平成2357日目

平成7年6月22日(木)

1995/06/22

【全日空857便ハイジャック事件】捜査員が突入、犯人逮捕

羽田発函館行き全日空857便ボーイング747(乗客・乗員365人)がハイジャックされた事件で、北海道警などの捜査員約50人が22日午前3時40分すぎ、函館空港に駐機中の機内に強行突入、同45分、犯人の男をハイジャック防止法違反の現行犯で逮捕した。

調べでは、男は東京都大田区、東洋信託銀行行員K容疑者(53)。同容疑者は休職中だった。機内では「仲間がいる」としていたが、単独犯行と分かった。

函館市消防本部によると、乗客、乗員のうち7人がけがをしたりショックなどのため病院に運ばれたが、いずれも症状は軽いという。他の乗客らは無事救出された。事件は発生から約16時間ぶりに解決に向かった。国内で起きたハイジャック事件で警察官が機内に突入したのは初めて。

K容疑者は逮捕直後、捜査員に「すいません、すいません」と繰り返し、犯行を認める供述を始めた。犯行時、スチュワーデスに乗客を縛らせたという。北海道警は動機などを追及するとともに早朝から機内を検証し、犯行の詳しい状況を調べた。

道警などによると、同容疑者は逮捕の際、頭に軽いけがをした。長さ約20センチのアイスピックのような工具と銀色の袋を持っており道警が押収。機内でほのめかしていたというプラスチック爆弾などの凶器は発見されなかった。

突入当時、乗客の多くは粘着テープやひもで縛られ、1階後部の床に座らされていた。12人のスチュワーデスのうち11人も縛られていた。負傷などした乗客は函館市内の2つの病院に収容された。このうち横浜市の会社員(24)は左肩を刺されたという。

調べでは、ジャンボ機からハイジャックの連絡が入ったのは21日午前11時58分ごろ。山形県上空を飛行中、同容疑者が2階の客室でスチュワーデスにアイスピックのような工具を突き付けて脅し、同機を乗っ取った。「コバヤシサブロウ」と名乗り「給油して東京に行け」などと要求した。

これに対し、政府は要求を拒否し、同機は函館空港の駐機場に止まったまま長時間が経過。同容疑者が乳幼児を含む人質の解放要請を拒み、22日未明には乗客らに危害を加えたとの情報も入ったことや、単独犯行との見方が強まったことなどから、捜査当局は機内突入を決めた。

北海道警によると、K容疑者が、オウム真理教との関係をにおわせるなどしたため、地下鉄サリン事件との関連も考慮し突入に慎重を期したとしている。《共同通信》

村山富市首相、突入決断は午前1時

政府は全日空機乗っ取り事件に対処するため、21日に引き続き22日未明まで首相官邸で、村山首相や政府対策本部長の五十嵐官房長官、園田、古川両官房副長官らが頻繁に対応策を協議するなど徹夜態勢をとった。

政府は乗員・乗客の安全確保を優先しながら犯人にはき然とした態度で臨むとの方針で対応策を検討。五十嵐官房長官によると、現地の警察判断を尊重しながら22日午前1時ごろ、首相、野中国家公安委員会委員長(自治相)と連絡を取って警察官の機内への突入を決断した。《共同通信》

機内に複数の工具

全日空機乗っ取り事件で、ハイジャック防止法違反の現行犯で逮捕された休職中の東洋信託銀行員K容疑者(53)が座っていたシート付近に、ペンチやスパナとみられる複数の工具が残されていたことが22日、北海道警の調べで分かった。

事件に使われたアイスピック状の凶器は、先のとがった金属部分を柄に差し込むタイプのドライバーと似ており、北海道警はペンチなどと一緒に工具セットを装って空港での検査をパスし機内に持ち込んだ可能性があるとみて調べている。

北海道警は同日、捜査本部を設置し本格的な取り調べを開始。K容疑者は調べに対し「やったことはやった」と容疑を認めているが、動機など核心部分については黙秘を続けているという。

調べによると、K容疑者の座席は2階の最後部で、複数の工具類は後ろから2、3番目の座席付近で見つかった。操縦席にはに通常、工具が装備されているが、客室へ運び出された形跡はなく、K容疑者が持ち込んだとみられる。

捜査本部によると、K容疑者は頭部に傷を負っており、逮捕後、病院に運ばれ、5針縫った。取り調べの際には疲れている様子がみられたが、落ち着いており、食事は「とりたくない」と拒否したという。捜査本部は23日午後、同容疑者を送検する方針。

東洋信託銀行社長が謝罪

K容疑者が勤務していた東洋信託銀行の武内伸允社長は22日午後、記者会見し「多数の関係者にご迷惑を掛けて深くおわび申し上げます」と謝罪、K容疑者を処分すると述べた。

東洋信託銀行によると、K容疑者は昭和39年4月に入行、主に経理畑を歩み、総合企画部課長を経て、平成4年4月からはシステム部調査役としてコンピューターを使った業務手順の決定、改善の仕事をしていた。仕事に関しての知識や能力は高く、自分の意見もはっきり言う活発な行員で出世のスピードも速かったという。

しかし、調査役になる前の3年ごろから気管支ぜんそくや自律神経失調症などのため休みがちになり、同5年10月からは欠勤状態で、翌6年10月からは休職届が出ていた。

休職中も同行の診療所に、月一回くらいの割合で診察にきていた。5月25日に人事部を訪れ「ぜんそくがひどくて何もする気が起きない」と病状報告した際には、変わった様子はなかった、という。

武内社長は「病気がひどいと聞いていたので、こんな大それたことをするとは全く信じられない」と釈明。具体的な処分について聞かれると「マスコミからの問い合わせで、突然知ったばかりなので…」と困惑した表情を見せた。

政府対策本部が解散

政府の「全日空機ハイジック事件対策本部」(本部長・五十嵐官房長官)は、事件の解決に伴い、22日午後に首相官邸で開いた3回目の会合で解散した。今回の主な問題点として①危険物の持ち込みチェックの強化②乗務員の教育訓練③関係省庁間の連絡支援体制の強化−などが指摘された。野中国家公安委員長(自治相)は、管制塔から監視できるよう機内に防犯カメラを設置すれば役立つと提案した。

対策本部の冒頭、五十嵐長官は「(危機管理に詳しい)後藤田元副総理から電話で『今回は満点』と言われ、うれしかった」などとあいさつした。《共同通信》



【村山富市首相】水俣病救済で遺憾の意

村山首相は22日午後、国会閉幕を受けて内閣記者会と会見し、解決に向けて前進を見た水俣病問題について「公害・環境問題の原点であり、政治家として40年間も解決を見いだし得なかったのは、共通して責任を感じるべきだ。誠に遺憾」と述べ、首相個人として初めて遺憾の意を表明した。その上で「具体的な内容を詰めていきたい」として与党案を尊重しながら早期決着を目指す意向を示した。

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)へのコメ供与が正式決定したことに関連して、首相は「日朝の不正常な関係を一日も早く解決することが、アジア太平洋の平和に役立つ」と述べ、コメ支援を機に日朝国交正常化に全力で取り組む考えを強調。コメが軍用に転化されるのではないかとの懸念を否定した。

首相は全日空機乗っ取り事件について「機内の情報が正確につかめず、時間がかかった」としながらも、政府の危機管理体制については「可能な万全の策を取り得た」と強調した。《共同通信》

【政界談話室】

○…村山首相はハイジャック事件が無事解決した22日、記者団に「ことしに入って天災、人災いろいろあるが」と聞かれると、「50年のしわ寄せが一気に来た感じ。でも私がしっかり受け止めますよ」と余裕の回答ぶり。続けて、この日の記者会見についても「首相冥利に尽きるのでは」と持ち上げたが、これには「国会終了のために(会見を)したんだから」と一転抑制を効かせた。「でも解決したのとしないのでは違うでしょう」としつこく聞くと、最後は「解決した方がいいに決まっているが…。解決したからいいようなものの」と綱渡りの思いだったことをポロリ。

○…橋本通産相はこの日、都内で講演し「6年前、私は負け戦の幹事長だった。土井さんにコテンパンにやられ、自民党が結党以来の大敗北を喫した。党の落日はあそこではっきりしたのかも」と、6年前の参院選を振り返った。さらに、参院選で社会党が敗北しても村山首相の責任は問われないとの見通しを示しながらも、一方で「いま社会党は首相を出している政権与党として非常に大きな責任を持っている。『ダメったらダメ』と言って消費税を片付けたようなやり方はできない」と再び土井元社会党委員長(現衆院議長)の話に逆戻り。恨みの根はかなり深い?《共同通信》

【米・クリントン大統領】日本の政策は不公正

クリントン米大統領は22日、ニュージャージー州エディソンのフォード自動車工場で演説し、日米自動車問題について「日本のシステムは公正ではない」とあらためて批判、日本の自動車市場が保護されており米国からの輸入を妨害していると述べた。

ジュネーブでこの日始まった日米次官級交渉を念頭に、米国民に対し日本市場の閉鎖性と、日本の政策が米国内の雇用を奪っていることを訴えた。

大統領は「(問題は)日本の関税や輸入枠といったことではなく、極めて複雑なシステムがわれわれを排除するようにできていることだ」と非難した。大統領はさらに「28日の時点で市場開放への合意が得られなければ、13種の(日本製)高級車に100%の関税を課するよう通商代表に命令した」と述べた。《共同通信》

6月22日のできごと