平成954日目

平成3年8月19日(月)

1991/08/19

【ソ連】クーデター

ソ連のゲンナジー・ヤナーエフ副大統領は19日早朝(日本時間同正午過ぎ)ゴルバチョフ大統領を「健康」上の理由で解任するとともに、同副大統領が同日から大統領に就任するとした「副大統領令」を発布した。 ヤナーエフ大統領は直ちに、同午前4時から6か月間ソ連全土に非常事態宣言を布告した。またこれとは別にアナトリー・ルキヤノフ最高会議議長は、20日から調印が予定されていた新連邦条約の再策定を命じた声明を発表した。

ゴルバチョフ大統領は今月4日からクリミア地方で休暇中だが、急激な健康悪化の情報は伝えられていない。解任は新条約による連邦権限の大幅な縮小や共産党の著しい勢力衰退に危機感を抱いた連邦政権内保守派と共産党指導部によるクーデター的な政権奪取を意味するのは明らかである。エリツィン・ロシア共和国大統領のウォシャノフ報道官は読売新聞の取材に対し、「国家クーデターである」との見解を表明した。

19日午前6時8分に国営タス通信が伝えたヤナーエフ氏の副大統領令は、ゴルバチョフ大統領が「その健康状態から大統領の職務遂行が不可能になった」としたうえで、ソ連憲法第127条7項の規定により大統領を解任、同氏が「大統領の職務を代行する」とした。昨年12月のヤナーエフ副大統領就任時に改正された憲法の同条項は副大統領が「不在あるいは職務執行が不可能になった場合、その権限を代行する」と規定している。

また、6時29分に伝えられたヤナーエフ氏の「各国元首、政府首班、国連事務総長にあてたメッセージ」は、19日からソ連全土に「6か月を期限」として非常事態を導入するとうたうとともに、「この期間、国内の全権はソ連国家非常事態委員会に移管される」として臨時政府の樹立を宣言。

あわせて「ソ連指導部声明」で同委員会が、バクラーノフ副首相、クリュチコフ国家保安委員会(KGB)議長、パブロフ首相、プーゴ連邦内相、スタロドプチェフ農民同盟議長、チジャコフ国家企業・産業建設運輸通信協会会長、ヤゾフ国防相、ヤナーエフ大統領代行によって構成されると発表した。

同委員会の決定は「ソ連」領内のすべての権力機関、行政機関、各級官僚及び市民によって完全に順守しなければならない」としている。《読売新聞》

モスクワでは19日、すべてのラジオ放送がクラシック音楽を流している。《読売新聞》

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クーデターの形でゴルバチョフ大統領を解任し、非常事態を宣言した「ソ連国家非常事態委員会」は、19日朝から報道機関を統制下に置き、政党活動禁止を宣言、モスクワなどに戦車を出動させ非常事態の強制執行に乗り出した。

これに対しエリツィン・ロシア共和国大統領ら急進改革派、独立志向の諸共和国は一斉に新政権との対決姿勢を打ち出し、市民や労働者の一部は、軍への抗議行動、抗議ストを始めた。

沿バルト地域では、リトアニア共和国ビリニュスで通信施設を占拠するなど強硬姿勢の軍と地元市民の大規模衝突も懸念され、ソ連は内乱に陥る可能性も出てきた。

ヤナーエフ大統領代行は同日夕「ゴルバチョフ氏はクリミアで療養中」と発表、新政権の合法性を主張したが、ブッシュ米大統領が「政変は超憲法的措置」と新政権不承認を示唆したのをはじめ、西側各国はそろって新政権に厳しい姿勢を打ち出し「緊急サミット」も検討されている。

6年半に及んだ「ペレストロイカ(立て直し)」を逆流させるソ連政変により、冷戦後新秩序を模索していた世界は、一転、緊張と混乱に直面している。

ゴルバチョフ大統領を解任、ヤナーエフ大統領代行のもとに設置された「ソ連国家非常事態委員会」は19日、戦車、装甲車を先頭に軍部隊を出動させ、モスクワやレニングラードを中心に、非常事態宣言を具体的な形で実施し始めた。すでに、改革派の軍人労組「シチット(声)」のビタリー・ウラジツェフ議長ら急進改革派指導者が逮捕されているという。

これに対し、急進改革派のリーダー、エリツィン・ロシア共和国大統領は同日、非常事態委員会の設置を「国家犯罪」と非難、同共和国領内では、同委員会は「効力を持たない」との共和国大統領令を布告、ぜネストを呼びかけた。また、同委員会設置に名を連ねた者の行動は「ロシア共和国刑法」に触れると指摘、全面対決の構えをみせている。

さらにエリツィン大統調は、ゴルバチョフ解任に関与したロシア共和国内のすべての軍と国家保安委員会(HGB)部隊に対し、原隊復帰を「命令」した。

一方、突然のゴルバチョフ解任にモスクワでは一部の市民たちが反発、中心部で戦車を取り囲み行く手を阻んだ。市民が最も多かった「赤の広場」一帯は軍が封鎖、デモ隊はロシア共和国ビルに向け移動、バスを横倒しにし、鉄骨を積むなとしてバリケードを築き始めた。目撃者によると、軍部隊は空に向け威聴射撃を行ったという。

モスクワでは、カリーニン大将が非常事態司令官に任命された。西シベリアの炭鉱でも、ゼネストの呼びかけが始まったという。《読売新聞》

ヤナーエフ大統領代行は19日夕、就任後初の記者会見を行い、大統領代行就任は暫定的なものであることを強調、大統領の直接選挙を行う考えを明らかにした。エリツィン大統領ら改革派のゼネスト呼びかけなど抵抗を示していることについて「非常事態委員会の創設は、新連邦加盟予定の9共和国指導者に連絡、全体としてその支持を得られていると考えている」とクーデター説に反論、エリツィン氏とも19日に連絡をとったと強調。ゼネスト呼びかけは「無責任な態度」とエリツィン氏を強く非難した。

注目のゴルバチョフ氏の動向については、「クリミニアで療養、静養中である。これまで長年にわたった無理がたたり、健康回復には時間がかかる」と述べた。しかし、具体的な病名は明らかにせず、「やがて報道陣の前に姿を見せるだろう」と述べるにとどまった。

だが、ロシア共和国最高会議筋は、ゴルバチョフ氏が20日予定されていた新連邦条約調印のため空路、モスクワ入り。空港で専用車に乗り込もうとしたところを拘束されたとの情報を明らかにしている。《読売新聞》

【米・ブッシュ大統領】ゴルバチョフ大統領の復帰支持

ブッシュ米大統領は19日午後、国家安全保障会議(SNC)スタッフなどと、ソ連保守派によるクーデターに関する詳細な情報分析を行った。

それを受け、大統領は「ソ連の事態を深く憂慮している。この誤った非合法行為はソ連の法律とソ連国民の意思を無視している」とヤナーエフ新体制を承認しない考えを示唆。「ゴルバチョフ大統領の復帰を支持する」というソ連新指導部に対する厳しい内容の声明を発表した。また、ロシア共和国エリツィン大統領への支持を鮮明に打ち出した。《読売新聞》

【東京株式市場】急落

ゴルバチョフ・ソ連大統領失脚というニュースを受けた19日の東京マーケットは、予期せぬソ連の政変に終日波乱の展開となった。株式相場はろうばい売りから急落、東証平均株価終値は前週末比1357円61銭安の2万1456円76銭と、史上5番目の下げ幅を記録した。《共同通信》



8月19日のできごと