平成670日目

平成2年11月8日(木)

1990/11/08

【イラク人質事件】74人が帰国

イラクでの拘束生活から解放された日本人人質、在留邦人計74人が8日午前11時14分、羽田空港着の日航特別機で帰国した。空港には各地から駆け付けた家族や会社関係者らが出迎え、イラク一のクウェート侵攻後3カ月以上に及ぶ労苦をねぎらった。

今回の解放は、イラクを訪問し、この日同じ飛行機で帰国した中曽根元首相、自民党代表団(団長・佐藤孝行幹事長代理)とフセイン大統領らイラク側との話し合いで決まった。しかしなおイラクには日本人人質と在留邦人計233人が残されており、全員解放にはなお時間がかかるとみられる。

現在国会で審議中の国連平和協力法案は廃案になることが確実になっており、人質問題を含む日本とイラクとの関係は新たな段階を迎える。一方で米国の対イラク強硬政策との兼ね合いもあり、政府は対応に苦慮しそうだ。

帰国後、人質ら代表5人と中曽根元首相らは空港近くのホテルで記者会見。中曽根元首相は「74人も帰国できたのは望外の幸せ。二陣、三陣の帰国実現に努力したいと述べた。また佐藤団長は、イラクとの交渉について「一点のりも約束もない」と、条件裏取引がなかったことを強調した。《共同通信》




【中曽根康弘元首相】「解放で取引」否定

イラク訪問を終え8日午前帰国した中曽根元首相と自民党代表団(団長・佐藤孝行幹事長代理)は、解放された邦人の代表とともに羽田空港近くのホテルで記者会見、人質解放交渉やフセイン・イラク大統領との湾岸危機解決をめぐっての話し合いの模様を明らかにした。

この中で中曽根氏は、フセイン大統領に対し、「まず第一にイラクの方で平和へのイニシアチブを取りなさい。人質(解放)のあとは、クウェートでイニシアチブを取り、平和への意思表示をすべきだ」と、クウェートからのイラクの撤退を強く申し入れたことを強調。

これに対しフセイン大統領は「アラブの枠組み」を主張、イスラエル問題との関連で解一決すべきだと繰り返したが、中曽根氏が「国連の傘」の下で解決の道を探るべきだとの考えを示したところ、最後は大統領も「うまくいくなら、国連が祝福するなら否定するものでない」と柔軟姿勢をのぞかせたことを明らかにした。

人質解放をめぐり何らかの条件や取引があったのではないかとの質問に対しては、中曽根氏は「双方は武力衝突をせず、平和解決ということを確認した。それ以上のものはない」と明言。佐藤氏も「政府が困るようなものはない。一点の曇りも、約束も全くない」と補足した。

今回のイラク訪問について米国のフィッツウォーター大統領報道官が批判していることに関して中曽根氏は「そんな(批判されるような)ことはない」と反論。湾岸危機の平和的解決についても「事態は流れつつある。そういうことは一挙に解決するチャンスでもある。友好国と連絡を取り合いながら、やるべきことをやっていけばいい」との考えを明らかにした。

イラク、クウェートに残された邦人の解放については「第二陣、第三陣の帰国者をつくる努力をしないといけない。相当な決意をもって環境をつくって、帰す努力をしないといけない」と述べ、引き続き努力していく考えを示した。《共同通信》

【国際平和協力法案】廃案が確定

国会は10日に会期末を控えた8日、与野党幹事長・書記長会談を軸に国連平和協力法案の最終処理と新たな国際貢献策で大詰めの協議が行われ、協力法案の廃案が確定した。

しかし同法案の廃案確定を受け、今後の焦点となる新貢献策をめぐる折衝が難航。「国連を中心に人的な貢献も必要」との基本認識では一致したが、具体的な内容をめぐって社会、公明、民社の野党三党間の調整がつかないまま、自社公民四党による折衝が決裂した。

このため、自民、公明、民社の三党は社会党を除く三党だけで決着を図り、新貢献策の大枠で最終的に合意した。野党第一党の社会党を抜きにした異例の決着は、今後の政治状況にも大きな影響を及ぼすのは必至だ。

同日深夜行われた自民、公明、民社三党の幹事長・書記長会談で合意された新貢献策の骨格は①憲法の平和原則を堅持し国連中心主義を貫く②自衛隊とは別個に、国連の平和維持活動(PKO)に協力する組織を創設する③国連決議に関連した人道的救援活動、災害救助活動にも従事できる—が主な内容で、この原則に基づき「立法作楽に着手、早急に成案を得る」ことでも一致した。

政府、自民党はこの合意を踏まえ、早急に具体案の法案化作業を進め、12月10日にも召集される次期通常国会で早期成立を目指す。

午後3時すぎから開かれた自社公民党の幹事長・書記長会談で、自民党の小沢幹事長は協力法案を廃案とする意向を公式に表明、廃案後の新たな貢献策の重要性を強調し、直ちに協議に入るよう提案した。

これを受けて、与野党四党の幹事長・書記長会談、野党各党の書記長会談が断続的に開かれ、野党三党間で貢献策の骨格をまとめる段階まで折衝が進められた。しかし社会、公明、民社三党の調整は、国連平和維持活動への協力の具体的な内容をめぐって不調に終わり、四党による与野党折衝は決裂した。

四党協議決裂を受け、自民、公明、民社三党は、社会党抜きで幹事長・書記長、国対委じ一員長会談を重ねる一方、政府、自民党は首脳会議や四役会議、総務会などを相次いで開き了承手続きを取った。この結果、9日午前1時すぎから開かれた三党の幹事長・書記長会談で最終合意に達した。《共同通信》

【海部俊樹首相】50カ国の代表と会談へ

外務省は8日、即位の礼に出席する各国代表と海部首相の会談日程を発表した。それによると首相は12日の即位の礼を挟み迎賓館で11、13、14、15日の4日間に約50カ国との代表と会談する予定。《共同通信》

【米・ブッシュ大統領】米軍10万人の増派決定

ブッシュ米大統領は8日午後、ホワイトハウスでチェイニー国防長官とともに記者会見し「砂漠の盾」作戦でサウジアラビアに展開している米軍に攻撃作戦能力を備えさせるため大規模な部隊増派を決めたと発表した。増派の規模は明らかにされていないが、軍事関係者によると10万人規模とみられ、既に派遣されている23万人と合わせると年末までには30万人以上の米軍部隊がサウジアラビアと湾岸地域に展開することになろう。

チェイニー長官は、増派部隊についてドイツ駐留米軍の機甲師団や米本土からの陸、海、海兵隊各部隊で構成されると述べた。

増派を決断した理由について大統領は、湾岸に展開する米軍を中心とした多国籍軍の安全を確保し、国連安保理諸決議実現で妥協をしないという強い決意をフセイン大統領に示すためだと説明した。

また大統領は、湾岸危機の平和解決を望む姿勢に変わりがないことを強調し、この増派によってフセイン・イラク大統領がイラク軍のクウェートからの無条件全面撤退などを要求する国連安保理決議に従わざるを得ないと判断すれば「ますます結構なことだ」と述べた。

ムバラク・エジプト大統領が対イラク制裁効果を見定めるためあと2、3カ月待つべきと主張していることについて「同じ気持ちだ。制裁が2カ月以内に効果を表すよう望む」とし、イラクの挑発がない限り、少なくとも年末までは軍事行動に出ないことを示唆した。

しかし軍事行動の選択肢は常に捨てないとし、軍事行動に当たっては国連の承認を求めることが好ましいが、承認なしでも攻撃を開始する「権利はある」と強調した。《共同通信》




11月8日のできごと