平成1552日目

平成5年4月8日(木)

1993/04/08

【国連ボランティア・中田厚仁さん射殺事件】

国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)報道官によると、カンボジア中部コンポントム州で8日午前8時半(日本時間同10時半)ごろ、UNTACの車両1台が武装ゲリラに襲われ、選挙監視を担当する日本人の国連ボランティア、中田厚仁さん(25)=東大阪市出身=が射殺された。同乗していたカンボジア人通訳も重傷。

報道官によると、犯人は1人で、中田さんは昨年7月8日にカンボジア入りした。独身。ボランティアを含むUNTAC要員、関係者で日本人が死亡したのは初めて。現場は州都コンポントムの北東三十キロ。プラササンボ郡というだけで具体的地名は分かっていない。重傷者のカンボジア人通訳は、プノンペン経由でバンコクに搬送された。

カンボジアでは、先週も南西部コンポンスプー州でUNTAC参加のブルガリア兵6人が死傷、UNTACは5月下旬の総選挙の無効を主張するポル・ポト派の犯行と断定、同派に犯人の引き渡しを要求している。

カンボジアでは7日、総選挙の選挙運動が始まったばかり。中田さんは、各党の選挙運動を監視するため、担当のコンポントム州内を巡回していた。

ポト派のプノンペン事務所スポークスマンは7日の記者会見で「ベトナムの占領が続き、中立的な政治環境が整っていない中での選挙強行」として同日の選挙運動開始を非難していた。また「真に自由、公正な選挙実現のためにすべてのことをする」と実力阻止を示唆していた。《共同通信》

カンボジア中部コンポントム州で8日、襲撃事件の犠牲となった選挙監視の国連ボランティア、中田厚仁さん(25)=大阪府東大阪市=は、正体不明の武装兵士グループに現場で拘束された後、頭と胸に計2発の銃弾を浴び、射殺されていたことが分かった。国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)報道官が明らかにしたもので、中田さんと同じ車に乗り、事件に巻き込まれ重傷だったカンボジア人通訳も同日午後、プノンペンの病院で死亡した。

コンポントム州は総選挙をボイコットしているポル・ポト派の活動が最も盛んな地域。UNTACでは、事件は7日から選挙運動が始まった5月総選挙の妨害を目的とするポト派部隊の犯行との見方が強まっており、選挙への警備対策の見直しが必至となった。

報道官によると、中田さんは8日午前7時(日本時間同9時)、同州プラササンボ郡コンポンチュテルを通訳とともに車でコンポントムに向けて出発。それから30分後、プラササンボ郡の選挙監視本部に、中田さんから「武装兵士の集団に拘束された。助けてほしい」という緊急の無線連絡が入った。

同本部から別の国連ボランティアが連絡のあったコンポントムの北東30キロの地点に駆け付けると、中田さんはうつぶせの射殺体で車の下に横たわっていた。通訳も車のそばに倒れており、車の窓ガラスが割れていた。 コンポントム州に展開するUNTACのインドネシア軍歩兵部隊によると、通訳は救助された後、「犯行グループはポト派」と語ったという。

プノンペンの日本大使館に入った情報によると、中田さんは後頭部から1発、背中から2発の計3発を至近距離から撃ち込まれていた。 カンボジアでは、ポト派によるUNTAC要員への襲撃事件が相次いでいるが、日本人関係者が死亡したのは初めて。ポト派による選挙妨害の強化も予想され、今後、非武装の国連ボランティアや停戦監視要員、文民警察官への警備対策が緊急課題となった。

政府は8日、カンボジアで日本人ボランティア中田厚仁さんが射殺された事件を憂慮①カンボジア情勢を討議する国連安保理の早急な開催を要請する②5月のカンボジア総選挙に向け「ポル・ポト派対策」などを関係各国と協議する—などの方針を固めた。 また、事件の調査のため同日、現地の大使館員を事件現場に派遣。今週中にも国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)に対し安全対策の要請と調査などを行うため、外務省の参事官クラスを派遣する方向だ。 河野官房長官は8日午後の記者会見で、カンボジアの紛争当事者各派に対し「強く自制を求めたい」との見解を表明。この事件で停戦合意など自衛隊の派遣五原則が崩れたとの認識はないとの考えを強調した。

宮沢首相は8日夕、カンボジアで選挙監視ボランティア活動の日本人男性が殺害されたことについて、官邸で記者団の質問に答えて「悲しみと憤激を両方感じるな。残念でけしからんことだ」と述べた。また「今後もカンボジアでのPKOに対する日本の方針に変わりはないか」との質問に対しては「もちろん」と答えた。《共同通信》



【後藤田正晴法相】副総理就任(兼務)

宮沢首相は8日午前、後藤田正晴法相(78)を法相兼任のまま内閣法9条に基づく副総理に任命した。同日昼、首相官邸で辞令を交付した。河野官房長官は午前の記者会見で、後藤田氏を副総理に起用した理由について「宮沢内閣を支えてきた渡辺副総理兼外相が病気で辞任。政局はまださまざまな問題を抱えている。こうした時期に政治改革推進役の後藤田法相は、閣内でこれまで大きな役割を果たしてきた」と述べ、内閣の最重要課題である政治改革の推進役として期待していることを強調した。後藤田氏は中曽根内閣時代に内閣の危機管理機能の充実を図ってきており、この面を含め政権基盤の強化とともに、首相の秋の再選戦略をにらんでの起用といえる。

河野長官によれば、首相は7日に後藤田法相に副総理就任を非公式に打診、法相は「皆さんの同意があれば」との前提で内諾を与えていた。これを受けて河野長官は梶山幹事長をはじめ自民党三役に説明、了承を得た。

河野長官は渡辺前外相の辞表受理を発表した6日の記者会見では、当分副総理は置かないとの方針を表明していた。この点について長官は「その後、首相の判断があった」と述べ、後藤田法相を内閣の文字通り「右腕」としたいとの首相の強い意向があったことを明らかにした。

副総理の裏付けとなる内閣法9条は「首相に事故ある時、または首相が欠けた時はあらかじめ指定する国務大臣が臨時に首相の職務を行う」と規定、首相が外遊する場合は自動的に首相臨時代理を務める。渡辺前外相のほかに最近では竹下内閣当時の宮沢副総理兼蔵相、中曽根内閣当時の金丸副総理(無任所相)の例がある。

後藤田氏は大平内閣での自治相をはじめ数多くの開僚を歴任、海部前政権では自民党政治改革本部長代理を務めた。昨年12月の宮沢改造内閣で法相として入閣後は、病気がちの渡辺前外相に代わり事実上の副総理役を果たしてきた。《共同通信》

【政界談話室】

○…宮沢首相は8日昼、副総理の辞令交付後に後藤田法相とともに閣僚応接室に現れるなり「(副総理を)今よろしくお願いしましたのでお披露目に参りました」と、心強い片腕を得たせいか珍しく記者団に向かいニッコリ。記者団が、憲法観をめぐって擦れ違いが目立った渡辺前副総理兼外相を念頭に「後藤田氏とは憲法に対する考え方も近いと思うが」と質問すると、「そりゃジェネレーションは非常に近いですからね」と上機嫌で認めたが、実は5歳違いの後藤田氏に対し渡辺氏は4歳違い。歳の差より同じ官僚出身同士の方がやりやすいが本音?

○…この日公明党の渡部一郎副委員長は政治改革の社公共同提案を提出後に会見、「国民の政治不信は限界に達している。政治的無関心と拒否の絶望的雰囲気はドイツのワイマール憲法が崩壊し、ナチスが台頭した時と同じだ」と悲壮なばかりの決意表明。同党が掲げる小選挙区比例代表併用制を「多年の日本の国会の病弊に対する答えを出すことができた」と自信を示し、返す刀で「単純小選挙区制はいささかも答えになっていない」と自民党案をばっさりと切って捨てた。いつもは妥協志向の公明党も出だしとあって強気一点張り。《共同通信》

【米・クリントン大統領】初の予算教書提出

クリントン米大統領は8日、1994会計年度(93年10月—94年9月)の米政府予算案である予算教書を議会に提出した。新政権として初めての予算教書で、大統領は財政赤字を大幅に削減する一方、投資拡大などによって米国経済の再生を目指す方針を国民に示した。

予算教書は大統領が2月に発表した包括的な経済政策を肉付けしたもので、与党の民主党が議会で多数を占めていることから、富裕者層への増税など基本路線は最終的に承認されるとみられる。

94年度の予算案は歳出を前年度比3.3%増の1兆5153億ドルにとどめる一方で、歳入は9.2%増の1兆2513億ドルを見込むなど、歳入の伸びが歳出の伸びを大きく上回るのが最大の特徴だ。歳入が増加するのは景気が回復傾向にある上、エネルギー新税の導入も含めた増税効果が期待できるためだ。

この結果、財政赤字額は、93年度の3220億ドルから、2640億ドルへと縮小する見込みだ。

支出項目別では、冷戦の終結を受けて国防費が前年度比4.7%減と93年度に続いて減額となったほか、エネルギー関係費、農業関係費、一般行政費などもマイナスとなった。

半面、運輸関係費が8.7%増加したのをはじめ、商業・住宅関係費など、公共投資関連部門の伸びが目立った。

大統領は予算教書の中で「現状維持によって得をする強力な特殊利益団体はこの教書に反対するかもしれないが、米国民は変革を求めている」と述べ、議会に対して教書に基づく予算の編成を訴えた。

予算案の収支は中立性を維持するため、議会予算局(CBO)の経済見通しを基礎にしているが、政府が提案した施策を実施した場合の見通しも併記している。

それによると、94年度の実質国内総生産(GDP)の成長率は3.3%で、CBOの見通しである3.0%をやや上回る。《共同通信》

【NATO】戦闘機でボスニア監視へ

北大西洋条約機構(NATO)は8日、ブリュッセルで開いた加盟国大使会議で、国連安全保障理事会の決議に基づくボスニア・ヘルツェゴビナ上空の飛行禁止強化のため、グリニッジ標準時12日正午(日本時間同日午後9時)からNATO軍の戦闘機によるパトロールを開始することを決定した。

NATO軍戦闘機は、国連の統括下でNATOの司令機構を通じて違反航空機の監視と排除に当たる。事実上、NATOとしては初の域外での軍事行動。

軍事関係筋によると、この作戦には米国のF15戦闘機など24機、フランスのミラージュ戦闘機など14機、オランダの戦闘機18機などが参加する。また英国もトーネード戦闘機を派遣する予定という。

司令部としてイタリア北部ビチェンツァのNATO戦術空軍基地が使用され、早期警戒管制機(AWACS)の監視情報に基づき、違反航空機に対し戦闘機による撃墜など武力行使を含む軍事活動を展開する。

NATOは既に今月初め、安保理の決議を受けて戦闘機の派遣計画を承認、一部の国の戦闘機はビチェンツァ基地で出動準備を整えていた。しかし、違反機の撃墜など具体的交戦規則をめくり、フランスが国連との緊密な協調を主張。細部の調整を進めた結果、武力行使などの際に国連の了承を得ることで決着した。《共同通信》



4月8日のできごと