平成1858日目

平成6年2月8日(火)

1994/02/08

【与党代表者会議】6兆円減税先行で決着

細川首相の国民福祉税構想に端を発した増減税問題は、8日午前の与党代表者会議で、所得税など総額6兆円の減税を先行実施し、財源措置は与党協議機関を設け検討することで最終合意した。

国民福祉税は事実上撤回され、協議機関では財源について新鋭の創設問題を含め議論する。導入する場合の税率、実施時期などいずれも今後の検討にゆだねられるが、「与党の合意を得て年内に成立させるものとする」として、年内の法制化を確認した。

これにより増減税問題は決着し、社会党は政権に踏みとどまることになった。しかし同問題が招いた政権内部の亀裂と首相の指導力低下は、今後の政局運営に影を落とすことになった。《共同通信》



【細川護熙首相】福祉税への批判に陳謝

細川首相は8日夕、6兆円減税の先行実施と国民福祉税構想の撤回が決まったことを受け首相官邸で記者会見し、「国民福祉税をめぐる政策決定の在り方への批判に対し、率直に国民におわびしたい」と謝罪した。一方で首相は、減税財源などに関する与党協議機関での今後の論議について「私の提案した考え方を踏まえ協議してもらうことで、税制改革の道筋が明確になった。所得・消費・資産のバランスのとれた税制を構築する基本的考え方は不変だ」と述べ、直間比率の見直しを図る方向に変わりないことを強調した。

首相は、いったん示した構想を撤回した政治責任について「首相発言の重みは重々認識している」と述べ、るにとどまり、「(協議機関の結論を)年内にまとめ法案成立を図るよう政府与党一体で最大限努力するのが最大の政治責任だ」と強調した。税制改革については「活力ある高齢化社会を築くため、それなりの負担をしなければならないと政治は率直に言うべきだ」と述べ、「税率とか(増税)時期にはこだわらない」と柔軟な姿勢も示した。

今回の一連の経過について「初の本格的連立政権であり、今後も試行錯誤はあり得ると理解してもらえる。誤りがあれば、ためらいなく軌道修正する」と釈明した。首相は連立政権の政策決定をめぐり「唐突、性急で密室的だとの議論が多かった」と認めた上で、「連立政権はどうしても政党間交渉になり制約がある」と弁明。同時に「できる限りしっかりしたものにして円滑に進むよう努める」と述べ、政策決定システムの改善に取り組む姿勢を見せた。

減税が、夫婦と子供2人、年収500万円の家庭で年約4万円程度にとどまることについては「景気回復の芽を膨らませ本格的回復に寄与する」と述べ、日米首脳会談でも「それなりの評価をしてもらえる」と自信を示した。大蔵省主導との批判に対しては「財政当局の出番はほとんどなかった。大蔵省がごり押ししたとは感じていない。政治がリーダーシップを振るっていくことが大事だ」と述べた。《共同通信》

【社会党・村山富市委員長】「官僚主導見直しを」

社会党の村山委員長は8日午後、国会内で記者会見し、「国民福祉税」構想撤回までの経過に関して「首相も反省していると言っているが、一連の経過を解明して直すべきところは直すことが今後のために大事だ」と述べ、官僚主導といわれる連立政権の政策決定の在り方を見直す必要があるとの考えを表明した。

村山氏は「大蔵官僚が中心になったのか、だれが決めたのか定かでないが、官房長官も厚相も知らず、政府与党一体には欠ける点があった」と指摘。また代表者会議を中心とした連立与党の意思決定システムについても「もう少しガラス張りにして国民に分かる形に工夫する必要がある」との認識を示した。

会見に先立って開かれた社会党の代議士会では、坂上富男衆院議員から「大蔵省の斎藤事務次官が細川首相の上に立つような形で、こんなばかなことをした。連立が官僚になめられている。責任を取って勇退してもらうぐらいのことがあっていい」と、斎藤次郎大蔵事務次官の引責辞任まで求める厳しい大蔵省批判が吹き出した。《共同通信》

【新生党の小沢代表幹事】「全面無条件降伏」

新生党の小沢代表幹事は、8日午後、減税財源問題が決着したことを受けて記者会見し「持論からいえば全面無条件降伏だ」と繰り返した。さすがの小沢氏も社会党への「全面譲歩」を強いられたことで、いつもの強気一点張りとはいかなかったようだ。

細川首相や小沢氏の手法に批判が集中していることに対しては「あんたら(マスコミが)分かりもしないことを書いている」と開き直りとも受け取れる発言に終始した。《共同通信》

【自民党】「財源先送り無責任」

自民党は8日、政府与党の増減税問題決着について「1年の時限立法措置の所得減税は、その場限りの膏薬ばり。財源決定先送りは誠に無責任」と批判するコメントを発表。国民福祉税構想を提唱しながら撤回した細川首相の無責任さと、政策決定過程の不透明さを国会審議で追及していく方だ。

減税財源としての消費税率アップに現段階では反対としながらも、将来の高齢化社会に備えて「中期的にみれば、税制改正の時期に来ている」(河野総裁)として、絶対反対の立場は取らない構え。「内閣総辞職に値する大事件」(渡辺元外相)との声は一部で、退陣要求が党内の大勢にはなっておらず、決め手のない追及になりそうだ。

橋本政調会長は記者会見で「首相の裁断がひっくり返る事態は問題」と批判。ただ減税財源については「政府が行政経費の節減などで行った上で、国民の理解を得られる財源で補てんすべきだ」と、歯切れが悪かった。党内には「減税実施はみんな賛成だ」(河本派幹部)、「政府の政策決定のプロセスは批判できても、決着内容についてはあまり言えない」(宮沢派幹部)などとする声も出ている。《共同通信》

【政界談話室】

○…細川首相は8日朝、増減税問題の決着を前に自信に満ちた表情で官邸入り。記者団がスケジュール通りに予算編成が可能か尋ねると「さあ、これからですから」。マスコミ各社の支持率が低下していることについても「上がったり下がったりですから」と得意のせりふでけむにまいた。記者団の質問が国民福祉税構想をめぐる混乱の責任に及ぶと表情は一変。「記者会見で話します」と逃げの一手に。「責任ある変革」のスローガンが重荷になってきた?

○…公明党の市川書記長はこの日、減税問題決着後の記者会見で閣僚を兼ねる各党党首が国民福祉税構想の決定過程に異議を唱えたことに「与党的立場で言うべきところを閣僚として言うと混乱が起きる」と批判、さらに「党首は党の決定過程で影響力を行使すべきだ。でないと代表者と党首の意見が違うということが起きる。(それを)分かっている人と分かっていない人がいる」と大内厚相らの「聞いていない」などの発言が腹に据えかねた様子。「党首が閣僚であるのは連立の宿命だがそれをどう克服するかが課題」と問題提起しながらも「なかなか直らないでしょう。性格だから」と不信ここに極まれりといった感。《共同通信》



2月8日のできごと