平成1689日目
1993/08/23
この日のできごと(何の日)
【山形マット死事件】逮捕された3生徒は「無罪」
山形県新庄市の市立明倫中でことし1月、いじめを受けていたとされる一年生のA君=当時(13)=が体育館用具室の巻いてあった体操マットの中で窒息死しているのが見つかった事件で、新庄署に逮捕、補導され、傷害致死の疑いで山形家裁で審判を受けていた同中学二、三年生(当時)一、二年生)6人の決定言い渡しが23日、同家裁であった。
卯木誠裁判官は、主犯格とされた少年を含む逮捕された3人について「事件に結び付く証拠はない」と、刑事事件の無罪に相当する不処分(非行事実なし)の決定をした。一方、補導された3人は少年鑑別所に収容し、審判を続行することとした。 不処分の3人については「検察側に抗告などの手段はなく、事実上「無罪」が確定する。平成元年9月に不処分の決定があった東京・綾瀬の母子殺人事件に続いて、検察・警察は重大な少年事件でえん罪を出した。
決定で卯木裁判官は、逮捕された3人を不処分とした理由について「少年らの自白内容の変遷に不自然な点が多く、重要な部分が合致してない。2人はアリバイが認められ、もう1人も“マット室から離れていた”とする弁解を否定できない。目撃者の供述も信用できず非行の証拠がない」と述べた。また、保護処分を受けた3人については「マットに押し込んだ行為は認定できる」と述べた。
事件5日後、6人のうち当時14歳以上の3人が逮捕され、14歳未満の3人は補導された。6人は警察の調べに非行事実を認めたが、家裁や児童相談所などでは否認していた。ほかに1人が補導されたが、容疑を認めたため児童相談所の在宅指導処分が決まった。この1人も処分決定後証言を翻している。 警察側は、別々に取り調べた7人の自供内容が一致することから、非行事実に間違いないとしていた。しかし現場から7人の指紋は検出されず、全員がアリバイを主張している上、直接結び付く物証もないため、警察調書の信用性などをめぐり審判は約半年に及び、異例に長期化していた。
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わが子の命と夢が奪われて7カ月。父親の心にやり場のない怒りと悲しみがこみ上げた。体操マットの中で窒息死したA君の変わり果てた姿が脳裏から離れることのないという父、Bさん(44)は、自ら園長を務める山形県新庄市内の幼稚園内で審判の決定内容を複雑な表情で聞いた。Bさんは不処分の報告が入ると「大変残念です」とひと言。伏し目がちに小さくため息をついた。
逮捕された少年3人の審判で不処分(無罪に相当)の決定が出たのを受け会見。グレーのジャケットに、二男の死を悼む黒のネクタイ姿。 Bさんは「嫌がる人間をマットに押し込むのは集団でしかできない。事故ではないんだ」と語気を強めた。 会見後、別の少年が処分保留のまま審判続行となったことを知らされると、インタホン越しに「えっそうですか」と驚いた様子。心境については「午後の会見でお話しします」と室内に引きこもった。
審判のあった山形家裁。報道陣が多数詰めかけ終始、繋迫した空気に包まれた。弁護士によると、少年らは白いシャツ、黒ズボンの制服姿で入廷。緊張した様子だったが「不処分」の決定が言い渡さ」れると、ホッとした表情をみせ、傍聴席では3人の母親が涙ぐんでいたという。
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逮捕された3人の少年がいずれも不処分(無罪に相当)となったことを受けて付添人の弁護士2人は23日、山形家裁内で会見。「審判ではアリバイが認められた。(少年らの捜査段階での供述には)不合理な変遷があり、信用性はないということだった。少年3人を当時用具室付近で目撃したという証言は信用できない、と裁判官が明言した」と語った。
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主犯格とされた少年ら逮捕された少年3人を「非行事実なし」と不処分にした23日の山形家裁の審判決定は、自白に頼って警察が容疑者を絞った捜査手法に、疑問を投げ掛けた。
死亡診断書などによると、死亡したA君が、中学校体育館用具室のマットの中で窒息状態になり始めたのは1月13日の午後5時前後以降。当時、体育館では約50人の生徒がクラブ活動などをしていた。警察は、生徒を中心に延ベ百数十人の生徒から事情を聴いた。しかし、A君が用具室へ入るのを見たという証言は、ほとんど得られなかった。
事件4日後の正午すぎ、主犯格とされた少年が、執ような追及に自暴自棄になって容疑を認め、ほかの6人の少年の名前を挙げたとされる。うち4人は同日夕方に非行事実を認めた。残る2人は、主犯格とされた少年の供述などを根拠に、翌日その少年と一緒に否認のまま逮捕され、その日に容疑を認めている。 しかし、現場から7人の指紋は検出されず、非行事実に直接結び付く物証もなかった。審判で逮捕された少年3人は「取り調べ中『やってません』と何度も言ったが、自分の言い分は聞いてくれなかった」などと証言。否認すると、うそをつくなと怒鳴られ「警察の言うことにうなずくしかなかった」という。《共同通信》
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【第75回全国高校野球選手権大会】育英(兵庫)初優勝
第75回全国高校野球選手権大会最終日は23日、5万人の観衆を集めた甲子園球場で育英(兵庫)―春日部共栄(埼玉)の決勝戦を行い、育英が3―2で勝ち、春夏を通じての初優勝を飾った。兵庫県勢の優勝は第63回大会(1981年)の報徳学園以来12年ぶり7度目。春日部共栄は埼玉県勢の初優勝を達成できなかった。
育英は一回、2安打と四球の無死満塁から西内の右前適時打、スクイズで2点を先制。同点で迎えた八回、一死一、三塁から田中がスクイズを試み、土肥の本塁悪送球(失策)を誘い決勝の1点を奪った。守っては強打の春日部共栄の反撃を井上、酒谷、松本3投手の巧みな継投で2点に抑え、競り勝った。兵庫県勢は戦後4度進んだ決勝戦でいずれも勝利した。
春日部共栄は四回に柴田、五回に土肥の適時打で1点ずつを返し、同点に追い付いた。八回も二死満塁の勝ち越し機をつかんだが、松本の力投にかわされ、土肥の力投に報えなかった。《共同通信》
【九州予防接種禍訴訟】国側が上告を断念
予防接種の副作用で死亡したり、思い後遺症を負った福岡、鹿児島両県の被害者とその遺族らが国を相手に損害賠償を求めた「九州予防接種禍訴訟」で、大内厚相は23日記者会見し「因果関係や過失についての事実認定を最高裁で取り上げてもらうのは困難」として行政の過失を認めた福岡高裁判決を受け入れ、上告を断念することを表明した。
昨年12月の東京訴訟での国側の上告断念以来、予防接種禍訴訟では被害者救済の流れが定着してきているが、未認定被害の勝訴が確定するのは初めて。大阪高裁の同種訴訟に大きな影響を与え、予防接種制度の在り方に改めて見直しを迫ることになろう。《共同通信》
【細川護熙首相】所信表明演説
細川首相は23日午後1時すぎから衆院本会議で初の所信表明演説を行い、政治理念、内政、外交の諸課題に対する基本姿勢を明らかにした。引き続き参院本会議でも演説した。
首相はこの中で、「責任ある変革」を内閣の旗印とした上で、細川内閣を「政治改革政権」と位置付け、「本年中の政治改革断行」を最優先課題に掲げた。具体的には①小選挙区比例代表並立制の導入②政治腐敗の再発防止③公費助成導入などで企業団体献金廃止の方向に踏み切る—の3点を中心とした政治改革関連法案を今年中に成立させる決意を表明。政官財の癒着体制や族議員政治の打破も明示した。
過去の日本の戦争について侵略行為や植民地支配があったと認め、深い反省の気持ちを示した。核拡散防止条約(NPT)について無期限延長支持を正式表明。首相は自らの政治理念を「虚飾を排して質と実を追求する」とし、「質実国家」を打ち出した。
首相ははじめに、非自民連立政権の発足を「新しい歴史の出発点を画するもの」と、新時代の幕開けを宣言。政治改革の後に規制緩和、地方分権推進、縦割り行政の弊害是正など行政改革にも本格的に着手する決意を示した。同時に外交、防衛など国の基本政策は従来の政策を継承することも確認した。景気対策では円高も加わり景気の回復が大幅に遅れていることに強い警戒感を示しているが、対策としては規制緩和や円高差益還元など緊急諸施策を実行すると述べるにとどまった。長期的な政策理念として民間活力の発揮を目的とした「経済構造の変革」を挙げた。
財政では来年度予算編成で赤字国債は発行しないと断言、公共事業のシェアの抜本的変更に取り組み、国民生活の質の向上に重点投資することを約束。税制については「年金など国民負担全体を視野に入れ、所得・資産・消費のバランスのとれた税体系の構築」を示した。
また生活者・消費者、環境保全、男女共同参画型社会の実現の三視点を重視し、従来の制度、政策の見直しを強調、国民全体が円高メリットを享受できるよう対応したいとした。
首相は新多角的貿易交渉の農業交渉について「これまでの基本方針の下、相互の協力による解決に向けて最大限の努力をする」と自民党政権のコメの関税化反対の姿勢を踏襲。日本の貿易黒字対策として内需拡大、市場アクセス(参入)の改善、内外価格差の是正、規制緩和を挙げ、縮小努力を明らかにした。
国際社会に対しては、日本は憲法の精神を尊重しつ国連による人的貢献、国連改革・強化に積極的に寄与することを鮮明にした。日米関係は日本外交の基軸と認め、アジア太平洋地域の重視を示した。対ロシアでは北方領土問題解決とロシア国内の改革への応分の支援を述べた。《共同通信》
【共産党・不破哲三委員長】自民政治の継続と批判
共産党の不破委員長は23日、細川首相の所信表明演説について国会内で記者会見し「言葉の新しさは多少あるが、内容は自民党政治の引継ぎを高らかに宣言したものだ」と述べ、自民党政治の継続でしかないと批判。「従来の自民党首相の演説の延長線だ」と強調した。
特に、小選挙区比例代表並立制の導入について「自民党がこれまでやろうとしてきた悪政中の悪政だ」と指摘。「なぜ並立制を導入するのかの説明は一言もなかった」と非難した。
また不破氏は、首相が侵略行為への反省を表明した点について「先日の記者会見で侵略行為と認めたのは過去の戦争全体への評価だったが、演説では過去の戦争に含まれている個々の行為についての反省に変わっており、大きな後退だ」と述べた。《共同通信》
【政界談話室】
○…羽田外相は23日昼、首相官邸での政府与党首脳会議前に社会党の赤松書記長を見つけると「なかなか威勢がいいね」と声を掛けた。赤松氏が前日、松江市で、細川首相が否定している赤字国債発行の容認論をぶち上げたためで、赤松氏は「あれは“田舎”での発言がああいうふうに書かれちゃって」と苦笑いしながら弁解に躍起。ところが近くにいた社会党の佐藤自治相が「“田舎”という言葉は自治大臣として聞き捨てにできないな」とまぜっ返し始めたため、赤松氏は「社会党の党内不一致だなあ…」とぼやくことしきり。
○…森自民党幹事長はこの日、記者会見で細川首相の所信表明演説について感想を求められ、内容に関してはやや手厳しいものの「従来の政治家の演説から一歩抜けた感じが出ていた」と評価も。会見後記者団が「褒め過ぎじゃないのか」と問うと「それぐらい言っとかんとな。あまりけなすのもなあ」と、大野党として「大人の対応」を見せつけたいとの思いがありあり。しかし、野党となってから幹事長の会見も慌ただしさがなくなり、森氏の態度にはそこはかとなく「野党のエレジーー」と「与党へのジェラシー」が漂っていた。《共同通信》
【天皇、皇后両陛下】訪欧前に会見
天皇、皇后両陛下は23日、来月3日からのイタリア、ベルギー、ドイツ訪問を前に皇居・宮殿で記者会見。「ヨーロッパはドイツの統合をはじめとして多くの変化が起こり、協力関係が密になっています。(日本との)互いの理解も深まりつつあり、友好関係の増進に努めていきたい」と抱負を述べられた。
天皇陛下は第二次世界大戦で日本と同盟関係にあったイタリア、ドイツ両国について「戦中、戦後苦難の道を経てきたそれらの国々とともに、過去を省み、今後に生かし、より良い国際社会を築いていきたいと思っています」と話された。
約40年前、英国でエリザベス女王の戴冠式に参列した時に立ち寄り、今回が2度目の訪問地になる所もある天皇陛下は「同じものを見るにも40年の歳月を経て見るのでは全く違ったものになります。新鮮な気持ちで訪問したい」と強調。
皇后さまも8年前、岐阜県・白川村で開かれた音楽祭を訪れた時に出会ったイタリアの学生と同国フィレンツェで再会が予定されていることを紹介。「3カ国の元首をはじめ各地で再会の喜びを重ね、さらに多くの未知の人々と会えますことを楽しみにしています」と話された。
またボードワン前国王の急死で一時実現が危ぶまれたベルギー訪問について天皇陛下は、アルペール新国王から改めて招待の親書が届き、今月上旬、葬儀で訪問した時もファビオラ前王妃から直接要請があったことを明らかにされた。《共同通信》