平成1578日目
1993/05/04
この日のできごと(何の日)
【カンボジア日本人文民警察官死傷事件】
国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)当局者によると、パンティミエンチェイ州の国道691号で4日午後0時15分(日本時間同2時15分)ころ、UNTAC軍事部門のオランダ海兵隊に護衛されてパトロール中の日本人文民警察官5人がポル・ポト派とみられる10人以上の武装グループに襲撃された。
岡山県警出身の高田晴行警部補(33)が死亡、T・石川県警巡査部長(32)、Y・宮城県警警部補(37)の2人が重傷を負った。また神奈川県警のK警部とS巡査部長の2人が軽傷を負った。
カンボジアの国連平和維持活動(PKO)で日本人が殺されたのは4月8日に国連ボランティアの中田厚仁さん=当時(25)=に続いて2人目。政府派遣のUNTAC要員に犠牲者が出たのは初めて。
92年6月のPKO協力法成立の際に決まった日本一の派遣5原則では、紛争当事者間で停戦合意が成立しているなどの原則が崩れた場合には「日本のPKO要員は撤収できる」となっており、今回の事件で改めて日本政府の対応が問われることになろう。
T巡査部長とY警部補は同日午後5時40分(日本時間同7時40分)、バンコク市内のタイ空軍プミポン病院に収容された。2人は一時死亡したと発表されたが、生存しており、治療中であることが確認された。T巡査部長は頭や腹部を、Y警部補は背中などを撃たれたもよう。2人とも意職があり、応答できる状態という。文民警察官に同行のオランダ海兵隊員5人も負傷した。
UNTAC報道官によると、日本人文民警察官はオランダ海兵隊員の護衛で車6台に分乗してパンテイミンエンチェイ州の国道691号をプンクからアンピル方面に移動中だった。先頭のトラックがロケット砲攻撃を受け、車列が停止したところへ付近に潜んでいた武装グループが小火器を連射して襲いかかった、という。
バンコクの空軍プミポン病院関係者によると、オランダ兵は防弾チョッキを着用していたため軽傷で済んだが、日本人は防弾チョッキを着けていなかった。《共同通信》
◇
政府は4日、カンボジアでの日本人文民警察官死傷事件に大きな衝撃を受けており、事態を重視した河野官房長官らが同夜、首相官邸で緊急に対応を協議した。その結果、事件の真相究明と再発防止に政府一体で取り組むため、河野長官を本部長とする対策本部の設置を決めた。5日午前、初会合を開く。
河野長官は4日深夜の記者会見で、日本のカンボジアにおける国連平和維持活動(PKO)への今後の対応について①この事件によって停戦合意が崩れたとは認識していない②従って、現段階での自衛隊の施設部隊や文民警察官の撤収は考えていないーとの判断を示した。
しかし、今月中旬に予定している文民の選挙監視要員派遣に影響を与えることは確実とみられ、今後のPKOの在り方も見直しが迫られそうだ。
河野長官は、会見で今回の事件について「極めて深刻な事態」との認識を示すとともに「われわれのできる限りの事実の究明、再発防止に努める」と言明。国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)に重ねて要員の安全確保を申し入れると同時に、国際平和協力本部や外務省、警察庁などの担当者を現地に派遣することを明らかにした。
5日の政府対策本部初会合では今後のカンボジア情勢とともに今月12日に予定されている選挙監視要員の派遣時期の見合わせも検討されるもようだ。選挙監視要員は自治体職員など50人の派遣を予定していたが、4月末で既に10人程度が辞退している。さらに今回の事件で辞退者が出てくることが十分予想される。
河野長官は会見で、殺害された高田警部補に深い哀悼の意を述べるとともに「悲しみを乗り越えて進むことが故人の行為を無にしない道ではないか」として、日本のPKOを続行することの意義を強調した。《共同通信》
昭和64年1月1日〜このサイトをご覧頂いている日の一週間前まで、すべての日の「何らかの」できごとを記しています。
情報量が少ない日は随時加筆中です。
引用記事は名前、住所など一部修正の上、抜粋してあります。
外国の方のお名前、地名などは現時点で一般的に通じるものに書き換えています。(例・ロシアのプーチン氏はかつてプチン氏と表記されていました)
古い記事の多くは「書き写し」のため、誤字脱字が多数あります。見つけ次第修正しています。
【森喜朗通産相】ブルネイを訪問
ASEAN(東南アジア諸国連合)3カ国を歴訪中の森喜朗通産相は4日、日本の通産相として初めてブルネイを訪問し、ボルキア国王を表敬訪問したのに続きラーマン産業資源大臣と会談した。
ボルキア国王を表敬した森通産相は、ブルネイが日本に対してLNG(液化天然ガス)を安定供給していること、4月には今後20年間の供給に関して契約改定が成立したことに謝意を表明した。ボルキア国王も日本とブルネイはじめASEANとの緊密な関係強化に期待する意向を示した。
また、ラーマン産業資源大臣は森通産相に対し、同国の投資環境を改善するため日本からの助言を要請した。通産相は「大臣が来日される8月までに事務的に詰めて回答したい」と答え、専門家の派遣などによる調査、研究を行う考えを示した。
3カ国訪問を終えた森通産相一行は5日、シンガポールを経て同日夕帰国する。《北國新聞》
【後藤田正晴副総理】中国・江沢民国家主席と会談
中国を訪れている後藤田副総理兼法相は4日午前10時半(日本時間同11時半)から約1時間、北京市内の中南海で江沢民国家主席(中国共産党総書記)と会談した。
江主席は中国が進めている「社会主義市場経済」の現状や問題点を説明、民事上の法制面の整備が急務になっているとして日本側の協力を求めた。これに対し後藤田副総理は中国の改革・開放路線を支持する立場から、日本として法律整備の点でできるだけ協力する意向を表明した。
国際情勢で江主席は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核拡散防止条約(NPT)脱退問題に関連し「平和的解決を望んでいる。安易な制裁は矛盾を激化させるだけだ」と述べ、北朝鮮への経済制裁に懸念を表明した。
中国は3月の全国人民代表大会で社会主義市場経済を盛り込んだ憲法改正案を採択している。江主席は法律整備の具体的例として会社法制、有価証券法制などが必要との認識を示した。
社会主義市場経済政策に関連して、後藤田副総理が「宮澤首相も私も中国が軍事大国化するとは考えていないが、周辺諸国は不安を感じている」と述べたのに対し、江主席は「広大な国土で膨大な人口を抱えた中国は人口割からいえば他国と比べ大きな軍事費とは思っていない。国是としては一経済重視だ」と述べ、軍事大国化を否定した。
カンボジア情勢について後藤田副総理が中国側の協力を要請したのに対し、江主席は「武力による解決には賛同できない」と述べるにとどまった。《共同通信》
【国連】「執行部隊」が始動
緊急人道援助確保のためソマリアに約5カ月にわたり展開した米軍主導の多国籍軍は4日、第二次国連ソマリア活動(UNOSOM2)に任務を移管、多国籍軍司令官ジョンストン米海兵隊中将からUNOSOM2軍事部門の司令官チェビク・ビア・トルコ陸軍中将への権限移譲式が行われた。
UNOSOM2は「最小限の武装」という従来の国連平和維持軍の在り方から脱皮し、自衛の範囲を越える強制力を持つ国連初の事実上の「平和執行部隊」となる。
中核の平和維持軍の規模は、最大時で5個旅団2万人と後方支援部隊8000人を加えた計2万8000人。文民スタッフ2800人も加え、国連平和維持活動(PKO)としてはカンボジア、旧ユーゴスラビアをしのぎ史上最大となる。
UNOSOM2の任務は停戦監視、治安維持、地雷除去、人道援助活動支援をはじめ、各勢力、一般市民の武装解除、難民帰還の実現、暫定統治機構の樹立と選挙による政権樹立の支援と多岐にわたる。
国内15勢力は既に暫定統治機構として「暫定国家評議会」の設置で合意、同評議会が選挙実施までの2年間の暫定機構となる。UNOSOM2を統括するジョナサン・ハウ国連事務総長特別代表は「95年初めに選挙が実施されることを期待する」と述べており、約2年間の駐留となるのは確実だ。《共同通信》