平成916日目

1991/07/12

この日のできごと(何の日)

【筑波大】「悪魔の詩」翻訳者の他殺体見つかる

12日午前8時10分ごろ、茨城県つくば市天王台、筑波大学構内の人文社会学系A棟七階エレベーター前踊り場付近で、同大比較文化学系助教授五十嵐一さん(44)(東京都大田区)が首などから血を流して死んでいるのを、清掃作業員が見つけた。同県警つくば中央署は遺体の状況などがら殺人事件と断定した。五十嵐さんはイランの故ホメイニ師が著者のサルマン・ラシュディ氏に「死刑」を宣告して世界中に話題をまいた小説「悪魔の詩」の日本語版訳者として知られていた。

五十嵐助教授は左首のぼか、顔や両手も切られており、傷は計6か所あった。手の甲の傷は、何者かともみ合った際、刃物を避けようとして受けたらしい。持っていたカバンも刃物で切られていた。筑波大学は夏休みに入っており、清掃作業員の女性があお向けになって倒れていた五十嵐さんを発見した。大学側は「夏休み中で五十嵐助教授がなぜ学内にいたかわからない」と話している。

つくば中央署は県警捜査一課、公安二課などの応援を得て、約50人の捜査員を投入、大学関係者からの聞き込みや五十嵐助教授の最近の足取りを調べている。

五十嵐助教授は昭和45年に東大理学部数学科卒業。51年に同大大学院人文科学科研究科美学芸術学専攻博士課程を中退、62年に筑波大助教授に就任した。

専攻はイスラム学で、イスラム世界の政治、経済問題をコーランの読解などによる思想や文化の面から分析するなどユニークな存在として知られていた。「イスラーム・ルネサンス」などの著書があり、イラン哲学アカデミー客員にも名を連ねていた。

「悪魔の詩」は、インド生まれの英国人作家、ラシュディ氏の小説で、1988年、ロンドンの大手出版社から出版された。商人上がりの予言者が活躍する奇想天外なストーリーで、英国内で刊行直後からセンセーションを巻き起したが、「イスラム教の開祖マホメットとイスラム教創立の話をパロディー化した」としてイスラム教徒の怒りをかった。

販売元の新泉社(東京都文京区本郷)によると、「悪魔の詩」訳本の上巻は昨年2月、同下巻は同8月に出版され、これまで上下合わせて7万部余売れている。

昨年2月、日本語版の発行者であるジャンニ・パルマさんが出版にあたって記者会見した際、パキスタン人がパルマ氏になぐりかかるなどのトラブルがあったほか、イスラミック・センターというところから同社に二度抗議文が送られてきたが、出版そのものに対する妨害や圧力は特になく、翻訳者である五十嵐さんへのいやがらせ、妨害などもきいていないという。

家族の話によると、五十嵐助教授は東京の自宅とつくば市内にある大学の単身寮を行ったり来たりしていた。最近は10日朝に自宅を出て、10、11日は寮に泊まり、大学に通っていたらしい。《読売新聞》

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【亀田和毅さん】誕生日

【女子高生コンクリート詰め殺人事件】主犯格に懲役20年

埼玉県の女子高生(当時17歳)を監禁・殺害し、遺体をコンクリート詰めにして捨てたとして、わいせつ誘拐・略取、殺人、死体遺棄などの罪に問われた4被告(犯行時18–16歳の少年)の控訴審判決公判が、12日午前、東京高裁刑事10部で開かれた。

柳瀬隆次裁判長は「一連の犯行の常軌を逸した悪質重大性、遺族の被害感情、社会的影響の大きさなどを考えると、一審判決の量刑は著しく軽過ぎて不当」として、リーダー格のA被告(21)を懲役17年などにした一審判決を破棄し、あらためてA被告に懲役20年を言い渡した。犯行の残虐性か一ら量刑の軽重に議論を呼んだが、二審は「量刑不当」とする検察側主張を認めた。

A被告の中学の後輩だった残る三人の量刑は、準リーダー格のB被告(20)が一審通りの懲役5年以上10年以下、自室が監禁場所となったC被告(18)が懲役5年以上9年以下(一審・懲役4年以上6年以下)、死体遺棄に関与しなかったD被告(19)が懲役5年以上7年以下(同3年以上4年以下)。

判決は、4被告の少年としての未熟性や、社会に氾濫する低俗で刺激的な情報に汚染されていたことを一審通り認めたが、一方で「これを理由として、罪責を大幅に軽減するのが相当とは認め難い」と判断。遺族感情も十分酌んだうえ、「事件が一般社会に与えた衝撃は極めて深刻で、影響も大きい」と断じた。

その上で、被告人それぞれの個別的情状を検討。主犯格のA被告については、「犯行の中心となり、積極的、主導的に犯行を遂行しており、これまでの非行歴、暴力団関係者への接近状況などを考えると、罪責は極めて重大であり、被告人四人の中でも、ひときわぬきんでている」と指摘した。

さらに、一審で情状とした脳の器質障害についても「過大視するのは相当でない」とした。 そして判決は「犯情の悪質性、その他の諸般の事情を総合して考えると、被告人らのために酌量できるすべての情状を十分考慮してみても、A、C、D三被告に対する一審の量刑は著しく軽過ぎる」と認定。

特にA被告については「無期懲役刑を科す余地もないとはいえない」としたものの、「深く反省しているなど、諸事情を考慮すると、躊躇せざるを得ない」とし、結局、有期懲役刑の最上限の刑を選択したと述べた。 一方、控訴を棄却したB被告については「少年に対する不定期懲役刑の最高刑にした一審判決の量刑はやむを得ない」とした。

女子高生コンクリート詰め殺人事件

埼玉県三郷市で昭和63年11月25日夜、アルバイト先から自転車で帰宅途中の同県立高三年の女生徒を東京都足立区綾瀬の非行少年グループが連れ去り、一人の少年の自宅二階に40日間にわたり監禁。わいせつ行為と暴行を加えたうえ殺害し、ドラム缶に入れてコンクリート詰めにして江東区内の工事現場に捨てた。 少年7人が逮捕や書類送検され、起訴された4人を除く3人は東京家裁で試験観察と少年院送致の処分を受けた。《読売新聞》

【ペルー】農業技術者3邦人射殺される

ペルー中部チャンカイ県ワラルで12日午前7時20分ごろ、日本政府の援助で運営されている野菜生産技術センターが極左ゲリラ「センデロ・ルミノソ(輝く道)」に襲撃され、国際協力事業団(JICA)派遣の日本人農業技術者3人が射殺された。《共同通信》

【大相撲名古屋場所】6日目

大相撲名古屋場所6日目(12日・愛知県体育館)初めて横綱、大関がそろって勝った。休場明けの北勝海はうるさい寺尾を寄り倒し、小錦も琴錦を落ちついてさばいた。霧島は2連敗していた貴闘力を立ち合いの変化で下した。上位陣はこの三人が1敗。

剣が峰に立たされている大乃国は栃乃和歌に逆転勝ち、旭富士とともに五分の星とした。平幕の琴富士は元気な両国を寄り切って全勝を守った。《読売新聞》

【自民党総裁選】宮沢氏が遊説開始

秋の自民党総裁選挙をにらんだ実力者の国内遊説が始まった。宮澤喜一・元副総理が12日、大阪市内で講演したのを皮切りに、渡辺美智雄・元政調会長が19、20の両日に北海道・根室市での遊説を予定、また三塚博・元政調会長も二22日の福岡市での講演を第一弾に全国遊説をスタートさせる。

海部首相が10日に離日、日米首脳会談を終えて先進国首脳会議(ロンドン・サミット)に臨む時期に当たるため、12日の宮沢氏の講演は留守を狙っての首相批判と受け取られないよう穏やかな調子に終始した。しかしサミットから首相が帰国する21日以降、実力者の遊説が徐々に熱気を帯びることになりそうだ。

宮沢氏は6月の東南アジア諸国訪問の際、インドネシアのジャカルタで、総裁選は政策論争の中で争うべきだと主張、「外交、政策の宮沢」をアピールしていく姿勢を打ち出していたが、今回はその第一歩。

12日朝、空路、東京から大阪に着くと遊説に先立って直ちにヘリコプターで泉州沖の関西新空港の建設現場を視察。ヘルメットにライフ・ジャケット姿で、「地盤沈下の心配は」などと質問を連発、「苦労は多いと思うが、とにかく国家的プロジェクトを完成させなければ……」と語るなど、書斎派とみられがちなふだんとは打って変わったパフォーマンスぶりをみせた。大阪市内のホテルで行った講演のテーマは、「アジアの経済と日本」で、生ぐさい政局とは一見、無縁な話題。これについて、宮沢氏は講演後の記者会見で、「秋に向けての決心はまだしていない」としながらも、「わが国のあり方について国民にこれだけの議論があり、対外的にも21世紀に向けての国づくりの問題がある。いろんなところで、国民の声を聞き、自分でも話したい」と語り、政策で勝負する姿勢をにじませていた。《読売新聞》



7月12日 その日のできごと(何の日)