平成615日目
1990/09/14
この日のできごと(何の日)
【日本政府】多国籍軍へ10億ドル追加
政府は14日の閣議で、中東貢献策の第二弾として、①決定済みの多国籍軍支援経費10億ドルに加え、新たに10億ドルを上積みする②エジプト、トルコ、ヨルダンの紛争周辺3カ国を中心に総額20億ドルの経済協力を行うことを正式決定した。海部首相はこれに先立ち同朝、ブッシュ大統領と電話で会談し、大統領はこれを高く評価した。坂本官房長官が記者会見で発表した。
これで日本の中東貢献策をめぐる拠出額は総額40億ドルに上り、米国の対日要求に対する事実上の“満額回答”となった。政府は、さらに物資、輸送協力など貢献策の細目について肉付けを急いだ上で、週明けに発表する運びだ。
多国籍軍支援経費の10億ドル上積みは、先に来日したブレイディ米財務長官が強く要求。米下院が在日米軍駐留意費の全額負担を求める法案を可決するなど、日本に対する厳しい貢献要求を受けたものだが、政府は「税収の見込みも不確定で財政事情は極めて厳しい」(大蔵省筋)ことを考慮し「新たに10億ドルを限度として追加的に協力する用意がある」(中山外相)と財政当局への配慮もにじませた形となっている。
周辺国経済援助の20億ドルについては、エジプト、トルコ、ヨルダンの周辺3カ国に対し金利1%、返済期間30年という超低利の商品借款6億ドルを今年中に緊急供与。残り14億ドルは、対イラク経済制裁で経済的打撃を受けている東欧、アジア諸国も含め、国際通貨基金(IMF)や米欧各国と協議の上、逐次実施する方針だ。
首相は閣議で、今回の決定について「ただカネだけで済まそうということではない。日米関係を重視し、世界の無法者(フセイン・イラク大統領)の侵略を阻止する観点から実施した」と国際協調のための自主的な決定であることを強調した。橋本蔵相は「税収増が見込まれないのでよろしく」と各閣僚の協力を求めた。
今回の追加措置に関し、「政府は本年度予備費(約3500億円)だけでなく、補正予算などで対処する方針だ。海部首相は、これらの貢献策の肉付けを急ぎ、週明けには正式発表。将来の国際的な平和維持活動に協力する国連平和協力法(仮称)の骨格を早急に固めた上で、今月下旬のニューヨークでの日米首脳会談とそれに続く中東5カ国歴訪に臨む意向だ。《共同通信》
◇
海部首相は14日午前9時20分から15分間、米ホワイトハウスのブッシュ大統領に電話、中東貢献策の第二弾について内容を伝えるとともに米側の理解を求めた。大統領は「大変に喜ばしい決定だ。日本が非常に強い決意で努力を続けていることを評価する」と述べ、歓迎した。
さらに大統領は「日本が湾岸危機に役割を果たすため最善の努力をしていることを米議会、国民に伝えたい」と表明、15日にも米議会関係者に日本の貢献策の評価を伝える考えを示した。大統領は「米国内には、米国の若者が危険な地域に送られていることに対し、各国がもっと貢献すべきだとの声があるのは事実だ」と、米国の雰囲気を説明した。《共同通信》
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【神戸高塚高校校門圧死事件】元教諭を起訴
兵庫県立神戸高塚高校一年、A子さん=当時(15)=が校門に挟まれ死亡した事故で、神戸地検は14日午前、門扉を閉めたB元教諭(39)を「生徒の安全を図る注意義務を怠った」として業務上過失致死罪で在宅のまま起訴した。学校内で起きた事故で教師が刑事責任を問われるのは極めてまれで、校門指導の是非も含め教育現場に大きな影響を与えそうだ。
起訴状によると、B被告は遅刻指導の当番だった7月6日午前8時半、校内に走り込もうとする生徒の列が途切れたと思い込み、重さ約230キロの鉄製引き戸を時速5-6キロの速さで押し切り、校内に入ろうとしたA子さんの頭を挟んで頭がい底粉砕骨折などで死亡させた。
同地検は、事故当時居合わせた生徒約20人からの事情聴取や、B被告を立ち会わせた現場検証などから、生徒が次々に駆け込んで来るのに下を向いて両手で門扉を勢いよく閉めたと断定。他の教師は門を手前に引いて閉めるなどの配慮をしていたのに比べ、B被告の閉め方は突出して危険だったとして起訴に踏み切った。
B被告は「前を十分見ていなかった」と過失を認めているが「門を閉める前に“閉めるぞ”と声を掛けた」などと一部責任を否定する供述もしているという。
同地検は、門扉を閉める行為自体が危険と認定した上で、同校が昭和62年から午前8時30分の予鈴と同時に門を閉めることを学校の方針とし、交代で教師3-5人が毎朝校門指導していたことを確認。B被告も62年4月に着任以来、計64回も校門指導をしていることから、B被告の行為は危険を伴う学校業務の一環だったとして、業過致死罪を適用した。
校門指導をめぐる学校側の監督責任については「門の閉め方まで具体的に指示していたわけではない」として、刑法上は問えないとしている。《共同通信》
【イラク軍】仏大使公邸に乱入
クウェートのフランス大使公邸に14日、イラク軍兵士が乱入し、武官1人と民間人3人を連行した。武官はその後解放されたが、イラク軍兵士はカナダ、オランダの大使公邸にも乱入したといわれる。米国や英国の公邸には兵士は入っていないが、イラク政府の命令に反してクウェートに残留している西側外交官に対して、イラク政府が新たな圧力をかけ始めた動きとして注目される。
フランス外務省スポークスマンは14日、在クウェートのフランス大使公邸に現地時間同日午前7時、イラク軍部隊が乱入、大使館付武官1人と民間人3人を運行、その後、武官1人を解放したと述べた。
パリに伝えられた情報によると、イラク軍はこの日同午前2時半、クウェートのカナダ大使公邸にも押し入り、また前日にはオランダ大使公邸に乱入したといわれ、外国大使館の閉鎖命令に従わず、クウェートに残留している各国外交官に対し、武力による圧力をかけ始めたもようで、ペルシャ湾岸情勢に新たな緊張が加わった形だ。
スポークスマンはイラク軍乱入に関し「外交関係に関するウィーン条約の重大な侵害だ」と非難するとともに、アル・ハシミ駐仏イラク大使を外務省に呼び、厳重な抗議を申し入れ、即時解放を要求した。また駐イラク・フランス代理大使もイラク当局に同様の抗議、要求を行ったという。
3人の連行先は不明だが、3人は、イラクのクウェート侵攻直後から公邸に隠れていたという。在クウェート・フランス大使館には6人の館員が残っていたという。
一方、フランスのテレビは同日、クウェートのイラク軍が米、英両国の外交官住居にも押し入ったという情報があると伝えたが、米大統領報道官と英外務省は、イラク軍乱入の事実はないと語った。
イラクは先月、クウェート併合により在クウェートの外国大使館は外交特権を失ったと宣言するとともに、各国に大使館の閉鎖を要求、日本をはじめこの日乱入されたフランス、カナダ大使館などを包囲し、水や電力の供給を断っていた。日本は既に残留していた大使館員2人をイラクに引揚げさせている。《共同通信》
【英政府】サウジへ地上軍6000人
キング英国防相は14日、北大西洋条約機構(NATO)諸国に対する米国の地上軍派遣要請にこたえ、西ドイツ駐留の英陸軍第7機甲旅団6000人以上をサウジアラビアに派遣する決定した発表した。英国が中東へ地上軍部隊を送るのはこれが初めてである。
同旅団はチャレンジャー戦車120両を保有する二個機甲連隊と一個砲兵連隊、機甲歩兵大隊などで構成される。このほかトーネード対地攻撃機連隊も増派する。同国防相はこの決定について会見で「ベルシャ湾の多国籍軍に対する最重要追加措置である」と述べた。
また増派の目的について、同国防相はイラクの今後の侵略を成功させないためであるとし「フセイン(イラク大統領)はいずれにしても敗れるだろう」と強調した。
英政府はこれまで、トーネード、ジャガー両戦闘機を主力とした空軍の二個中隊と海軍の艦艇を湾岸地域に派遣している。今回、地上軍の派兵決定に踏み切ったのは、米国の同盟諸国に対する強い要請にこたえるためであるとしている。《共同通信》
【政界メモ】世界の世論聞いた結果
◯…多国籍軍への追加10億ドルを含む総額40億ドルの中東貢献策第二弾を決めた14日、記者団から「米国の要求額とピッタリではないか」と追及された坂本官房長官は、一瞬言葉に詰まり「自主的に判断したら、そういうことになった」と苦しい弁明。
さらに「多国籍軍にも既に決めた10億ドル以上は出さないと言明したではないか」と突っ込まれると、「各国の事情や意見、中東情勢の推移を踏まえた措置。米国の声だけでなく世界の世論を聞いた結果だ」との返答。米国の要求通りという指摘を認めるのが余程嫌なようだ。
◯…この日、社会党の土井委員長は党本部で開かれた中央委であいさつ。政府が進める中東貢献策に関し「自衛隊の海外派兵に道を開く法制の整備を急ごうとする動きが顕著だ。憲法が“名存実亡”となることに断固反対」と、憲法学者出身らしく危機意識丸出し。さらに「平和憲法は日本の命、社会党の命であります」とボルテージを上げたが、中東情勢にどう対応すればいいのか具体的提案は聞かれないまま。
先の欧州訪問で英国労働党のキノック党首から聞かされた「米英の迅速な軍事行動がなければ、イラクはサウジアラビアを手に入れただろう」の話はすっかり忘れた?《共同通信》
【シリア・アサド大統領】米・ベーカー国務長官と会談
シリアのアサド大統領と米国のベーカー国務長官は14日ダマスカスで会談、イラクのクウェート併合および外国人人質問題を中心に中東危機全般を協議した。米国の国務長官が、テロ支援国家にリストアップしているシリアを訪問したのは1988年のシュルツ長官(当時)以来で、ブッシュ政権では初めて。
アサド大統領とベーカー長官の会談は4時間半にわたって行われたが、会談後ベーカー長官はシリアのシャラ外相とともに記者会見し、両国は①イラク軍のクウェートからの無条件撤退②クウェート・ジャビル政権の原状回復を決めた国連決議を実現させるため対イラク制裁を強化する–ことで意見の一致をみたと語った。
長官はまた中東地域における「新安全保障体制構想」についてもアサド大統領と協議したことを示唆したが、米国はサウジアラビアなどに配備した米軍を恒常的に配備する意思はないことも強調した。同構想にイスラエルも含まれているかとの問いに長官は「地域のすべての国が含まれると考えなければいけない」と答え、米の中東安保構想はアラブ諸国とイスラエルが共存した形のものであることを示した。
米、シリアの両国関係についてはシリアのシャラ外相が「建設的な討議がなされた」と述べ関係改善の方向を強調した。ベーカー長官は一方で、テロ問題で、依然シリアとは意見の相違があり、解決されていない点を強調したが、この相違が両国関係改善の障害とはならないと述べた。
一昨年12月、英ロックビルのパンナム機爆破墜落事件では、ダマスカスに本拠を置くパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の関与が伝えられたが、シャラ外相は犯人に関する確たる証拠は現在のところ一切なく、シリアが中傷されるのは心外であると、述べた。《共同通信》
【米国】初の遺伝子治療
米政府の承認を受けた初の遺伝子治療が14日、米国立衛生研究所(NIH)のフレンチ・アンダーソン博士らによって、重症の複合性免疫不全症に悩む4歳の少女に実施された。
遺伝子治療は人間の欠陥遺伝子を正常の遺伝子に置き換えて病気を治そうとするもので、1980年代初めに米国などで実験的に試みられたが、安全面で問題があるとの批判が強く中断されていた。
NIHは博士らの治療に当たって、数年かけて技術、倫理両面から審議を続け、このほど正式承認した。今後、米国内だけでなく世界各国での遺伝子治療に弾みがつくと予想されるが、一方で人間の遺伝子を操作することに反対する声も多く、倫理的にも論議を呼びそうだ。
治療を担当しているNIHの心臓・肺・血管研究所はこの少女の名前や容体など詳細を明らかにしていないが、アデノシンデアミナーゼ(ADA)という代謝に関係する酵素が生まれつき欠損しているADA欠損症で重症という。
博士らは申請が認められた直後から、治療の前段階として、患者の白血球を培養。遺伝子工学で処理された不活化ウイルスに正常なADA遺伝子を乗せ、白血球に組み込んで準備を整えた。
この日の治療はまず患者の容体、培養した白血球細胞の状態などを慎重に調べた上、で、約1億個の培養白血球を患者の血液内に注入した。順調に行けば、酵素が生産され、患者の血液中で免疫をつかさどっている白血球の一種T細胞が働き出し、免疫機能が回復するとみられている。《共同通信》