平成690日目

平成2年11月28日(水)

1990/11/28

【英国】新首相にジョン・メージャー氏

サッチャー英首相の後継新首相にジョン・メージャー蔵相(47)が決まった。英政治史上、今世紀では最も若い新首相となるメージャー氏は28日午前(日本時間同日夜)正式に就任、同日中にも外相、蔵相など主要ポストを決め、メージャー政権を発足させる運びである。

与党保守党の党首選挙第二回投票は27日、現職下院議員372人を有権者として下院内で行われた。3候補の得票はメージャー蔵相が185、ヘーゼルタイン元国防相(57)131、ハード外相(60)56票だった。

蔵相の得票は、第二回投票で当選を決める過半数(187票)にはわずか2票届かなかった。しかし、開票結果の発表直後、ヘーゼルタイン、ハード両氏は党の結束を重視するとしてともにメージャー蔵相支持を表明、これにより29日に予定されていた第三回投票を行わず、蔵相の新党首就任が確定した。

サッチャー首相、メージャ―蔵相は28日午前、国家元首であるエリザベス女王をバッキンガム宮殿に訪ね、それぞれ正式に退陣と新首相就任の手続きを取り、交代する。

蔵相は1979年下院議員に初当選して以来、サッチャー政権下で急速に頭角を現し、86年から社会保障担当国務相、大蔵担当閣内相、外相を歴任、昨年10月から現職をつとめている。《共同通信》


11年半にわたった“サッチャー革命”は英国の伝統的な階級社会に変ぼうをもたらした。歴代の宰相を生んできたオックスフォード、ケンブリッジ両名門大学出身者の二候補を退けて失業したこともある47歳のメージャー氏の新首相就任は、その延長線上の出来事といってよい。党首選挙中はエリート階級出身の二候補に抗して「階級なき社会」を説いた。

英国の首相としては今世紀最年少。銀髪、眼鏡の奥の柔和なまなざし、女性に好まれそうな端正で若々しい顔立ち。

1943年3月29日、ロンドン南部の下町で生まれた。当時、66歳で盲目に近かった元サーカス芸人の父親が営む「庭の置物」製造業は傾きかけていた。

大学進学予定者を対象とするグラマースクール(中学校)には何とか入り、16歳の卒業と同時に電力会社に就職。バスの車掌になろうと試験を受けてみたが「算術の成績が足らず」(本人の弁)失敗。失業して19歳の8カ月間は午前中は職業安定所、午後は映画館で過ごした。

その後銀行に事務職員として入り、ビアフラ戦争期のナイジェリアに赴任して、交通事故で足に重傷を負った。

勤務していた銀行の会長で、ヒース内閣で蔵相を務めたバーバー卿の秘書になったことが転機となり、卿の引きで政界入り。下院選挙で二度苦杯をなめたが、79年の初当選以来、昨年の蔵相就任まで、保守党異例のスピード出世を果たした。

80年代初めにパーティ一の席でサッチャー首相を相手に一歩も引かずに経済論争をしたことが、首相の厚い信任を得たきっかけとされる。

69年に結婚したノーマ夫人との間に、公立学校に通う18歳の娘と15歳の息子がいる。




【海部俊樹首相】政治改革要綱案「早期に党議決定を」

海部首相(自民党総裁)は28日昼、首相官邸に小沢幹事長、西岡総務会長ら党四役を招き、自民党政治改革本部が27日に取りまとめた政治改革基本要綱案を審議してできるだけ早急に党議決定するよう指示した。会談には、羽田自民党選挙制度調査会長も同席し、27日の総会で若手らから出された反対意見を要約した文書を首相らに渡し、説明した。

首相は要綱案が党議決定されれば、選挙制度審議会の答申と併せて内閣として法案取りまとめに着手、統一地方選挙が実施される来年4月ごろをめどに通常国会への関連法案提出を目指し、リクルート事件を受けた公約である政治改革の実現を図りたい考えだ。

しかし27日の要綱案取りまとめの総会でも出席者の約4分の1が強硬に反対するなど、小選挙区比例代表並立制の導入を柱とする要綱案には反発も根強く、法案取りまとめまでには相当な難航が予想される。また野党も要綱案への反対姿勢を強めている。

政治改革に「命運をかける」と明言している首相が、改革実現にどれだけの手腕を発揮できるか、今後の首相の政権戦略にも大きな影響を及ぼしそうだ。《共同通信》

【山梨リニア実験線】着手式

リニアモーターカー山梨実験線の建設開始を宣言する「着手式」が、28日正午から山梨県都留市の実験線用変電所建設予定地で行われた。

式には実験線の建設・運営主体である鉄道総合技術研究所(JR総研)と鉄道建設公団、JR東海の事業3者の代表のほか、大野運輸相、金丸元副総理、望月幸明山梨県知事ら関係者約100人が出席。三宅重光JR東海会長のあいさつに続き岡田宏鉄建公団総裁が着手宣言し、大野運輸相らがくわを入れた。

この後、同市内のホテルで、将来の中央リニア新幹線の沿線自治体関係者など約1100人が出席して着手記念式が開かれる。事業3者と山梨県は今後、沿線の用地買収を開始すると同時に、ルートの詳細な測量や設計などに着手する。《共同通信》

【宮崎勤被告】精神鑑定が決まる

幼女連続誘拐殺人事件で殺人罪などに問われた元印刷業手伝い宮崎勤被告(28)の公判が28日、東京地裁(中山善房裁判長)で開かれ、弁護側が「宮崎被告は犯行時に心神喪失か心神耗弱の状態にあり、現在も罪責感が欠如している」として精神鑑定を申請し、採用された。

既に弁護、検察双方が精神科医を一人ずつ推薦しているが、東京地裁は早ければ12月中にも鑑定人を決定する見通し。弁護側は犯行の特異性、異常性を解明するためには社会心理学者らによる社会背景の分析、検討も必要としており、多方面からの異例の鑑定作業が行われるとみられる。

公判ではまず、10月31日に行われた両親に対する出張尋問調書のほか、宮崎被告の小学校と高校の担任、友人ら9人の調書が証拠採用され、検察側立証をほぼ終了した。

これを受けて精神鑑定の請求に立った弁護側は「私たちとは無関係にみえるこの事件が、実は情報とモノのはんらん、学校教育の管理化と受験戦争の進行、親子の関係性の混とんなど社会が抱える事象とかかわりがある」と指摘し「単なる被告の刑事責任の確定という目的を超えて、二度と悲惨な事件を起こさない方途を示す必要がある」として社会、教育心理学者らを含む鑑定を求めた。

続いて鑑定資料として宮崎被告本人の絵を提出、成人式までの写真や、「アイドルスターCM集」「これが私のベーストテン」「マンモスコング月光仮面」など宮崎被告が作ったビデオコレクションの資料類も証拠採用された。

今後の裁判は、精神鑑定をめぐる法廷外の手続きが主となり、公判は一時中断する。鑑定人にはマスコミで事件を一論評した精神科医以外から選ばれ、問診を中心に心理テストや脳波検査などを行う予定。

十分時間をかけてほしい」との弁護側の希望もあり、鑑定は半年以上かかる見通しだが、拘置所内の鑑定か病院での鑑定留置になるかは未定。《共同通信》

【坂本三十次官房長官】早急に対ソ食料援助を

坂本官房長官は28日午前の記者会見で、経済困難から食料不足が深刻になっているソ連に対する緊急支援について「人道的立場から早急に検討する価値がある。早めに結論を出したい」と述べ、支援実施に前向きに対処する考えを示した。

坂本長官はこの中で「(ソ連から)公式な要請があったわけではない」としながらも「ドイツがやったようだし、他の国にも(援助を行う)動きがある。これから厳しい冬を迎えることもあり、自民党と相談の上で考えていくべき課題だ」と述べた。

さらに、坂本長官は「ソ連の経済はわれわれの想像以上に困難を抱えているといわれている」と強調、対ソ支援を北方領土問題の解決と絡めてきた政府の基本方針はあるが、あくまで「人道的配慮」から実施すべきだとの認識を示した。

ソ連では、モスクワやレニングラードなどの都市でジャガ芋の在庫が昨年の3分の1から4分の1に落ち込むなど食料不足が極めて深刻化しているといわれ、先に在京ソ連外交筋も「日本の政府機関、自治体、民間団体が援助してくれるならありがたい」と、支援を呼び掛けている。《共同通信》

【政府】ソ連に医薬品

外務省は28日、厳冬を控え深刻な食料、医薬品不足に陥っているソ連に対して人道的観点から医薬品の緊急援助を実施する方針を決めた。早急に具体的援助方法を詰め、中山外相が来年1月の訪ソの際、ソ連側に正式に伝える。

ソ連は、既に日本政府に対し緊急援助を非公式に要請してきているが、外務省は来年4月のゴルバチョフ大統領来日の環境整備のためにも、要請にこたえた方が得策と判断、医薬品を中心に数億円規模の援助に踏み切ることになった。

援助のうち食料援助については、①ソ連の小麦は豊作で、ソ連側が言うほど食料は不足していない②本格的な食料援助には多額の資金が必要であり、ソ連は政府開発援助(0DA)対象国でもなく、技術的に難しいーと慎重な姿勢だ。

ただ、自民党の西岡総務会長らから食料援助実施を求める声も上がっており、外務省は米国、欧州共同体(EC)の対応をみながら可能な方法があるかどうかを検討している。

政府は、これまで9月の日ソ外相定期協議での合意に基づき、チェルノブイリ原発事故の被災者救済のための26億円の緊急医療援助を本年度予算に盛り込むことを決めている。この緊急援助措置は本年度予算の枠内で処理される見通しで、援助の位置付けについて外務省は「あくまでも人道的配慮から行うもので、政経不可分の原則とは関係ない」(外務省筋)と説明している。

【政界メモ】腰砕けにならないよう…

◯…海部首相は28日午前、青森県産のコメの新品種の売り込みのため、ミス「つがるおとめ」3人の表敬を受けた。久しぶりに美女に取り囲まれた首相は「毎朝、コメを食べてますよ」とご満悦の様子。

「1億2000万人の国民が、一日50グラムのコメを食べるとして計算すると、一年で200万トンになるんだ」と、データを織り交ぜながらお得意の解説。「消費量が上がっていくといいんだがなあ。食べてもらうように努力しなくちゃ。これを食べてまた頑張りますよ」と、難航が予想される新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)が頭をよぎるのか、コメの消費拡大を懸命にPR。

◯…この日、自民党の小沢幹事長は、政治改革の協議のため、首相官邸に。前日までの二日間、風邪を理由に自宅にこもっていたため、海部首相の顔を見るなり「夜遊びが過ぎて」と照れ隠し。そこに来た羽田同党選挙制度調査会長に「もう(選挙制度の)答申は終わったんじゃないの」と、トンチンカンな質問をするなど二日間の不在を露呈。

この後の記者会見では、容易でない党議決定のめどを聞かれ「腰も痛いし、腰砕けになっちゃいかんから。じっくり治してね」と、今度は体の不調を理由に記者団の質問をかわしていた。《共同通信》




11月28日のできごと