平成1945日目

平成6年5月6日(金)

1994/05/06

【永野茂門法相】「南京事件でっち上げ」発言を撤回、陳謝

永野法相は6日午後、法務省で会見し、毎日新聞のインタビューに「南京事件はでっち上げだと思う」と発言したことについて「不適切な発言であり、撤回したい。南京虐殺は否定できない事実だ」と撤回した。自らの進退については「責任は十分感じている。任命権者の羽田首相の指示に従う」と述べ、首相に一任する考えを示した。

法相は「自分から辞任することもあるのか」との質問に、「もう少し考えさせてほしい」と答え、自ら辞任を決断する可能性にも触れた。ただ首相はブリュッセルの記者会見で、現段階で直ちに法相の責任を問うことに慎重な姿勢を示した。

野党各党は発言の撤回に対しても「自らが進退を明らかにすべきだ」(社会党)と辞任を要求。与党内にも「閣僚の責任」(公明党)を求める声は強い。アジア諸国の反発は広がりを見せており、法相辞任で決着の方向となってきた。少数与党政権の羽田内閣は発足早々苦境に立たされている。

会見の冒頭、法相は「私の発言は不適切であり、撒回したい」との釈明のコメントを読み上げた。その上で、法相は羽田首相から5日夜に電話があり、「南京大虐殺発言は適切でない」との注意を受けたことを明らかにした。

「南京事件はでっち上げ」発言の真意については「そういう事実があったことは否定しない」と謝罪、さらに太平洋戦争については「侵略行為、植民地支配とかで多くの方々に耐え難い苦しみをもたらした。太平洋戦争を正当化することはできない」と指摘、「日本の独善的な独り善がりな考え方で、痛ましい結果となった。深い反省とおわびを申し上げる」と自分の「言葉足らずと説明不足」を強調、重ねて陳謝した。

従軍慰安婦問題についても「軍の関与の下に女性の名誉と尊厳を深く傷付けた」と述べ、「反省とおわび」を繰り返した。

しかし、質問への法相の答えでは、南京大虐殺に「本当に大虐殺と言えるのか、疑問を持っている。1000人、2000人でも大虐殺と定義できる」と微妙な意見を述べた。また、個々の「侵略行為」は認めながらも、太平洋戦争の基本的性格について「侵略戦争か」との質問に対し、「そう受け止められてもやむを得ない」と苦しい答えにとどまった。《共同通信》



【社会党】罷免要求の構え

社会党は6日、永野法相の南京事件に関する発言を「内閣の帰任、閣僚の資質が問われる重大な問題」(久保書記長)として、羽田首相の対応によっては、週明け後の予算審議の前に罷免要求を突き付ける強硬な構えを見せている。

今回の発言は「タカ派色をさらけ出したもの」(社会党首脳)と受け止めており、法相が辞任した場合でも、羽田政権全体の姿勢を問いただしていく考えだ。《共同通信》

【自民党】軽率、と法相批判

自民党は、永野法相が「南京事件はでっち上げ」な発言、6日に発言を撤回した問題について「軽率であり、現職閣僚として慎重であるべきだった」(森幹事長)と法相批判を強めている。しかし、法相の進退問題について執行部は羽田首相の今後の対応を見極める姿勢を崩しておらず、罷免を求めている社会、共産両党と比べて歯切れの悪さも否めない。

この背景には「(永野発言は)基本的に正しい。敵失に乗じてクビをとるような態度は取るべきではない」(党有志で作る「歴史検討委員会」事務局長の板垣正参院議員)とする意見も根強いため、この時期に党内の歴史認識の相違を表面化させるのは得策ではないとの判断があるようだ。

ただ、羽田内閣に対しては森氏が「不幸な戦争が繰り返されることがないよう平和を追求していくことが政治の基本姿勢でなくてはならない」と注文をつけたように「永野氏の法相起用が間違いだった」との空気が大勢となっている。《共同通信》

【羽田孜首相】永野法相を厳重注意

欧州訪問中の羽田首相は6日夕(日本時間同日深夜)、最後の訪問国であるベルギーのブリュッセル市内のホテルで記者会見し、南京大虐殺を「でっち上げ」などとした永野法相発言への対応について「適切さを欠いて率直に残念に思う」との認識を表明、法相に直接厳重注意したことを明らかにした。

その上で首相は法相の進退問題については法相が発言撤回と陳謝の記者会見をした事実を指摘、「法相が発言を撤回し、おわびしたいと言っていることを重く受け止めたい」と述べるとともに「彼と一緒に仕事をしていきたいというのがいまの率直な気持ちだ」として、当面は責任問題を考えずに国際社会の理解を得ることに全力を挙げる方針を強調した。

首相は同時に「今の段階で辞任うんぬんするのは避けたい」とも述べ、韓国や中国など近隣諸国の反応によっては法相の進退で新たな判断を行うことに含みを持たせた。首相は戦争責任をめぐり「先の大戦の侵略的行為、植民地支配が多くの国の皆さんに耐え難い苦しみ、悲しみをもたらした。このことを率直に反省し、分かりやすい言葉で率直におわびする」と述べ、細川前内閣の戦争責任問題に対する評価、認識を踏襲する考えを重ねて明らかにした。

また、永野法相を任命した責任に関し首相は「長いこ交友があり、人格高潔、バランス感覚を持った人で法相をお願いした」と法相任命に誤りはなかったとの立場を強調。国際社会の理解を得るため「行動で示していきたい」と述べ、具体的には各国の大使館を通じて、真意を伝える努力を始めたことを明らかにした。《共同通信》

【ポーラ・ジョーンズさん】クリントン大統領からセクハラ

アーカンソー州知事時代のクリントン米大統領にセクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)を受けたとする元同州職員ポーラ・ジョーンズさん(27)が6日、公民権法違反を理由に、大統領らを相手取り70万ドル(約7000万円)の損害賠償を求める訴えをリトルロックの連邦地裁に起こした。

クリントン大統領の弁護士は同日記者会見し「大統領はそういう事実はなかった、と全面否定している。有名人になって金をもうけようという訴訟だ」と反論、徹底抗戦の構えを明確にした。《共同通信》

【英仏海峡トンネル】開通

ドーバー海峡の下に掘った地下トンネルで英国とフランスを結ぶ英仏海峡トンネルの公式開通式典が6日午後、海峡を臨むフランス側のカレー・ターミナルでミッテラン・フランス大統領、エリザベス英女王が出席して行われた。トンネルは2世紀に及ぶ両国民の夢で、この日の開通式典により英国と欧州大陸は正式に「陸続き」となった。

式典ではまず、パリとロンドンからそれぞれ高速列車でカレーに着いたミッテラン大統領とエリザベス女王が両列車に間に張られたテープにはさみを入れ、祝辞を述べた。式典には欧州連合(EU)のどロール委員長、デハーネ・ベルギー首相らも出席した。《共同通信》



5月6日のできごと