1990 平成2年9月3日(月)

平成604日目

平成2年9月3日(月)

1990/09/03

【エジプト】親イラクを非難

イラクのクウェート併合と米英軍などのペルシャ湾岸展開をめぐるアラブ域内の亀裂が拡大、深刻な事態に発展しつつある。アラブ連盟をまとめ切れなくなったクリビ事務局長が3日、突然辞任し、米国と歩調を合わせて対イラク非難の急先ぽうに立つエジプトが親イラクのパレスチナ解放機構(PLO)やヨルダン非難を開始。これに対しPLOが2日、パレスチナ解放通信(WAFA)を通じ「エジプト政府は、アラブ世界の危機に乗じてパレスチナ人の闘争さえ非難する暴挙に出た」との声明を発表、エジプトに対して公然と批判しだした。このため、親イラク、中立派諸国の主張する湾岸危機の「アラブ枠内解決」は一層難しい情勢となってきた。

エジプトのガリ国務相(外交担当)は3日、エルサレム・ポスト紙との会見で、イラクを非難しないPLOに業を煮やして「PLOをパレスチナ人唯一の合法的代表とするエジプトの公式見解を変更するかもしれない」と発言。エジプト与党、国民民主党機関紙マヨも同日「PLOがイラクを非難しないのは、クウェートにパレスチナ国家建設を認めるイラクとの密約のためだ」と主張、論争をエスカレートさせた。

エジプトの主張を湾岸危機を利用したパレスチナ問題からの許し難い後退とするヨルタン、イエメン、チュニジアなどはエジプト政府系紙の国内配給の禁止措置を取って抗議した。《共同通信》




【イラク文化情報相】制裁部分解除で邦人人質解放

イラクのジャシム文化情報相は3日、共同通信と会見し、日本政府が経済制裁を部分的に解除すれば、イラク国内の戦略施設に分散、収容されている日本人男性を段階的に解放するとの見解を明らかにした。

現在、イラク国内で141人の日本人が戦略施設に軟禁され、事実上人質となっているが、同相はその所在について「国内の石油・軍事施設、空港にいる。彼らは客人として手厚くもてなされており、心配の必要はない」と述べた。

この問題の解決は何か、との質問に「日本政府が部分的に(経済)制裁を解除し、イラクが原油を輸出し食料や医薬品を輸入できるようになることだ」と語った。《共同通信》

【金丸信元副総理】中東貢献策「非武装自衛官派遣を」

中国を訪問している金丸元副総理は3日、北京市の釣魚台迎賓館で同行記者団と懇談、中東貢献策に関連し「有事の場合、自衛隊が鉄砲も持たず丸腰で(の海外派遣は)いいという考えなら、おのずと別(問題)という判断も出る」と述べ、自衛隊法改正などによる非武装自衛官の派遣に前向きの姿勢を示した。

中東情勢に伴う臨時国会は、早期召集が望ましいとしたが「(法改正などで)何の結果も得られないならやらない方がいい」と、召集は野党の対応次第との考えを示した。

海部首相については「命懸けでよくやっている」と評価し「再選がないわけではない」と述べ、来年10月の任期切れ後の再続投を支持する考えを強く示唆した。《共同通信》

【長谷川信法相】病院に搬送

新任の最高裁判事、木崎良平氏の認証官任命式のため皇居・宮殿を訪れていた長谷川信法相(71)が3日午前10時半ごろ、体調を崩し、救急車で東京都港区の虎の門病院に運ばれた。同病院の高木昭夫神経内科部長によると、意識はあるが右腕と右足にまひがあり、脳卒中の疑いがあるという。

このため認証式は急きょ、坂本官房長官が皇居に向かい午前11時45分から正殿・松の間で行われた。

宮内庁によると、長谷川法相は宮殿・鳳凰の間で午前9時58分から同10時27分までの間、認証式に先立って天皇陛下に人事の報告などをした。この後鳳凰の間控室に戻ったところ具合が悪くなり、立っていられない状態となって宮内庁病院の医師の応急手当てを受けた後、同11時15分ごろ救急車で虎の門病院に運ばれた。

長谷川法相は参院新潟選挙区選出で当選3回。竹下派に所属し、ことし2月の第二次海部内閣で初入閣した。大臣秘書室などによると、長谷川法相は、体調に特に変わりはなく、この日も予定通り宿舎から直接、宮殿へ向かった。

【政界メモ】首相発言も発想転換を

◯…海部首相は3日午後、東京・九段会館で開かれた「北方領土返還要求総決起大会」に出席、「冷戦時代の発想を乗り越えて世界が一つになろうという時にはアジアでも東西対立が終わったという。喜ばしい平和の鐘が鳴らなければならない」とボルテージを上げた。

首相はことし1月の東欧訪問の思い出話から切り出し、「冷戦時代の発想を乗り越えて」の得意のフレーズを連発。4日からのシュワルナゼ・ソ連外相来日を強く意識した様子がありあり。しかし、「冷戦…」という首相の言葉を耳にタコができるほど聞かされている人も多く、会場からは「首相発言こそ発想の転換を」との声も。

◯…民社党の大内委員長はこの日、都内で開かれた学者・文化人でつくる「民社党と語る会」の総会に出席した。

出席者からは、湾岸危機に関連して「憲法改正で柔軟に対応してもらいたい」「イラク問題はサッチャー英首相流の人命を犠牲にしてもテロリストと交渉しないか、サダム・フセイン(イラク大統領)に土下座するかの二者択一しかない」など“過激発言”が続出、日ごろから「本当のことを本音で語る政治をつくりたい」というのが大内委員長の口癖だが、あまりのストレート発言に「あの人たちは(言いたいことが)言えるからいいなあ」ーとうらやましげ。《共同通信》

【米・ブッシュ大統領】休暇から帰任

ブッシュ米大統領は3日タ、メーン州ケネバンクポートでの夏季休暇を終え、ホワイトハウスに戻った。大統領は9日ヘルシンキでゴルバチョフ・ソ連大統領と会談する一方、米国内では議会が5日に再開され、米政府の湾岸危機対策は今週、外交、内政両面で本格化する。

大統領は4日午前、閣議を開くが、中東に派遣した米軍の展開、対イラク経済制裁の進展状況、米国内世論の動きおよび湾岸危機の経済的影響などを討議したうえで、外交、軍事両面の今後の対策を詳細に練ることになろう。

湾岸危機ぼっ発後初めて開かれる米ソ首脳会談はその意味で、湾岸危機に対する双方の認識について率直かつ多角的に意見を交換する好機であり、ブッシュ米政権の外交、軍事面での対応に大きく影響することになる、とみられている。

大統領は8月30日、米軍の中東派遣に伴う軍事支出への関係国の経済支援と、対イラク経済制裁の余波で苦しむ周辺国への経済支援計画を網羅した包括的な「経済協力行動計画」を発表し、当面、危機の長期化を見越した経済面での対策に本腰を入れる姿勢を示した。

この「行動計画」の遂行方法およびソ連や日本、西欧諸国を含めた関係各国との協調維持について、ベーカー国務長官は4日午後の下院外交委員会と5日午前の上院外交委員会の公聴会で証言する。

米国内世論を見ると依然、イラク軍との開戦に反対する意見が圧倒的多数を占めている。しかし、ナン上院軍事委員長らは、米ソ両国は、イラク軍のクウェート撤退だけではなく、イラクの戦争能力を除去することを共通の長期目標に据えるべきである、との意見を表明しており、ベーカー長官に対し、米国の対イラク軍事政策についても厳しい質問が集中することも予想されている。《共同通信》




9月3日のできごと