平成1802日目

平成5年12月14日(火)

1993/12/14

【政府】コメ部分開放決定

政府は14日午前3時すぎから、臨時閣議を開き、コメ市場の部分開放を盛り込んだ新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)市場参入担当のドニ議長調整受け入れを正式決定した。

細川首相はこの後の記者会見で国内自給の主張を貫けなかったことを陳謝する一方「わが国は新ラウンドを失敗させることが断じて許されない格別の責任を担っている」と強調し、国民に理解と協力を要請。また「農業維新を実現する」として、今後の国内対策に全力を挙げる考えを表明した。

部分開放受け入れをめぐり最後まで調整が難航した連立与党第一党の社会党は、臨時閣議直前まで続けた党内論議の結果、調整案反対を確認しながらも(1)新ラウンドの成功(2)連立政権維持–の観点から、首相の決断を了承する方針を確認した。

しかし、コメ問題をきっかけに連立内部の足並みの乱れが顕在化したことで、15日に会期末を迎える臨時国会の延長問題や政治改革法案の取り扱いとも絡んで、細川政権は発足以来最大の試練に直面しそうだ。《共同通信》

細川護熙首相、無表情に謝罪の言葉

細川首相は二度誤った。コメ完全自給を貫けなかったことと、交渉経過を明かせなかったことについてー。コメ部分開放を決断した政府与党首脳会議と臨時・閣議は、14日未明にずれ込んだ。午前3時前からの会見で、首相は無表情に謝罪の言葉を繰り返しながらも“新兵器”を使って、テレビ映りを意識した新たなパフォーマンスを試みた。

細川首相はまず発表文を読み上げた。「水田と豊かに実った稲穂は日本列島の象徴」「完全自給を貫くことができなかった。誠に申し訳なく…」。立て板に水といった調子で読み続ける間、視線は前方に向けたまま。首相の左右の面前には、原稿を映すハーフミラーのセルロイド板が2枚立っていた。

コンピューターに入力された原稿を眼前に映し出す「プロンプター」と呼ばれる器材。首相官邸の記者会見で使われるのは初めてだ。原稿を追う目が、そのままテレビカメラの方を向くようにという配慮のようだ。しかし、首相は不自然ほど早口になり、表情も堅いまま。農家はもとより、消費者団体からも反発を買った今回の決断だったが、首相は「多くの国民の方々からのご支援は、わが国の立場を主張する上で大きな支えになった」と大見えを切った。

細川首相が柔らかい語り口を取り戻したのは約15分の朗読を終えて、セルロイド板が取り外されてから。「総理の対応に『ウソつき』という批判があるが」という厳しい質問に対し、首をひねりながら「最大限の努力をした結果。おおむね国会決議の趣旨に沿ったもの」。国会答弁とほとんど変わらない受け答えだったが、ようやく“肉声”が感じられた。《共同通信》



【社会党】連立維持を重視

社会党は14日未明の臨時中央執行委員会で、コメ部分開放の調整案に対し「ウルグアイ・ラウンド成功と連立政権参加の立場から、細川首相の判断を了とせざるを得ない」との見解をまとめ、政府の調整案受け入れ決定に従うことを決めた。

13日午後から断続的に続いた中執委や両院議員総会の論議の中では、「閣僚引き揚げも辞さずに調整案反対を貫くべきだ」との強硬論と調整案容認論が対立し、分裂含みで同党は大きく揺れたが、ひとまず連立政権維持を重視することで決着が図られた。

しかし、農水部会(辻一彦部会長)が「執行部の調整案受け入れ了承は断じて容認できない」との抗議声明を発表するなど、今後「離党」などによる抗議行動も予想され、コメ問題をめぐる社会党内の混乱はなお続きそうだ。

村山委員長は14日午前1時半すぎから党本部で開かれた両院議員総会で、中執委の結論として①これまでの党方針に照らし調整案には反対する②しかし細川政権は政治改革断行と景気対策に全力を挙げており、ウルグアイ・ラウンド成功と連立政権参加の立場から、調整案受け入れの首相判断を了とせざるを得ないーと報告、了承を求めた。

これに対し反対派は「認めることはできない」と厳」しく抗議したが、中西績介議長が一方的に「委員長一任」と総会打ち切りを宣言し、混乱のうちに両院総会は散会となった。《共同通信》

【自民党・河野洋平総裁】内閣の姿勢糾弾

自民党は14日未明、コメ部分開放の政府決断に対し「国会決議に反する行為で、細川内閣の姿勢を強く糾弾する」との党声明を発表するとともに、河野総裁が記者会見し、交渉の当事者である羽田外相と畑農相の責任を国会の場で追及することを明言し、両閣僚の不信任案提出の構えを示した。同党は午前の役員会で、不信任案提出問題の対応を四役に一任した。

河野氏は細川内閣の新多角的貿易交渉(ウルグアイー・ラウンド)への対応について「交渉が限られた人たちによって進められ、政治家が決断すべき問題なのに内容すら知らなかったことは遺憾だ」と厳しく批判し「立法府、国民とりわけ農民に対し不誠実。裏切られた、うそをつかれたという思いが一番強いのは最終結果までの不透明さによる」と、交渉の進め方に不満を表明した。

また河野氏はコメ問題を主に日米二国間でまとめていったことを批判し「宮沢内閣の時は“マルチ(多国間)の場で交渉するのが大事だ。二国間ではやらない”と言っていた」と指摘。さらに今回の交渉の結論では地球上の人口爆発の問題や、環境問題について対応できていないと非難した。《共同通信》

【細川護熙首相】コメに続き政治改革を

参院予算委員会は14日午前、第二次補正予算案をめぐって審議を続行した。細川首相はコメの部分開放受け入れについて「長い間懸案だったウルグアイ・ラウンド農業交渉の方向性をわが国が示せたことは世界経済発展のために大変大きい」と強調。「構造的課題に思い切ってメスを入れるのが内閣の歴史的使命であり、政治改革法案についてても参院で一日も早く成立させることを強く期待する」と述べ、コメ決着を契機に政治改革なども進展を図る考えを示した。

山花政治改革担当相はコメの部分開放について「(社会党は)厳しい選択をするに当たり、今後の国内農業対策をこの政権の中で主張していく決意を明らかにした」と述べ、連立政権にとどまる考えを強調した。

首相は、東京佐川急便からの1億円借金問題で「(佐川の)強引な商法は承知しているが、付き合いの始まったころはそれほど意識していなかった」と弁明した。自民党の大木浩、宮崎秀樹両氏の質問に答えた。《共同通信》

【連立与党】国会会期延長を申し入れ

連立与党は14日夕、今国会の会期幅を交年1月29日までの45日間延長するよう衆、参両院議長に申し入れた。政治改革法案の今国会内成立に向けた措置、与野党は15日の会期末を迎え、大幅延長の是非をめぐり大詰めの攻防を展開する。

連立与党は、大幅延長に慎重論のあった社会党を含め、1月末までの越年延長で足並みをそろえた。15日の衆院議運委で採決、同夜に予定される衆院本会議で議決する方針だ。

ただ、自民党は森幹事長が大幅延長に慎重な土井衆院議長と国会内で会談、与党の方針を強く批判するなど反発。コメ部分開放受け入れ決定に伴う混乱を理由に羽田外相ら関係閣僚の不信任決議案提出の構えをちらつかせていることから、連立与党はぎりぎりの国会運営を迫られよう。《共同通信》

【政界談話室】

○…14日未明のコメ市場開放の記者会見で“新兵器”の「プロンプター」を使った細川首相は、朝の閣議で畑農相らに「(原稿を見ない)首相は記憶力抜群だと役所でも評判でした」と冷やかされて苦笑い。この新兵器はハーフミラーの原理で、演説をする側からは原稿の文字が見えるが反対側からは素通しの透明の板にしか見えない。クリントン米大統領らが使っているが、日本ではなじみがないだけに閣議でもひとしきり話題に。コメ問題では自民党などから「ウソをついた」「隠した」と批判された首相だけに、せめて「顔の見える政治」を演出してみせたかった?

○…この日、自民党の渡辺元外相が都内で講演。政治改革が年内不成立なら責任を取るとの細川首相の発言を持ち出し「こじきと大臣は三日やったら辞められない」と過激発言。次にはコメ問題で大荒れの社会党を「結局は分裂しない。夢にも見たことのない政権に入って、いまやうれしくって眠れない。いまの人が辞めれば次はおれだという大臣病患者が自民党以上にいる」とボルテージは上がる一方で聴衆は大爆笑だったが、いまや滑り落ちる大臣の座もない野党の大幹部だけに、悔しさいっぱいのうさ晴らし。《共同通信》

【ウルグアイ・ラウンド】最終決着

関税貿易一般協定(ガット)のサザランド事務局長は14日午後、新多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)の最終合意案を参加国に提示した。合意案は(1)農業分野の包括関税化と特例措置の新設(2)ガットを母体にした多国間貿易機構(MTO)の設立(3)貿易紛争処理機能の強化(4)サービス貿易のルール導入–など貿易の自由化と新たな国際ルールを確立するための措置を盛り込んだ。

米国と欧州共同体(EC)の閣僚級協議を最後に各国の交渉は事実上終わり、115カ国が参加した新ラウンドは1986年9月の交渉開始以来7年3カ月で事実上決着した。《共同通信》

【国連・ガリ事務総長】日本の常任委入りを支持

18日からの日本、韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)歴訪を前に、ガリ国連事務総長は14日、日本人記者団と会見し、個人的意見としながらも「日本が安全保障理事会の常任理事国になることは国連の利益になることである。これは私の長年の考えだ」と述べ、日本の常任理事国入りに強い支持を表明した。安保理改革問題が国連内で焦点になって以来、事務総長が日本の常任国入りを明確に支持したのは初めて。

また、事務総長は北朝鮮訪問に当たっては、ソウルから板門店を通過して陸路で平壌入りし、平壌から東京に空路戻る計画であることを明らかにする一方、核査察問題では、「北朝鮮の見解を聞き、私のアドバイスを伝える」と語り、査察問題の調停役でなく、融和的な立場での意見交換を行う方針であることを強調した。

事務総長は日本訪問の理由について「日本は国連の主要国の一つであり、国連との関係強化を実現するため」と説明。日本の国連への貢献の在り方に関しては、平和維持活動(PKO)への兵員提供に関する日本の憲法上の制約に理解を示した上で、輸送、警察、技術、環境などの各分野で貢献できる可能性があると指摘し、日本の一層の協力を求めた。

さらに事務総長は安保理の改革は加盟国が総会で決定する事項で、事務総長の決定事項ではないと述べながらも「日本が常任理事国になることは私の希望だ。これは私がエジプトの外務担当国務相時代から言い続けてきた。日本が国際関係で大きな役割を果たすのは国連の利益になる」と、日本の常任理事国入りへの期待を表明した。《共同通信》

【ヴェルディ川崎】調布移転を白紙撤回

サッカーのJリーグは14日、東京都内のホテルで実行委員会を開き、1997年に川崎市から調布市への本拠地の移転を表明した人気チーム、ヴェルディ川崎の計画を日紙に戻すよう勧告、川崎もこれを了承して、計画は白祇撤回となった。

これで今月初め、川崎の親会社である読売新聞社・渡辺恒雄社長が「ヴェルデイはいずれ東京に移る」と発言して以来紛糾した川崎の本拠地移転問題は一応決着した。しかし、川崎側では将来的に東京移転の希望を捨ててはおらず、数年後に再燃する可能性も残された。

この日の実行委ではJリーグ発足の基本理念に戻り、ホームタウン(本拠地制)の制度を確認することで一致。川渕三郎チェアマンも「川崎市民の納得いく形で川崎が文書を理事会に提出、事態収束に努力してほしい」と語った。

これを受け、川崎市には森下源基・川崎副社長、調布市には小川一成同社長がそれぞれ事情説明に出向き、謝罪とこれまでの経緯を話して両市の理解を求めた。最終的には21日に開かれるJリーグ理事会に諮られ、決着する。《共同通信》



12月14日のできごと