平成1317日目

1992/08/16

【第74回夏の甲子園】星稜・松井秀喜選手、5打席連続敬遠

(16日・甲子園)屈指の好カード、明徳(高知)―星稜(石川)はわずか二度のチャンスを生かした明徳が1点差でかわした。徹底マークにあった星稜の松井は、史上2人目の5連続四球(全5打席)。3年連続17度目の天理(奈良)は樹徳(群馬)の追い上げに最後冷や汗をかいたが、サヨナラ勝ち。宇都宮南(栃木)は、六回の集中打で大社(島根)を逆転。佐世保実(長崎)が3年ぶりの常総学院(茨城)を延長十一回、サヨナラスクイズで下し、長崎県勢の初戦連敗を7で食い止めた。《読売新聞》

1打席も、いや1球すらも勝負してもらえなかった。跳びついても届きそうにない球もあった。ボールばかり20球で5つの四球。松井はこの日一度もバットを振ることなく、夏の終わりを迎えた。小さく舌打ちした。ため息も出た。しかし、言葉が出てこない。心の中を伝える適当な言葉そのものが見当たらない。まして口を開く気にもなれないのだろう。ともすれば涙がこぼれそうな目で、松井はしばらく天井を見つめていた。

やっと「何も考えられません」と、声を絞り出した。「終わった瞬間は負けたという気がしませんでした。いまでもそういう気になれません」聴き取れないほどの小さな声に、悔しさがにじみ出た。

松井が怪物であることは誰もが認めている。得点圏に走者をおいて一塁が空いていれば、勝負を避けられるのも仕方ない。本人も「ケースによっては四球もある」と、ある程度は覚悟していた。それが一回の先制機。二死三塁の場面であり、2点差を追う三回の一死、二、三塁の追撃機だろう。だが相手は徹底していた。

五回は一死一塁から、七回は二死走者なしから歩かされた。そして1点が欲しい九回二死後、山口が「何とか松井にもう一度回してやりたい」と、三塁打でつないだが、5度目も同じ結末が待っていた。松井は自分の発言が相手を傷つけることを思いやったのかもしれない。報道陣が問いかける答えをぐっと飲み込んだ。「先のことはまだ考えられない」最後の夏が思い出に変わるには、長い時間がかかりそうだ。《共同通信》

5打席連続敬遠。異様などよめきが甲子園球場に広がり、球場全体がブーイングの渦に包まれた。夏の高校野球大会七日目の16日、第三試合の星稜(石川県)―明徳義塾(高知県)戦で、明徳義塾は大会屈指の強打者、星稜・松井秀喜三塁手に対し、徹底敬遠の作戦に出た。一試合5打席連続四死球は、大正15年以来66年ぶりの珍記録。牧野直隆高野連会長はこの作戦を批判し「無走者の時は正面から勝負してほしかった」と語った。勝敗へのこだわりか、スポーツマンシップか―。ファンに後味の悪さを残したゲームは、高校野球のあり方に一石を投じた。

星稜の三塁側アルプス席では二度目の敬遠の時から「またか、勝負しろ」の怒号が沸き起こり「勝負、勝負」の催促コール。しかし、河野和洋―青木貞敏選手の明徳バッテリーはその後も敬遠策をとり、松井選手の豪打を期待して詰めかけた大観衆5万5000人からブーイングが浴びせられた。騒ぎが頂点に達したのは九回表二死三塁の場面で、5回目の最終打席もやはり敬遠。耳をつんざく「ブー」の大合唱が球場全体を包んだ瞬間、三塁側スタンドか一らグラウンド内に応援用メガホン、ビールの空き缶などが投げ込まれ、試合は一時中断。ベンチの星稜ナインらがメガホンの回収に奔走、異様な緊張感が球場に張り詰めた。

結局、松井選手に投じられた20球はすべてボールで、一振りもしないまま2―3で星稜が惜敗した。明徳義塾の校歌が流れると、スタンドから「帰れ、帰れ」の怒号が飛び交い、観戦したファンの一人、会社員(67)(東大阪市)は「松井君の本塁打を楽しみにして来たのに残念。高校野球なんだから、正々堂々やらなくては」とがっかりした様子。

星稜ナインも、肩を落としてベンチに引き揚げて来たが、松井選手はうつ向いたまま。ようやく口を開くと「打ちたかった…」。他の選手も、口々に「逃げのピッチングなどしてほしくなかった」と不満をぶちまけていた。

山下智茂・星稜監督は「地方大会でも2回以上敬遠されたことはない」と、ぶ然とした表情。対する馬淵史郎・明徳義塾監督は「選手に嫌な思いをさせたが、よくプレッシャーに耐えてくれた」。

唇をかみしめ、硬い表情でバスへ走り込む明徳ナイン。続いて星稜ナインが出口から駆け出すと、集まったファンから大きな拍手が起きた。兵庫県西宮市内の明徳義塾の宿舎には試合途中から100本以上の抗議電話があり、大会本部もナインに外出を控えるよう指示した。《読売新聞》



【エジプト・ムバラク大統領】クウェート首脳と会談

カイロでの報道によると、エジプトのムバラク大統領は16日、オマーンからの帰路クウェートに短時間立ち寄り、ジャビル首長、サアド皇太子(首相)ら同国首脳と会談した。ムサ・エジプト外相によれば、会談では米・イラク対立激化で緊迫している湾岸情勢、およびクウェートなど海岸協力会議(GCC)6か国とエジプト、シリアが昨年3月に合意した湾岸平和雑持軍創設構想などを協議したという。クウェートはその後の対米英仏傾斜でいったんは合意をホゴにしたものの最近、サレム外相をエジプト、シリアに派遣、同構想の早期実現を促している。

一方、クウェートからの報道によると、サアド皇太子は大統領同行記者団に対し、「(エジプトなどの)同胞諸国に求められていることは、バグダッド政権の行動と意図に対処することだ」と、反イラク・アラブ諸国の共同歩調を求めるとともに、「クウェートは最高度の警戒態勢下にある」と強調した。《読売新聞》



8月16日のできごと