平成2903日目

平成8年12月19日(木)

1996/12/19

【在ペルー日本大使公邸占拠事件】

ペルーの日本大使公邸人質事件は、発生から3日目の19日未明、解放されたカナダなど3カ国の大使の仲介で、公邸を占拠している極左ゲリラ、トゥパク・アマル革命運動(MRTA)の武装グループとペルー政府との交渉が動き出した。交渉の詳細は明らかにされていないが、19日付のペルー有力紙ラレプブリカは、フジモリ・ペルー大統領がMRTAのメンバーで、現在、服役中の40人と人質を交換することを検討中と報じた。検討されている交換対象は殺人を犯していない服役囚となるという。

しかし、フジモリ大統領が、獄中にいる約450人のMRTAの仲間全員の釈放など、ゲリラ側の4項目要求をすべて受け入れる可能性は少ない。ゲリラ側が4項目要求に固執すれば、人質200−490人といわれる事件の長期化は必至とみられる。

18日午後6時半(日本時間19日午前8時半)に解放されたカナダ、ドイツ、ギリシャの3大使は武装グループの要求文書を携え、大統領府などでペルー政府の交渉担当者を務めるパレルモ教育相に会い、残る人質の解放について協議した。

うちビンセント・カナダー大使ら2人が19日午前0時すぎ、日本大使公邸に戻り、約40分間にわたり武装グループに政府の意向を伝えた。この後、ビンセント大使は公邸前で「19日朝(日本時間同日夜)も交渉が続く」と表明した。

また、公邸には18日夜、武装グループの要求で食料や飲料水のほか、エックス線撮影機2台が赤十字職員の手で運び込まれた。エックス線撮影機は荷物検査に使用するとみられ、武装グループは長期ろう城も辞さない構えを示している。19日朝も赤十字職員が食料などを搬入した。

18日は、3大使以外に体調を崩したり、高齢などの理由で計7人が解放された。青木盛久大使をはじめ残る大多数の人質は依然、公邸内に閉じ込められたままで、異常な緊張状態の下で健康状態が懸念されている。日本の外務省によると、人質のうち、これまでに確認された日本国籍保有者は66人。

武装グループから公邸内への出入りを許されているペルー人カメラマン、フアレーン・ビクトル氏は「人質たちは公邸で自由に歩き回り、話をしている」と指摘、健康状態に特に問題はないとの見方を示した。《共同通信》

宮内庁、天皇誕生日の祝賀表示を取りやめ

宮内庁の鎌倉節長官は19日午後、記者会見し、23日に皇居で行われる予定だった天皇誕生日の祝賀行事を取りやめると発表した。ペルーの日本大使公邸人質事件を憂慮される天皇陛下の意向によるという。祝賀行事が中止になるのは、昭和天皇の服喪期間だった平成元年などを除き、極めて異例。

宮内庁によると、陛下は事件が報じられた18日以来、夜遅くまでテレビを見たり、新聞に細かく目を通したりするなどして推移を見守ってきた。一足早い天皇誕生日の祝賀パーティー会場がゲリラに襲撃されたことに、ご心痛の様子だという。

外務省は19日、ペルー・リマの大使公邸人質事件に関連し、今後、天皇誕生日祝賀会の開催を予定している十数カ国の在外公館に対し、祝賀会の中止を指示した。《共同通信》

橋本首相「人命尊重を最優先」

政府は19日午後、橋本龍太郎首相を本部長とする「在ペルー日本大使公邸占拠事件対策本部」の初会合を首相官邸で開いた。首相は「人質には日本人以外に多数の外国人要人がいる。人命尊重を最優先に、ペルー政府が態勢をとれるよう協力していく」と述べ、平和的手段での解決に務める決意を強調し、関係各省庁が結束して対応するよう指示した。

会議後の記者会見で梶山静六官房長官は「一義的にはペルーの問題だが、公邸は日本の主権下であり難しい対応が迫られる。ペルー政府も館内で何らかの行為をするときは日本の了承が必要だ。日本とペルーが密接不可分で対応しなければならない」と述べ、犯人側への対応はペルー政府との連携で進める考えを示した。

また米国など人質を取られている関係各国に情報を提供したり、要望を聞くなど頻繁に意見交換する方針を明らかにした。《共同通信》

池田行彦外相、フジモリ大統領と会談

ペルーの極左ゲリラ、トゥパク・アマル革命運動(MRTA)による日本大使公邸人質事件で、フジモリ・ペルー大統領は19日午前(日本時間20日未明)、政府高官と協議。リマ入りした池田行彦外相も同日夜に、フジモリ大統領と会談し、事件解決に向け本格協議が始まった。

大統領はクリントン米大統領にあてた書簡で「目的は人質の安全と健康」と述べ、人命優先の方針を強調、一方米英などはリマにテロ対策専門家を派遣した。フジモリ大統領と池田外相が人質解放を優先することで一致した。《共同通信》



【筒井康隆氏】執筆再開宣言

出版、新聞などの差別表現規制に抗議して断筆宣言をしていた作家の筒井康隆氏が19日、執筆再開を発表した。文芸春秋、新潮社、角川書店との間で執筆再開の合意が成立し「覚書」を交わしたもので、来年1月発売の文芸誌「文学界」「新潮」に新作が、「文芸春秋」に執筆再開の経緯を語るインタビューがそれぞれ掲載される。《共同通信》

【政界談話室】

○・・・国会移転審議会の19日の初会合に臨んだ橋本龍太郎首相は、首都機能移転について「今度の選挙で有権者間の意識のズレを感じた。東京では『ローカルシティーになってしまう』という反応があるし、一方で移転候補地からは『ぜひとも実現できるよう話してほしい』と言われた」と厳しい表情。国家100年の計と言われる首都機能移転問題が動き出せば移転先をめぐる綱引きがし烈を極めるのは必至。それだけに「審議会を通じて審議のプロセスを公開して、意識の格差を埋めてほしい」と、関係地域の誘致合戦に足をすくわれたくない様子。

○・・・自民党の河野洋平前総裁はこの日、都内で講演し「野党の党首を2回やったが、保守系野党の党首ほどつらいものはない」と、新進党のゴタゴタぶりを念頭に置きつつ新自由クラブ、自民党の党首を経験した苦労話を披露。さらに求心力低下に悩む小沢一郎新進党党首の心情を思いやったのか、「そういう(野党の)経験があったので、野党自民党の党首になったときは一日でも早く与党にならなくてはと思った」。橋本首相に総裁の座は譲ったものの単独内閣復帰を果たした余裕の表情?《共同通信》

【自民党・森喜朗総務会長】北陸新幹線・飯山トンネル建設を

策定中の北陸など整備新幹線の新基本計画について、自民党の森喜朗総務会長は19日、党本部に党整備新幹線建設促進特別委員会の小里貞利委員長や運輸省の梅崎壽鉄道局長らを呼び、未着工区間の沿線自治体の「最低限の要望」を盛り込んだ計画策定を求めた。北陸については新潟、長野両県境を通る飯山トンネルの建設を挙げた。

自民党は18日、整備新幹線沿線の党所属国会議員らから新基本計画策定に向け、それぞれ「最低限の要望」を聴取しており、森氏の要請はこの意見聴取を基に行われた。

北陸新幹線関係者によると、飯山トンネルに対し、JR西日本と東日本が建設に難色を示している。その理由として、建設費や時間短縮の効果のほか、同トンネルを建設せず、建設中の北陸新幹線魚津−糸魚川間と上越新幹線を結ぶことによる「乗客数が伸び悩む上越新幹線のテコ入れ」との見方が出ている。

これに対し、北陸新幹線沿線自治体などは「将来のフル規格化の芽をつみ、スーパー特急の固定化につながる」(石川県企画開発部)と反発している。また、森氏も運輸省などへの要請後、記者団に「飯山トンネルの建設見送りは北陸新幹線を長野止まりとし、全線整備を断念することになる」と述べた。《北國新聞》

【オウム真理教・松本智津夫被告】第20回公判

オウム真理教松本智津夫被告(41)=教祖名麻原彰晃=の第20回公判が19日、東京地裁で開かれ、地下鉄サリン事件の検察側証人の元幹部井上嘉浩被告(26)が弁護側の反対尋問に「昨年3月の強制捜査直前、今川アジト(東京都杉並区)からVXを持ち出した」と証言、強制捜査の情報を事前に得て証拠隠しを図ったことをうかがわせた。

VXについては、3日逮捕された元幹部林泰男容疑者(39)も同時期に今川アジトから持ち出し、玉川上水の土手に埋めたと供述。土手からVXが見つかっている。

警視庁捜査一課は今川アジトに残っていたVXは一瓶しかなく、井上被告が持ち出したとすれば、その後林容疑者に渡したのではないかとみている。

また、昨年1月に宗教団体「幸福の科学」主宰者大川隆法氏の車にVXを仕掛けたことも新たに明らかにしたが、これまで「全く知らない」と証言していた短銃について、弁護人から追及され「改造けん銃を持ったことがある」と前言を翻した。《共同通信》

【マルチェロ・マストロヤンニさん】死去

映画「甘い生活」「ひまわり」などに出演し、イタリアを代表する俳優として知られるマルチェロ・マストロヤンニ氏が19日、膵臓がんのためパリの自宅で死去した。72歳。

マストロヤンニ氏は1924年9月28日、ローマ近郊で生まれた。第二次大戦中はイタリア降伏と同時にドイツの強制収容所に入れられたが、脱走してベネチアに。終戦後ローマに戻り、若き日のフェデリコ・フェリーニ監督らと親交を持った。

ルキノ・ビスコンティ監督に見いだされ、舞台俳優として活躍した後、47年「「レ・ミゼラブル」で映画デビュー。60年フェリー二監督の「甘い生活」に出演し、名声を確定的にした。

数カ月前から膵臓がんの治療を受け、自宅療養を続けていた。死の床には同せい生活を送ったフランスの女優カトリーヌ・ドヌーブさんと娘のキアラさん、俳優のミッシェル・ピコリ氏が付き添った。《共同通信》



12月19日のできごと