平成2437日目
1995/09/10
この日のできごと(何の日)
【坂本弁護士一家殺害事件】長男とみられる遺体発見
坂本弁護士一家事件で、警視庁と神奈川県警の合同捜査本部は10日夕、長野県・大町温泉郷近くの坂本堤弁護士=当時(33)=の長男竜彦ちゃん=同(1つ)=の捜索現場で、幼児の全身の遺体を発見した。捜査着手から5日目。遺体の身体的特徴などから、捜査本部は竜彦ちゃんに間違いないとみている。遺体は同日中に神奈川県に向け出発した。11日、遺体を解剖し詳しい原因を調べる。
坂本弁護士夫妻に続き竜彦ちゃんとみられる遺体が発見されたことで、オウム真理教元幹部岡崎一明容疑者(34)ら実行グループの供述が裏付けられたことになり、事件は発生から5年10カ月で全容解明に向け最終局面を迎えた。
捜査本部は既に教祖の麻原彰晃被告ら6人を坂本さん殺害の容疑で逮捕しており、妻の都子さん=同(29)=、竜彦ちゃんの殺害についても立件する。
発見場所は平成2年2月、岡崎容疑者が神奈川県警などに匿名で郵送した手紙に基づき、同県警が捜索した場所の付近。深さ約1メートルの地中で午後4時40分すぎ、まず幼児の右手のひらの骨が見つかり、午後6時半までに全身を発見したという。
神奈川県警によると、捜査員が粘土質の土を垂直方向に約1メートル掘り進み、その後、壁面の土を水平方向に削っていった結果、竜彦ちゃんとみられる遺体が見つかった。
岡崎容疑者の手紙に同封された図では、竜彦ちゃんを埋めた穴は深さ1−1.3メートル。穴の底辺部から奥行き40センチ程度の横穴があって、そこに遺体が埋められていることを示しており、ほぼ岡崎容疑者の供述通りの状況だった。
坂本弁護士一家は平成元年11月4日、横浜市磯子区の自宅から失跡した。これまでの捜査本部の調べに対し、岡崎容疑者や教団「建設省大臣」早川紀代秀被告(46)ら実行グループが殺害し、遺体を捨てたと供述している。《共同通信》
◇
冷たい湿地の地中深くから小さな遺体がやっと見つかった。現場に響く「遺体発見」の声。オウム真理教と闘った若い弁護士の一家3人は、5年10カ月の空白を経て、変わり果てた姿で、ようやく一緒になることができた。
10日夕、坂本堤弁護士=当時(33)=夫妻の長男竜彦ちゃん=当時(1つ)=とみられる遺体が見つかった長野県・大町温泉郷近くの捜索現場。
自宅のある神奈川県へと向かう小さな棺に手を合わせる捜査員たち。5日間の苦闘を物語るように泥だらけだ。暗闇に包まれた現場にオウム教団の犯罪に対する怒りとやるせなさが広がった。
真っ黒な泥の中から竜彦ちゃんとみられる小さな手のひらが見つかった。泥まみれになった右手のひら。「これは…」とくま手で穴を掘り進めていた捜査員の手が一瞬止まる。集まった捜査員らが、壊れないようにそっと回りの土を手でかき出すと、そこには変わり果てた小さな体があった。
「やっとお父さん、お母さんの所に戻れるね、と竜彦ちゃんに言ってあげたい」。遺体発見の報に午後6時半、現場近くで横浜法律事務所の伊藤幹郎弁護士は時折激しく降る雨の中、沈痛な面持ちで語った。
グレーのジャケットを雨にぬらしながら伊藤弁護士は「1歳の子供や母親を殺すことは、人間の心を持った者がやることではないと思う」とやり場のない怒りをぶつけた。一緒に捜索を現場で見守っていた同事務所の芳野直子弁護士も「本当に無念だ。さちよさんの心境は私には想像もつきません」とうつむきかげんに話していた。《共同通信》
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【大相撲秋場所】初日
大相撲秋場所初日(10日・両国国技館)貴ノ浪、若乃花の2大関が敗れる波乱の幕開けとなった。貴ノ浪はもろ差しに成功した小結琴錦に寄り倒された。若乃花は琴稲妻の寄りに物言いの末、黒星。横綱貴乃花は落ち着いた相撲で小結剣晃を寄り切り、横綱曙は貴闘力をよく見てはたき込んでともに白星発進。大関武蔵丸は若翔洋を押し倒した。武双山、魁皇の2関脇はそれぞれ朝乃若、湊富士を下した。小結琴の若は浜ノ島のすくい投げに屈した。《共同通信》
【大阪府警】少女焼死は「保険金殺人」
今年7月、大阪市東住吉区、市立桑津小六年A子さん(11)が全焼した自宅で焼死した火事で、大阪府警捜査一課は10日、生命保険金狙いの放火殺人事件として、殺人、現住建造物放火の疑いでA子さんの母親のB子(31)=同市阿倍野区天王寺町=と内縁の夫の電気工C(29)=同=の両容疑者を逮捕した。
調べによると、C容疑者らは自宅に放火してA子さんを殺害し、保険金を詐取しようと計画。7月22日午後4時50分ごろ、自宅ふろ場わきの車庫でライトバンの下にガソリンをまいてライターで火を付け、木造2階建て延べ約90平方メートルを全焼させ、入浴中のA子さんを焼死させた疑い。
A子さんの保険は、平成4年に保険外交員に勧められて加入、災害死亡時に1500万円が支払われるものだった。《共同通信》
【今津文化】西宮市唯一の映画館が閉館
兵庫県西宮市に一つしかない映画館「今津文化」が10日夜の上映を最後に姿を消した。阪神大震災で壊れた建物を応急修理して被災地の映画館の中でいち早く再開、被災者を励まそうと2月上旬から無料上映などをしてきたが、再建のめどが立たず、10月上旬には取り壊される。《共同通信》
【全米テニス男子】ピート・サンプラス選手、2年ぶり3度目の優勝
テニスの四大大会今季最終戦、全米オープン最終日は10日、ニューヨークのナショナル・テニスセンターで行われ、男子シングルス決勝は第2シードのピート・サンプラス(米国)が6−4、6−3、4−6、7−5で第1シードのアンドレ・アガシ(米国)を破って2年ぶり3度目の優勝を果たし、賞金57万5000ドル(約5700万円)を獲得した。
サンプラスはことしのウィンブルドン選手権に続く四大大会優勝で、通算7個目のタイトルを手にした。持ち味のサーブが安定したサンプラスは2セットを連取。第3セットは失ったが、第4セット、5−5からの第11ゲームで相手サービスをブレークして勝利を呼び込んだ。
連覇を狙ったアガシはミスが目立ち、1セットを奪っただけ。サンプラスのパワーをかわせなかった。《共同通信》
【ネパール】共産党政権が崩壊
ネパール下院は10日、ネパール会議派(NCP)など野党勢力が出していた与党、統一共産党(UML)のアディカリ内閣に対する不信任決議案を賛成107、反対88の賛成多数で可決した。
アディカリ首相は不信任案可決を受けて同日、ビレンドラ国王に辞表を提出し受理された。昨年11月、立憲君主国ネパールに初めて誕生した共産党政権はわずか9カ月余で崩壊した。
国王は憲法の規定に基づき、下院の過半数を制する野党勢力の代表を一両日中に新首班に任命、新内閣の組閣を要請するとみられる。NCPなど野党側は新連立政権樹立に向けて動き出しているが、政界筋によると、新首相にはNCPの議員団長で前内相のシェール・バハドル・ドウバ氏(49)が有力視されている。
この日の採決には下院の定数である205人の議員のうち202人が出席、83議席を持つNCPと20議席を持つ国民民主党(NDP)のほか、少数野党が不信任案に賛成した。
アディカリ政権は昨年11月の総選挙で「ネパールの土地、文化と調和した独自の共産主義」を訴えて勝利、立憲君主国ネパールで初めて発足した共産党政権として注目された。《共同通信》
【NATO】ボスニアに巡航ミサイル
米海軍は10日、北大西洋条約機構(NATO)の要請を受けて、ボスニア・ヘルツェゴビナ北西部のセルビア人勢力拠点バニャルカを攻撃目標に、アドリア海の米巡洋艦ノーマンディから、13発の巡航ミサイル、トマホークを発射した。ボスニア内戦に絡んで米巡航ミサイルが使用されたのはこれが初めて。
被害は不明だが、ボスニア和平交渉と並行して、軍事的圧力を強化するとのNATO側の強い意思を示したものとみられる。ミサイルの目標はバニャルカの強力な防空基地で米軍機などへの脅威除去が目的とされている。この作戦にロシアが強く反発するのは必至。
またボスニア、クロアチアなどの3カ国外相が8日にボスニア和平で原則合意した後だけに、今後の和平交渉に影害を及ぼす可能性もある。《共同通信》
【仏・シラク大統領】核実験を正当化
フランスのシラク大統領は10日、民間テレビTF1のインタビュー番組に出演し、5日に再開した南太平洋での核実験について、核抑止力の維持のため不可欠だと述べ、実験の継続をあらためて正当化した。大統領は予定する一連の実験は新小型兵器の開発が狙いではないと指摘した。実験再開後のシラク大統領のテレビ・インタビューは初めて。
大統領はこの中で実験を再開した理由について「わが国の抑止力を、実験済みでない兵器に頼るわけにはいかない」とし、核弾頭TN75のテストのための実験が少なくとも1回、核弾頭の威力検証のための実験が2回、核実験に代わるシミュレーター(模擬実験装置)開発のための実験が3−4回程度必要であると述べた。
大統領はこれまで一連の実験の回数を6−8回としていた。また大統領は核抑止力維持が必要な政治的理由について触れ、東欧、特に多くの核を所有するロシアの政治不安定を挙げた。
一方、大統領は核実験に強く反対しているオーストラリアとニュージーランドについて「彼らの本当の狙いは、南太平洋からのフランスの追い出しだ」と指摘。
オーストラリアに対し、フランス製品ボイコットをすれば対抗措置をとると反発し、実験強行で火がついたフランス領ポリネシアの独立の動きについては、国外からの扇動者がいると非難した。《共同通信》
【社会党】10月下旬に新党
村山富市首相は10日午後、首相公邸で社会党の久保亘書記長と約1時間半会談し、21日の臨時党大会を前に新党構想について協議した。
同席した渡辺嘉蔵総務局長によると、焦点の新党結成時期については、久保氏が提唱する10月下旬を目指すことで一致。具体的な日取りについては、首相が中東訪問から帰国する19日以降にあらためて話し合うことになった。
首相は「社会党始まって以来の解党−新党という大事業なので、委員長、書記長がよく話し合って立派に成功させよう。縮小ではなく、今を上回ることを考えければいけない」と述べ、党全体がまとまった形で新党に移行すべきだとの考えを強調した。
また内閣改造に伴う副委員長補充など党大会人事について、首相は「円満にやってほしい」と候補者一本化を図るよう要請、久保氏も努力する考えを伝えた。《共同通信》
【自民党総裁選】橋本龍太郎氏、小泉純一郎氏が立候補
自民党の総裁選挙は10日告示され、小泉純一郎元郵政相と橋本龍太郎通産相が立候補し、投開票日の22日に向け連立政権とのかかわりや、郵政民営化、国連常任理事国入りなどを争点に一騎打ちの選挙戦に入った。
両氏は立候補にあたって共同記者会見。村山連立政権への対応について小泉氏は「行財政改革、景気対策についてわが党の率直な意見を示した上で、一致できなければあえて連立離脱も辞さない」と強調した。これに対し橋本氏は「3党の信頼関係を大事にし、(連立の)枠組みの中でどこまで必要な政策を織り込めるかまず努力する」と述べるにとどまった。
国会議員、党員ともに幅広い支持を得ている橋本氏優勢は動かない情勢。「健全な批判勢力」を掲げる小泉氏がどれだけ批判票を集めるかが注目される。
有権者は国会議員313人(衆院203、参院110)と党員(党友含む)150万3966人。党員は1万人ごとに1票と換算され、計463票を争う。25日の党大会で新総裁が正式に承認される。
小泉氏は共同会見などで「小泉つぶしの動きが激しく、怒りを覚えた。逆に何としても立つという気になった」と強調。「かつての旧竹下派のように、(橋本)総裁支持グループだけで党内体制を固めるような一派支配があってはならない」として、橋本陣営の中核である旧小渕派主導の党内運営にくぎを刺した。
一方橋本氏は陣営の出陣式で「自民党の信頼回復」へ決意表明。「小選挙区制が導入された中で、今までのような派閥を考えてはやれない」と述べ、旧竹下派配復活批判に反論した。《共同通信》