身全霊で取り組み、1秒も無駄にしなかった」と話し、スキー複合の荻原健司(北野建設)は「八木さんからいい環境を与えていただいたから(活躍があった)」と感謝の言葉で別れを告げた。
【この日の民主党】
衆院本会議でテロ対策特別措置法が審議入り~伊藤英成議員が代表質問
内閣提出のテロ対策特別措置法案、自衛隊法改正案、海上保安庁法改正案の審議が10日から始まり、衆議院本会議で法案の趣旨説明と代表質問が行われた。民主党・無所属クラブからは伊藤英成議員(安全保障ネクスト大臣)と末松義規議員が質問に立った。
伊藤議員はまず、今回のテロに対しては、国連や多国間協議へのイニシアティブ、中東における和平外交の推進、ODAの活用、国際的な裁判のあり方の検討など、外交による非軍事的貢献こそが重要だと指摘し、首相の見解を質した。小泉首相は、外交努力は「当然」としながらも、国際協力の枠組みの中でできる限りの貢献を行うと述べるにとどまった。
続いて伊藤議員は、具体的な法案の内容について質問。始めに、オサマ・ビンラディン、アルカイダおよびタリバンがテロの犯人・支援者であるとする証拠についての国民への説明を求めた。しかし小泉首相は、日米間では連絡をとっているものの内容の詳細については明らかにできない、とつっぱねた。また、米軍等の攻撃対象がアフガン以外にも拡大した場合の対応について問い質したが、小泉首相は「仮定の問題には答えられない」などと回答を避けた。
さらに伊藤議員は、自衛隊の米軍等支援を国際的取り組みの枠組みの中に位置付けるのであれば、さらなる国連安保理決議などを求めるべきだと指摘、見解を求めたが、首相は国連憲章の目的に合致する行動だから不要だとした。国会の関与をめぐっても、行動の基本計画や実施計画を承認事項とすべきだと追及したのに対し、首相は、法案の成立自体が支援行動を承認したという意味を持つ、などと強引な論理を展開した。
また、法案が2年間の時限立法になっているのに対して、状況の変化に対応するために1年間が現実的だと指摘したが、福田官房長官は、必要がなくなった時点で消失するので問題にならないという見解を示した。
自衛隊の活動地域をめぐっては、「戦闘行為が行われない地域」という規定の曖昧さを問題にし、「戦闘行為」が何を指すのかなどを追及。また、NGOが中心となって支援活動を展開しているパキスタンでは自衛隊の出る幕はないのではないかとして、現地情勢の認識についても質した。小泉首相は、「散発的な発砲や突発的なテロは戦闘行為に当たらない」とし、またパキスタンの情勢については情報を収集・分析していると述べるにとどまった。
実際の支援活動の内容をめぐっては、すでに自衛隊がC130輸送機でテント315張、毛布200枚を送ったが、100万人にも上る難民への支援としては規模がズレていると指摘。軍隊の展開がかえって現地で混乱を起こしかねない危険がある中で、どのような被災民支援を考えているのかを質した。これに対して、中谷防衛庁長官は、現地の事態の推移を注視しながら考えたいとのみ述べた。
さらに、武器使用基準をめぐって、内閣法案が新たに「自己の管理の下に入った者」という規定を盛り込んで基準緩和に踏み込んだ憲法上の根拠を質したが、首相は正当防衛や緊急避難と同じく「自己保存のための自然権的権利だ」と述べ、固有の法的根拠を示さなかった。
最後に伊藤議員は、日本は今後国際社会においていかなる地位を占めようとするのかと問いかけ、軍事的活動は抑制しながら世界平和の構築に努力する国であるべきだという考えを提起。そして、今回の対応においても、パキスタンやアフガニスタンに対する水の確保、土地改良などの復興支援が極めて重要だと述べて質問を終えた。
中長期的なアフガン支援、中東外交を~末松義規衆院議員が代表質問
内閣提出のテロ対策特別措置法案、自衛隊法改正案、海上保安庁法改正案の審議が10日から始まり、衆議院本会議で法案の趣旨説明と代表質問が行われた。民主党・無所属クラブの2番手として、末松義規議員が登壇し、政府の考えをただした。
末松議員は、まず主に外交的な側面から質問を展開。「国連に常設のテロ監視機構を、日本が音頭をとって設置することも主体的外交努力の一環だ」と提案した。
また、「イスラム世界に対し、宗教上中立的なわが国の立場を明確にし、対テロ撲滅支援を独自に働きかける、精力的な外交を展開するべき」と述べて、政府のテロ対策で影が薄くなっている田中外務大臣に「パキスタンやイランなど周辺国や中東諸国を直接行脚して、日本の顔となるべき」だと進言した。田中外相は「連日、在京大使や国際関連機関と密接に情報交換している」と強がって見せたが、質問には直接答えなかった。
末松議員はさらに「事態の沈静化後、日本が中長期的にアフガニスタンの復興支援を中心に努力していくと、今から世界に向かってアピールすることが外交上有益だ」と提起。アジア外交においても、「対テロ撲滅支援という現時点での材料を活用し、アジア諸国間の共通認識と連帯をさらに深めていく戦略的発想で対処すべき」と主張し、その例として、日本・中国・韓国の首脳が3者会談を行い、対テロ撲滅宣言を出し、ASEANやAPEC諸国に共同で働きかけるシナリオを示したが、田中外相は一般論を述べるにとどまった。
次に、末松議員は今回の支援の財源規模を塩川財務相にただしたが、財務相は「目下のところ予想がついていない。米側の要望がなければわからない」と答えるだけだった。
新法の内容では、末松議員は、まず武器弾薬の輸送について「TV等で日本から膨大な武器弾薬を積み込む映像が大々的にイスラム諸国に流れるシーンを思い浮かべて欲しい」と述べ、「敵対的な印象を持たれるのは必至で、たいへんな外交的な損失」と指摘。「難民支援や医療支援にあたる自衛官や日本人NGOの危険度を1000倍にもあげ、自分の首をしめるもの」として、武器弾薬の輸送はすべきではないと主張した。しかし小泉首相は「仮に武器弾薬をはずせば、いちいち確認しなければならず、迅速な対応ができない」との技術論を述べるだけで、末松議員の懸念には答えなかった。
また、末松議員が自衛隊が携行する武器のレベルについて、「機関銃以上の対戦車砲などの装備も許容するのか」と尋ねたが、中谷防衛庁長官は「現時点で示すのは困難だ」と述べるだけだった。
末松議員は、最後に「今回の対テロ対応は、日米同盟関係の現実的な視点とともに、宗教・民族の巨大な歴史的対立に日本民族を巻き込ませないと視点が重要」だとし、将来の国益を踏まえたたくましい外交を行うよう要請して質問を終えた。
首藤信彦議員がパキスタンから帰国
対テロ報復攻撃をめぐる現地情勢を調査するためパキスタンを訪れていた民主党の首藤信彦衆議院議員は10日朝帰国し、ただちに党本部で帰国報告会を行った。鳩山代表、菅幹事長、羽田特別代表や多くの議員が出席し、生々しい現地のレポートに熱心に聞き入った。
当初11日に出発することにしていた首藤議員は、国会日程の都合で急きょ予定を繰り上げて7日に日本を出発。フライトが次々とキャンセルされる中、バンコク経由でカラチに入り、空港のテレビでBBC放送が伝える空爆開始の第一報を知った。
空爆開始を告げるブッシュ大統領のテレビ演説が放送され、「いまこそタリバンは代償を支払うだろう。(And now, the Taliban will pay a price.)」と大統領が語ったとき、テレビの前のパキスタン人たちは一斉に首をふり、顔をそむけたという。その光景を目の当たりにした首藤議員は、「アメリカの攻撃に対する、けっして過激派などではない、パキスタンの普通の人たちの国民感情はこのようなものだ」と語った。
国内便のキャンセルが相次ぐ中、かろうじて飛んだパキスタン航空の旅客機で翌日早朝にイスラマバード入りした首藤議員は、さっそくパキスタン外務省の、カムラン・ニアズ外務次官補(アジア太平洋担当)と約1時間にわたって会談した。
同次官補は、日本の経済制裁解除を要請するとともに、「パキスタンは米軍の上陸を許さない。米国側も十分承知して、活動を拡大させて上陸しないだろう」と述べ、米軍がパキスタン国内の基地などを利用することに反対する姿勢を示したという。
また、同次官補は「アフガニスタンに米軍が入り、基地を作ることにはパキスタンも中国も問題にする」と指摘。将来のアフガニスタンの政権構想については、「アルカイダは消滅すべきだが、タリバンは消滅させるべきではない。ビンラディン氏、オサマ師を排除し弱体化をねらうべき。(タリバン政権の多数派民族)パシュトゥン族が中心でなければならない。北部同盟を構成する民族では国内を治められない」として、北部同盟の拡大には否定的な見解を示した。紛争後のアフガン政府については「国外の臨時政府ではいけない。アフガン国内での諸民族の統合体としての政府が望ましい」と首藤議員に語った。
同次官補は、「重要なのは紛争後。農業、土地の改革、水の獲得に力をそそいでほしい」と紛争後の支援について要望した。
このあと首藤議員は、カーイデアーザム大学・戦略研究所長のリファート・フセイン博士と会談し、紛争解決やテロ問題の専門家同士として意見交換した。
この中で、フセイン博士は、空爆後のアフガニスタンの平和の回復について、「非常に困難」との見方を示し、その根拠として、アフガン国内に政府機構と諸制度が存在しないこと、長年の紛争で民族構成が複雑化したことなどをあげた。また、紛争後に膨大な武器が国内に残されることへも懸念を示し、特に対タリバン対策として米国などが北部同盟へ武器供与することは「絶対してはいけない」と断言した。
また博士はアフガン再建のためには、海外に出てしまった同国の中産階級を呼び戻すことが不可欠と指摘。日本に対しては、「マーシャル・プラン(第2次大戦後のヨーロッパ経済復興計画)のような、“ジャパン・プラン”を作って貢献して欲しい」と述べた。
「日本の自衛隊の活動に対してパキスタン国内の反発はないのか」と首藤議員が尋ねたのに対し、博士は「パキスタンは日本とアメリカを分けて考えている。日本はアメリカとは違うというプロファイル(表に見える姿)をきちんと見せるべきだ」との考えを示した。
首藤議員はさらに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のペシャワール駐在事務所の羽生副代表とも会談。パキスタン国内では、空爆開始後、国連機関が現地民の襲撃対象となっており、職員が自宅軟禁状態になるなど治安が悪化している。羽生副代表は危険をおかして事務所まで来て、アフガン内部の様子、難民受け入れの困難さなどを首藤議員に語った。
羽生氏によると、アフガニスタンへの地上軍の攻撃が始まれば、ペシャワール周辺だけで100万人の新たな難民受け入れが必要になるという。しかし、土地と水の確保が問題で、パシュトゥン族の自治地域では新たなキャンプを設置するのは難しいとのことだった。テントも6万本が必要とされているが、今回自衛隊の輸送機が運んだ数はわずか315本。パキスタンでは「シンボル的なもの」と受け止められているという。
帰路のフライトもぎりぎりまで決まらず、首藤議員は翌日の最終便で帰国する予定を、キャンセルを警戒し4時間前の便に変更。往路で通ったパキスタン西側航空路がまさにアメリカ軍の空爆ルートとなっており、カラチ経由はキャンセルになるため、東側ルートを通るバンコク経由・香港行きのパキスタン航空で出国することができた。
1泊4日の強行軍で帰国した首藤議員は、「マスコミの伝える2次情報ではなく、現実に起こっている一次情報をもっと国会の議論に反映させるべきだ。それが新しい政党のあり方だと思う」と語った。
政府与党は現地ニーズを理解していない~テロ対策・アフガン難民支援で鳩山代表が指摘
民主党の鳩山由紀夫代表は10日の定例記者会見で、アメリカ同時多発テロに関する政府対応に「政府・与党は自衛隊派遣にばかり重点をおいているが、現地ニーズを理解しないまま“ショー・ザ・フラッグ”にふりまわされている感がある」と疑問を呈した。この日の朝行われた民主党の首藤信彦衆議院議員のパキスタン調査報告に触れた中で語った。
また、首藤議員の報告会に続いて党本部で行われた、アフガンの難民キャンプで医療活動を展開している中村哲医師の講演内容を紹介。「本来の支援は難民を出さないようにするにはどうするかを検討することであり、貧困にあえいで身動きがとれず、難民にさえなれずに流民化している人たちをどう救うかの検討こそ大事」と感想を述べた。
鳩山代表はそうした視点に基づき、「難民を出させないための水や食料の援助、公共事業援助などによる雇用の創出など、彼らが何より望む平和的解決策を模索すべきだ」とした。
また、この日行われたテロ対策特別措置法案に関する代表質問での小泉首相の答弁に関して、「どうあっても国会承認を避けたい姿勢が垣間見れる」と指摘。同時に、首相が自衛隊がどう行動するかの具体例を示さないことに対して、「基本計画の中身についても充分な吟味が必要。内容がわからなくては賛成しようもない」と批判した。《民主党ニュース》