平成759日目

1991/02/05

この日のできごと(何の日)

【海部俊樹首相】90億ドル「武器・弾薬に使わぬ」

衆院予算委員会は5日午後1時から審議を再開、公明党の市川書記長、二見伸明政審会長、社会党の島崎譲元政審会長が、それぞれ質問に立ち、湾岸戦争問題を中心に政府の見解をただした。答弁の中で首相は、多国籍軍に対する追加財政支援90億ドルの使徒について、「輸送、食料などに充当するという方針は、それ以外に充当しない方針と同じだ」と述べ、追加財政支援は武器、弾薬に使わないとの政府の考えを明確に表明した。

首相はこれまで使徒について「輸送関連、医療、食料、事務関連経費などに充当する」と述べるにとどまっており、この答弁は「武器、弾薬に使うべきでない」とする公明党の主張に配慮して、一歩踏み込んだものだ。これに関連して首相は「(使徒は)湾岸平和基金の運営委員会で具体的に決定されるが、わが国の意思が伝わるようにする」と述べ、湾岸協力会議(GCC)との協議で政府方針の実現を図っていくことを強調した。《読売新聞》

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【坂本三十次官房長官】首相答弁に理解

坂本官房長官は5日午前の記者会見で、タトワイラー米国務省報道官が日本の追加資金協力90億ドルが多国籍軍への後方支援に充てられると言明したことに関し、医療関連経費などに充当するとの海部首相の国会答弁を米国側が理解したとの認識を強調、「この点について日米の見解のそごはない」と述べた。

タトワイラー発言に関しては、これに先立つ閣議後の閣僚懇談会で海部首相が自ら披露し、「(タトワイラー報道官がベーカー米国務長官の米軍戦費発言より)日本の首相が正しいと答えた。オレの言った通りじゃないか」と述べ、米側の同調が得られたことを報告した。《共同通信》

【湾岸戦争】多国籍軍、重点空爆を続行

開戦から20日目を迎えた湾岸戦争は5日、制空、制海権を掌握した多国籍軍が、地上戦に備えイラク軍の通信・補給路を分断する重点爆撃を続行した。イラク軍は、地上戦の主力部隊となる精鋭部隊、大統領警護隊の温存を図る一方、作戦司令部などを学校などの公共施設に移し、非軍事施設の攻撃ができない多国籍軍の弱みを突く作戦で対抗している。《共同通信》

【米・ブッシュ大統領】地上戦開始を見極めへ

ブッシュ米大統領は5日、ホワイトハウスで記者会見し、湾岸戦争の最新状況を協議するためチェイニー国防長官、パウエル統合参謀本部議長を今週末、サウジアラビアに派遣すると発表した。大統領は国防長官らの派遣は地上戦開始が近いことを示すものではないとしながらも、空軍力だけで目標を達成することには「懐疑的」と述べた。このため長官らの報告を基に、地上戦開始時期の見極めをつけることになるだろう。

大統領はイランの和平提案を正式なものとは受け止めていないとし「イラクと交渉することは何もない。停戦はクウェートからの完全撤退、クウェート正統政府の復権が条件」と強調、従来の姿勢を崩さなかった。

長官らのサウジ入りは4回目だが、開戦後は初めて。シュワルツコフ中東軍司令官およびサウジ軍当局らとの協議では、イラク南部とクウェートのイラク軍地上部隊の孤立化を狙った空爆第三段階の効果を分析し、地上戦の展望を探ることになる。現地滞在は2,3日間とみられ、来週前半には大統領に報告する。

大統領は地上戦開始の時期について「われわれの日程に沿い、国防長官らの十分な判断に基づき私が決める」と語った。

大統領は「イラクに国連決議を履行させるという当初の目標を変えておらず、空爆による民間施設への被害は最小限にするよう全力を尽くしている」と述べ、民間施設も攻撃対象にしているというイラクの批判をかわした。

一方、フセイン大統領が国内のクーデターなどで追放されるような事態について「彼以上に戦いを続けようと思っている者はいないはずであり、作戦成功を容易にするだろう」と述べ、期待感を示した。《共同通信》

【東京都・鈴木俊一知事】四選出馬を表明

今春の統一地方選の天王山となる東京都知事選で、都議会与党・自公民の3党中央から擁立を拒否されながらも強い出馬意思を示してきた鈴木俊一知事(80)は5日午後、定例都議会での施政方針演説で「東京の自治の伝統を守るため、出馬せざるを得ないと決意した」と述べ、四選出馬を正式に宣言した。

自民、民社両党の都連が鈴木氏を支持しているのに対し、自公民3党中央は別の統一候補者を擁立するため選定作楽に入っており、都知事選では初めて、保守・中道陣営が分裂した争いになる公算が大きい。

演説で鈴木氏は「都民らの支持の声にこたえることが進むべき道」と語るとともに「出馬は地方自治一筋に生涯をかけてきた私の責務」と結んだ。

昨年来、自公民の推薦を条件に出馬の構えをみせていた鈴木氏は、暮れの石田公明党委員長、小沢自民党幹事長の相次ぐ「擁立難色」発言で危機に立ち、今年1月10日、公明党の不支特決定で続投の目を断たれたかにみえた。

しかし、鈴木色の強い自民、民社両党の都議団、都連の擁立決議や各種団体の支持の声を受けて「自・民2党でも」と反撃。擁立を迫る自民都連と、これを拒絶する小沢幹事長の攻防が続く中、不退転の姿勢を崩さなかった。

1月末の自民党本部の推一立拒否決定に対し、都連が再擁立決議したのを受けて鈴木氏は「都民党」での出馬決意を明確にしていた。

鈴木氏は旧内務省出身。自治事務次官、都副知事、日本万博協会事務総長などを経て昭和54年に都知事に初当選。前の美濃部都政が残した赤字財政を立て直し三選を果たしてきた。《共同通信》

【自民党・小沢一郎幹事長】鈴木氏は推さぬ

自民党の小沢幹事長は5日午前の記者会見で、鈴木東京都知事が同日午後、四選出馬を正式表明する意向であることについて「党の方針はもう決まっている」と述べ、自民、公明、民社3党体制を堅持、鈴木氏を推す考えがないことを改めて表明した。《共同通信》

【政界メモ】“助け舟”に気取り直す

◯…浜田幸一氏の問題発言で5日ストップした衆院予算委が再開するまでの間、海部首相は不機嫌そのもの。記者が何を聞いても「あれは不穏当発言」「予算委員長が取った措置は正しい」とぶ然とした表情で繰り返すばかり。ついには「言いません。一言一句、また(揚げ足を)取られる」とピシャリ。

それでも昼前には予算委再開の見通しが立ち、海の向こうでタトワイラー米国務省報道官が「90億ドルは戦闘経費に充てず」との“助け舟”発言をしたこともあってか、「国会で答弁します。聞きに来て下さい」と気を取り直していた。

○…自民党の小沢幹事長はこの日、国会内に参院の比例代表議員を集め、参院青森選挙区補選に向けて「勝利した青森知事選の余勢をかって議席を確保したい。皆さんのお力添えを」と檄を飛ばした。

しかし、話はついつい混迷を深める東京都知事選へ。この日出馬宣言した鈴木都知事を名指しこそしなかったものの「自公民の協力体制は何としても維持していかねばならない」と敵意むき出しの“戦闘開始宣言”。ただ分裂選挙の先行き不安もあって「過去の経過は弁明しません。一切の責めは私が負います」と、すごみの中に悲そうな決意をのぞかせた。《共同通信》

【中川一政さん】死去

父母が石川県の出身で、郷土とゆかりが深く松任市名誉市民である洋画壇最長老、文化勲章受章者の中川一政氏が5日午前8時3分、心肺不全のため神奈川県湯河原町の病院で亡くなった。風邪をこじらせ1月18日から同病院に入院中だった。97歳。東京都出身。

大正3年、21歳のとき独学で初めてかいた油彩画を巽画会展に出品、審査員だった岸田劉生の目にとまって入選、画家としてのスタートになった。翌年、劉生らと草土社を、11年には劉生、石井鶴三らと春陽会を創立、今日まで同会に所属していた。

尾崎士郎の新聞小説「人生劇場」の挿絵を担当して一般に名を知られるようになり、戦後は神奈川県・真鶴に建てたアトリエで近くの海や山、瀬戸内の風景を描いた作品を次々と生んだ。「長崎風景」「尾道展望」「船着場」「真鶴の海」などだ。中川芸術のけんらんたる時期で、油絵や岩絵の具によって花や静物も描いた。

鮮やかな色調、絵の具を厚く盛り上げた筆触、多彩で奔放な筆の運びなどが特徴で、「日本のフォービズム(野獣派)」とも呼ばれた。短歌では昭和36年、歌会始の召人に選ばれた。50年文化勲章を受章。

90歳を過ぎても制作欲は衰えず、油彩、岩彩はもちろん、書やてん刻、陶芸にも作品が広がった。

代表作は「漁村凱風」「薔薇」シリーズ、「箱根駒ケ岳」など。エッセーも数多く「中川一政文集」(全5巻)などに収められている。《北國新聞》



2月5日 その日のできごと(何の日)