平成721日目

1990/12/29

この日のできごと(何の日)

【第2次海部改造内閣】発足

第2次海部改造内閣の顔ぶれが29日夕、決まり、同日夜の皇居での認証式を経て正式に発足した。年明けから始まる平成3年度予算の国会審議、コメ市場開放問題、対ソ外交、湾岸危機への対応など内外にわたる重要で緊急の課題への取り組みを重視、大蔵、外務、官房の主要閣僚を留任させた。

12月29日のできごと(何の日)
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さらに農相には初入閣ながら農政通の近藤元次氏(宮澤派)、通産相に中尾栄一元経企庁長官(渡辺派)をそれぞれ起用した。このほか女性閣僚として、科技庁長官に新人の山東昭子氏(参院竹下派)が起用された。

初入閣は12人(2月の第2次内閣では10人)。また前内閣同様の基準で、リクルート、ロッキード関係議員の入閣は排除された。首相は改造に先立ち、小沢幹事長ら党三役の留任を決めており、内閣、党執行部とも前内閣の中枢を継続し「無難さ」に比重を置いた布陣で、厳しい政治情勢に対処していくことになる。《共同通信》

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【第2次海部改造内閣】派閥力学を重視

滞留人事の「ガス(不満)抜き」を求める派閥事務総長クラスの「猟官運動」が火を付けた第二次海部内閣の改造劇は、首相の“沈黙戦術”で1カ月余り迷走した揚げ句、ようやく決着した。しかし、その出発点から結末までの経緯は、大派閥との妥協を迫られた海部首相の政権基盤のぜい弱さを改めて示しただけでなく、求心力を失う自民党内の状況を浮き彫りにし、来年10月の海部首相の総裁任期切れに向け波乱を早くも予感させるものとなった。

首相は「閣僚は一年で定期異動」「ローテーションで回せ」という前代未聞の派閥圧力に抗しきれず、専ら主導権を示し得る改造のタイミング探しだけ腐心したと言える。

確かに、稲村元環境庁長官の巨額の脱税事件をチャンスと見て年末改造を逆転決断、①ロッキード、リクルート事件関係者の入閣排除②党三役、大蔵、外務の主要閣僚留任ーという基本構想だけは守り切り、新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)や日ソ外交に備えた「人心一新、政策重視」の姿勢は辛うじて見せた。しかし、新内閣は全体として従来以上に派閥力学を重視したバランスの上に立ち、とりわけ各派の入閣、再入閣待望組リストを丸のみにした小粒内閣の印象は否めない。

宮澤派の意向に反して西岡総務会長の留任に固執したり、西岡氏の宮澤派除名騒ぎを起こした経緯も首相のリーダーシップというより、首相が政権の存否を竹下派や小沢幹事長との連携に懸けたことの“あかし”と言えそうだ。このことは同時に、ポスト海部をめぐる党内各派の関係を微妙に変化させ、政局への胎動を加速させることにつながろう。

首相は今回の改造でもロッキード事件関係の佐藤孝行氏、リクルート事件関係の森喜朗、加藤紘一両氏ら実力政治家の入閣を拒み、「清潔さ」のイメージを保ったが、もともと自民党が海部首相に与えた“任務”は政治改革にけじめをつけ「リ・ロ整然」と入劇させることにより、竹下、渡辺、宮沢氏らリクルートに関与したとされる領袖クラスの全面復権へ道を開くことにあった。このため、現時点でなおリ・ロ議員の“復権”を行わなかったことはその期待に背いたもので、来年の通常国会終了後に改めて改造断行を求める圧力を高めることは避けられそうにない。

さらに、安倍元幹事長の建康不安も含め大正生まれの領神が活動を制限されている間に、海部小沢ラインに代表される昭和世代は次第に実力を蓄えつつあり、世代交代論を軸とする党内権力構造の変化も絡んで、政局を複雑化させそうだ。

改造の経緯で見られた竹下派内の竹下元首相と金丸元副総理の確執、安倍派幹部間の微妙なあつれき、宮澤元蔵相の権威低下などは、いずれもその「予兆」と受け止めることができる。

「政治ゲームとしても最低レベル」と酷評される今回の改造で、国民の最大の疑問は「一体、なぜ、この時期に」という一言に要約される。外交・国際経済面では湾岸危機、日ソ、日米関係、コメ市場開放、内政分野では、経済成長の鈍化、土地政策、選挙制度、消費税問題と改造内閣が直ちに直面する難問は多い。しかし、改造の結果からは、新たな政策の展開を国民に期待させるインパクトは感じられない。それどころか「永田町の論理」を限界まで追求しただけで、国民の率直な疑問に答えていないとすら言える。

首相が手あかにまみれた「人心一新」という説明を超えて、改造内閣の課題とその解決方針をどう明確に国民に指し示すか。来年10月を見越した再選戦略を描いているとすれば、まずそのことが最初に問われそうだ。《共同通信》

【第2次海部改造内閣】株自粛などを申し合わせ

第2次海部改造内閣の全閣僚は、29日午後9時20分から開いた初閣議とか供養懇談会で、閣僚の派閥離脱や株取引の自粛などを申し合わせた。今回は、稲村元環境庁長官が仕手株売買で東京地検特捜部の摘発を受け、脱税で起訴された直後だけに、海部首相は初閣議で「政治・行政に高い論理性を求める」「閣僚は、清廉潔白、公平無私、職務精励の基本姿勢を念頭に自らを律してもらいたい」と訴えた。

初閣議では①閣僚就任時と辞任時の資産公開②保有株式の信託化③企業などからの法外な講演料の受領や未公開株の譲渡などの自粛ーなども申し合わせた。《共同通信》

【海部俊樹首相】内外課題に全力

政府は29日夜、内閣改造後の初閣議で、次のような首相談話を閣議決定した。

今日なお、内外にわたり迅速な対応が求められている課題が山積している。緊迫の続く湾岸危機への対応をはじめ、新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)への取り組み、対ソ関係改善などわが国外交上重要な課題が控えている。国内的には土地問題の解決、政治改革の実施をはじめ、多くの懸案を抱えている。私は、ここに人心の一新を図り、これらの諸問題に全力を挙げて取り組んでいくことにした。国民の皆さんの理解と協力を切にお願いする。《共同通信》



12月29日 その日のできごと(何の日)