平成586日目

平成2年8月16日(木)

1990/08/16

【自民党・渡辺美智雄氏】海部首相と意見交換

自民党の渡辺元政調会長は16日夕、首相官邸に海部首相を訪ね、17日からの東南アジア歴訪のあいさつをするとともに、対イラク制裁について意見交換した。

この中で渡辺氏は「世界各国は命懸けでやってる。日本だけが“石油ただ乗り”というわけにはいかないのではないか。日本としてもイラク軍撤退のための目に見える協力をすべきだ」と指摘。日本政府として海上自衛隊の掃海艇派遣の検討も含め紛争収拾のため、積極的に貢献するよう要請した。

これに対し首相は、中山外相の17日からの中東歴訪の結果を踏まえて日本の具体的貢献策を詰める、との考えを示すにとどまった。

渡辺氏は首相との会談のあと記者団と懇談し、掃海艇派遣について「少なくとも攻撃的ではない。極めて防御的なものだ」とするとともに「日本が経済的制裁以外やらないで国際世論が認めるかどうかだ。ソ連まで米国と一緒になってやろうとしている」と強調、掃海艇派遣は問題ないとの見解を示した。

掃海艇派遣は、中曽根内閣当時の1987年、イランがペルシャ湾内で機雷を敷設した際にも検討されたが、世論の反発を考慮した後藤田官房長官(当時)の反対で実現しなかった。

記者懇談で渡辺氏は「万一の場合の輸送の問題とか、人命救助とかいっぱいある」と述べ、掃海艇のほか緊急救援機や医療チームの派遣などを具体策として指摘した。

これに先立つ同日昼の記者懇談で渡辺氏は、貢献策の一つとして在日米軍の駐留経費の日本側負担(思いやり予算)増を提唱したが、海部首相との会談では「日本が何もしないうちに火事が消えては何だということになる」として、さらに歩踏み込んだ即効性のある貢献策を求めた。《共同通信》




【イラク政府】日本人の出国を認めず

イラク政府がイラクにいる日本人の出国を当分の間、認めないと日本政府に通告したことが明らかになった。外務省によると、片倉駐イラク大使が16日、イラク外務省のアジャム領事局長を訪れ確認した。アジャム局長は「出国禁止措置は残念ながら事実であり、当面、日本人も他の西欧諸国と同様、出国できない」と述べた。片倉大使は「このような措置は国際法違反で容認出来ない」と抗議した。《共同通信》

【熊本県】オウム真理教を告発

新興宗教団体オウム真理教が熊本県阿蘇郡波野村で進めているキャンプ場建設について、熊本県は16日、キャンプ場建設は森林法(無許可開発)国土利用計画法(無届け取引)違反でオウム真理教と土地の元所有者を熊本県警に告発した。《共同通信》

【政界メモ】本物の田んぼを耕す

◯…小沢幹事長ら大半の自民党幹部が別荘などへ出かけた中で谷川和穂筆頭副幹事長は16日、「海部首相の中東訪問が延期になった後始末」に忙殺され「東京を離れられなくて」とぼやき節。谷川氏は首相同行国会議属団の団長を務めるはずだった。「中止でなくあくまで延期である以上、今でも団長」と言い、「延びた分だけ頭に入れるべき材料が増えてしまって、外務省やアラプ問題専門家に問い合わせたり切り抜きをつくり直したり大汗かいてます」。

それを「後始末」と表現したわけだが、その一方で「十月なら本当に行けるのかという不安もる」とポツリ。

◯…北川環境庁長官はこの日午後、地元・大阪入りしたが「休むというより田んぽをせっせと耕します」。粟田のことではなく「本物の土に親しむんや。ほんの小さな田だが、稲を植えてるので秋の収獲目指して草取りしたり薬をまいたり。田んぼのそばは秋に大根やネギの種をまけるよう耕しておく」と腕をさする。

「取り入れたら海部首相にも食べてもらう。暑い夏ほど稲はよく成長することを味わってほしいから」と、政権担当二年目に入り試練が待ち構えている首相への思いやりと同時に「環境庁長官として自然と親しむところをアピールできるし」。やはり票田への効果もちゃっかり計算済み。《共同通信》

【米・ブッシュ大統領】ヨルダン・フセイン国王と会談

フセイン・イラク大統領の親書を携え訪米中のヨルダンのフセイン国王は16日、ブッシュ米大統領と会談した。親書にはフセイン大統領がイラク軍のクウェートからの撤退のための六条件を提示していると伝えられるが、米側はイラク軍の即時、無条件撤退と対イラク経済制裁を完全実施する構えを崩しておらず、事態打開は困難とみられる。

カイロからの報道によると、フセイン・イラク大統領は親書の中で①イラク軍クウェート撤退と米軍など外国軍のペルシャ湾地域からの同時撤退②クウェート北部と2島の長期租借③クウェートでの自由選挙実施–などを提案しているとみられる。

15日ワシントンからケネパンクポートに戻ったブッシュ大統領も「興味深い話し合いになるだろう」と述べ、会談を重視する姿勢を示した。

大統領は14日の記者会見で、アカバ港からイラクに物資を供給している疑いを持たれているヨルダンに対し、経済的支援を見返りに、イラク封じ込めに加わるように求めるなどあくまでクウェート侵攻イラク軍の無条件、即時、全面撤退など米政府の既定方針を貫く強い意向を示しており、事態の外交的打開を狙うフセイン国王とは思惑の違いがある。

しかし、こうした双方の駆け引きを背景にする米、ヨルダン、サウジアラビア三国の一連の会談が今後の情勢展開の転換点となる可能性もある。

フィッツウォーター米大統領報道官は15日「米政府は親書の内容については何も知らない」とし、外交手段による事態打開には「特別の期待はしていない」と述べた。米政府高官らもフセイン国王との会談で外交的解決策が打ち出される可能性は期待薄と指摘していると伝えられている。

ブッシュ大統領自身が15日の国防総省での演説で①イラク軍の無条件、即時、完全撤退②クウェートの正当な政権の復権③ペルシャ湾岸地域の安全保障と安定④米市民の生命安全確保―の四原則を必ず実現すると公言したばかりであり、首脳会談で妥協に応じることは難しい状況だ。

大統領報道官は、会談で米側はヨルダン側の持つ懸念に耳は領けるが、米側の主張も率直にぶつけるとの方針を示した。《共同通信》

イラクのクウェート侵攻・迎合で緊張が高まる中東情勢の事態打開に向けたブッシュ米大統領とフセイン・ヨルダン国王との会談が16日、米メーン州ケネバンクポートの大統領別荘で2時間余にわたって行われた。

大統領によると、国王は対イラク経済制裁の国連決議を「尊重し順守する」と表明、ヨルダンのアカバ港を経由するイラク向けの物資を差し止める意向を表明した。しかし禁輸の対象に食料を含めることには見解が対立した。

大統領は会見後の記者会見で「見解の差は縮まった」と評価したものの、完全に満足したわけではないことも明らかにした。また国王はイラクのフセイン大統領の親書を携行しておらず、両首脳とも国王の調停者としての役割を否定した。

このため会談結果が直ちに外交的解決にはつながらず、事態はさらに長期化の様相を帯びてきた。《共同通信》




8月16日のできごと