平成752日目

1991/01/29

この日のできごと(何の日)

【海部俊樹首相】多国籍軍支援「90億ドルは臨時増税で」

国会は29日午前10時すぎから、参院本会議で海部首相の施政方針など政府四演説に対する各党代表質問を行い、参院でも湾岸貢献策を中心に論戦に入った。

海部首相は多国籍軍への追加財政支援の必要性を強調するとともに、90億ドルに上る追加資金協力の財源として臨時的な税制上の措置を講じる」と述べ、増税によって国民に負担を求める考えを表明した。

同時に臨時増税分の税収が入るまでの措置として赤字国債を発行する意向も明らかにした。さらに首相は「現在のところ、これ以上の追加支援は考えていない」と述べ、湾岸戦争の長期化など展開次第で再追加支援の可能性もあり得ることを示唆した。

首相は避難民輸送のための自衛隊輸送機派遣に関連して、国際移住機構(IOM)から民間機だけでなく軍用機の提供要請があったことを明らかにした。《共同通信》

国会は29日午後、衆院本会議で海部首相の施政方針など政府演説に対する二日目の各党代表質問を行った。

首相は、90億ドル(約1兆1800億円)の追加資金協力を実施するための平成二年度第二次補正予算案の提出について「成案が得られ次第、国会に補正予算案とこれと一体の法案を出すべく努力している」と述べ、関連の増税法案などと同時に一括して提出する方針を表明した。

しかし具体的な提出時期については「財源措置の検討があり、また法案作成には物理的に相応の時間がいる」と指摘、かなり遅れることを示唆した。

これに関連して橋本蔵相は、毎年の予算編成でぎりぎりの節減努力を続けていることを指摘し、歳出経費削減による財源充当は困難との判断を重ねて示した。

質問には社会党の森井忠良国対副委員長、共産党の金子満広副委員長、民社党の大内啓伍委員長が立った。

首相は避難民輸送のため派遣を決定した自衛隊機に防衛医官を同乗させる問題について「輸送機の自衛隊員の保健衛生のため、防衛庁で検討中と承知している」と述べ、前向きの意向であることを明らかにした。防衛庁ではこれまで、輸送中の機内での避難民に対する医療活動を目的とする考えだったが、首相の発言は地上整備員なども活動の対象範囲とする含みがあるとみられる。《共同通信》

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【東京都知事選】自民都連、鈴木氏擁立を申請

自民党東京都連の粕谷茂会長らは29日午前、党本部に小沢幹事長を訪ね、都連が4月の東京都知事選に現職の鈴木俊一知事の擁立を決定したことを報告し、鈴木氏を自民党候補者として推薦するよう申請した。

粕谷氏は「都連は一致結束して鈴木氏を推している。自民党一党だけでも鈴木氏でやりたい。小沢幹事長の決断だ」と強く迫った。

これに対し、小沢氏は「都連は自民、公明、民社の三党で(選挙を戦うと)言っていた。公明党は(鈴木氏に反対し)抜けたが、勝てるのか。鈴木さんを(出馬させて)負けさせてはいけない」と重ねて鈴木氏擁立に懸念を示したが、結論は出さず「(選対委など)組織に諮る」と、機関としての手続きを始める方針を示したにとどまった。

小沢氏はこの後、党本部選対委幹事会に続き、同日昼、選対委を開き、鈴木氏擁立の可否について意見集約に入る。

小沢氏ら党執行部側は①鈴木氏が80歳と高齢②現在の都政与党の公明党が鈴木氏に反対している③民社党も都本部は鈴木氏だが、党本部は白紙の状—などの理由で「鈴木氏では自公民体制がとれず勝てない」との判断から強い難色を示しており、選対委で鈴木氏の推薦申請を却下する公算もある。

却下されれば同日中にも自民、公明、民社三党の幹事長・書記長会談を開き、新たな候補者選定を始めることになろう。《共同通信》

【東京都知事選】自公民、鈴木氏擁立を事実上断念

4月の統一地方選の焦点となる東京都知事選の候補者をめぐって自民党の小沢幹事長、公明党の市川書記長、民社党の米沢書記長が29日夕、国会内で会談した。

小沢氏は都知事選に当たっては自公民三党体制堅持の原則を示した上、同日の自民党都連の推薦申請を踏まえ、三党で現職の鈴木俊知事を擁立するよう要請した。市川、米沢両氏も自公民体制を確認したが、鈴木氏擁立は困難であることを表明。最終結論は出さなかったが、三党での鈴木氏擁立は事実上、断念した。

三氏は2月1日、再会談することになり、鈴木氏に代わる新たな候補者選定に入る。出馬の意欲を示している鈴木氏と鈴木氏擁立に固執している自民党都連がどのような対応を示すか注目される。

小沢氏は会談で、都連の申請、自民党選対委、同幹事会の結論を基に鈴木氏の擁立を打診した。これに対し、市川氏は①三党枠の堅持②いろいろの事情から鈴木氏は困難③候補者は21世紀を展望し、都政を担うにふさわしい人物―との公明党都本部の方針を党本部も了解していることを説明し「鈴木氏擁立要請は受けられない」と明言した。

米沢氏は「三党一致なら鈴木氏でいい」としながら「自公民が崩れ、自民、民社の二党では当選可能性からいかがか、極めて難しい」と述べ三党体制が組めない以上、鈴木氏は難しいことを表明し連合も含め幅広い協力が得られる候補者を選びたい意向を明らかにした。《共同通信》

【政界メモ】腕まくりして若さPR

○…海部首相は29日、参院本会議を前に記者団に「風邪はもう良くなりましたよ」と上機嫌。四日前の通常国会再開の際はのどを痛めてほとんど声も出ない状態で、吸入を受けながら施政方針演説を乗り切ったが、この日は「のどの調子も戻りました」と、自慢の弁舌にも自信満々の様子。「肌着も、ほら、こういうふうに「長いのは着ていません。冬場も半そでだし、ももひきなんてはきませんよ」と、記者団に腕まくりして若さをアピール。

国会審議は湾岸戦争財政支援、自衛隊輸送機派遣など難問山積。果たして弁舌と若さで乗り切ることができるか。

○…社会党は都内で統一地方選の女性候補者約150人を対象にした選挙学校「おばたりあんの逆襲」を開校した。あいさつに立った土井委員長は、政府が政令で自衛隊輸送機の海外派遣を決めたことに触れ「憲法より一片の政令が強いことになれば人権も自由も政府の手一つに握られてしまう」と憲法の危機を訴えた。

重ねて「戦後女性に保障された選挙権の力を今こそ発揮すべきとき。今度の統一地方選はこのことを心に畳み込んで戦いましょう」と気炎をはいた。一過性のマドンナ旋風でなく「地に足の着いた」おばたりあんパワーで夢よもう一度?《共同通信》

【湾岸戦争】イラク軍、サウジ侵攻

米国防総省の発表によると、イラク軍が29日夜、クウェート国境に近いサウジアラビアのカフジなど三カ所に越境して侵攻し、米軍を中心とする多国籍軍と激しい戦闘を展開した。この戦闘で、米海兵隊員8人から10人が戦死、イラク側にも大きな損害が出たとされ、17日の湾岸戦争開戦以来最大の地上での交戦となった。

国防総省当局者などによると、現地時間29日午後9時半ごろ、戦車約50両を先頭に、イラク軍計三個大隊、約1500人がカフジとその西方の二カ所の計三カ所から侵攻し、多国籍軍と戦闘となった。戦闘は約5時間半続き、米国防総省当局者によると、侵攻イラク軍は「大きな物的人的損害」を受けて撤退した。

イラク軍は激しい砲撃、ロケット弾攻撃などをかけ、カフジでは市街戦も起きた。多国籍軍側は空から死傷者将兵の救出に当たった。多国籍軍側は軽微な損害を受けた、と発表している。

一部のイラク軍がサウジ領内に残り、国境付近で30日午後も多国籍軍と交戦を続けているとの情報もある。今回の侵攻作戦は、湾岸戦争の勝利を強調したブッシュ米大統領の一般教書演説、イラク軍のクウェート撤退を求める米ソ外相の共同声明に時期を合わせており、イラクは徹底抗戦の構えを内外に示したともみられる。

国防総省筋によると、一連の交戦でイラク軍の戦車少なくとも20両が破壊された。イラク兵約25人が捕虜となったという。

米国防総省は今度の交戦について、事実関係を簡単に説明する声明を出し、イラク軍の規模、双方の損害など詳細は調査中であると述べた。フィッツウォータ―米大統領報道官は、初の本格的な地上での交戦について「国防総省が事態を見守っている」とだけ答えた。《共同通信》

【米・ブッシュ大統領】一般教書演説

ブッシュ米大統領は29日午後9時(日本時間30午前11時)から、上下両院合同本会議で一般教書演説を行い、湾岸戦争について「正義が目的であり、法の支配に基づきわれわれは必ず勝利する」と不退転の決意を表明した。また「イラク破壊は目指しておらず、ペルシャ湾岸地域から対立と抑圧がなくなることを求める」と強調、戦争終結後は湾岸での安全保障確立と世界新秩序構築に全力を挙げる方針を明確にした。

大統領は他の外交政策では、ソ連との協調関係の重要性を強調するとともに、関税貿易一般協定(ガット)新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)成功の重要性を改めて呼び掛けた。一般教書は向こう一年間の施政方針を示すものだが、戦争の中で迎えた今回は演説の半分を湾岸戦争に関する主張に充てた。

大統領は「戦いは順調に進んでおり、イラクの戦闘能力は破壊されつつある」との戦況評価を示し、「砂漢のあらし」作戦の目標はイラクのクウェートからの全面撤退など当初通り変更がないことを確認した。《共同通信》

【井上靖さん】死去

金沢の旧制四高に学び、石川を「第二の故郷」とし、「天平の甍」「敦煌」「孔子」などで知られる国民的作家で文化勲章受章者の井上靖氏が29日午後10時15分、急性肺炎のため東京都中央区の国立がんセンターで死去した。83歳だった。北海道出身。

井上氏は昨年9月、故郷の北海道旭川市に文学顕彰碑の落成式に出席、その後、食道がんのため胸部に水がたまり、がんセンターに通院。しかし病状が悪化、22日夜、自宅から救急車で同センターに運ばれ入院していた。最後まで自宅療養を希望していたという。

明治40年、旭川市に生まれ、静岡県・湯ケ島で育った。沼津中学時代に文学に興味を持ち、昭和2年旧制四高に入学。その後、九大を経て京大哲学科に転じた。京大在学中に「サンデー毎日」懸賞小説に入選。卒業後の昭和11年毎日新聞に入社。学芸部記者として宗教や美術を担当、終戦時は社会部勤務で玉音放送の記事を書いた。24年「猟銃」「闘牛」を相次いで発表。25年「闘牛」で芥川賞を受け、翌年毎日新聞を退社した。

井上さんが芥川賞を受けたのは42歳の時。作家としては遅い出発だった。しかし、それからの四十年余、井上さんは「氷壁」などの現代小説、「風涛」「おろしや国酔夢譚」などの歴史小説、「天平の甍」「青き狼」などの西域小説まで、豊かな物語性と叙情性とでスケールの大きな作品世界をつくり上げた。

受賞は数多く「氷壁」などで芸術院賞、「敦煌」「楼蘭」で毎日芸術大賞、「風涛」で読売文学賞を受けたほか、「おろしや国酔夢譚」「本覚坊遺文」で日本文学大賞を、「淀どの日記」「孔子」で野間文芸賞をそれぞれ二度受賞。39年日本芸術院会員、51年文化勲章受章。55年には菊池寛賞も受けた。

また44年から47年まで、日本文芸家協会理事長。56年から60年まで日本ペンクラブ会長。この間、59年に東京国際ペン大会を成功させ、川端康成に次いで日本人で二人目の国際ペン副会長に選ばれた。日中文化交流協会会長、日仏賢人会議委員、世界平和アッピール七人委員会メンバーとして国際的にも活躍。多くの作品が海外で翻訳出版されており、世界的に著名な作家の一人」だった。

61年、食道がんの手術を受け、その後入退院を繰り返しながらも長編「孔子」を完成させたほか、平成2年10月、詩集「星蘭干」を刊行。さらに日系米国移民を描いた未完の長編「わだつみ」の連載再開に意欲をみせるなど創作意欲を燃やし続けた。《北國新聞》



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