平成653日目

平成2年10月22日(月)

1990/10/22

【熊本県警】オウム真理教施設を捜索

新興宗教団体オウム真理教(麻原彰晃教祖、信者約5000人)が熊本県波野村に建設中の修行キャンプ場用地取得に絡み、熊本県警は22日午前7時すぎ、捜査員400人を動員して、同キャンプ場や静岡県富士宮市人穴、教団総本部など1都4県の教団関係施設計12カ所を国土利用計画法違反、公正証書原本不実記載容疑で家宅捜索するとともに、同容疑で教団顧問弁護士のA容疑者(30)=教団総本部内=を東京・羽田空港で逮捕した。

同県警は他の信者、不動産業者ら計4人についても逮捕状を用意している。また、山梨県警も信者によるナンバープレート偽造事件で、同時に約60人の捜査員で教団総本部を捜索した。同教団に捜査のメスが入ったのは初めて。捜索でのトラブルはなかった。

オウム真理教は昨年11月に起きた横浜市の坂本堤弁護士一家3人失跡事件との関係が取りざたされているが、教団側は関与を強く否定。捜査当局も今回の強制捜査は失跡事件とは関係ないとしており、キャンプ場用地取得をめくる資金の流れや、教団運営の実態などの解明を進める方針。

家宅捜索を受けたのは、富士宮市の教団総本部、波野村のキャンプ場のほか、東京都世田谷区赤堤、東京本部、大分県直入郡荻町の大分営業所、福岡県博多区博多駅前の関連会社など。

調べによると、A容疑者は信者らと共謀、同教団がことし5月下旬、熊本県波野村中江の土地5.9ヘクタール(登記簿上の面積)を取得した際、1ヘクタール以上の土地取引に義務付けられている県知事への届け出をせず、国土利用計画法23条に違反した疑い。

さらに、取得は前の所有者の負債を肩代わりする形で行われ、実質的には売買なのに、所有権移転登記に「贈与」と記載させた疑い(公正証書原本不実記載)。

山梨県警が実施した家宅捜索の容疑事実は今月7日ごろ、同教団信者(33)=逮捕済み=が富士宮市の総本部内でトラックのナンバープレートを偽造した疑い(道路運送車両法九八条違反)。《共同通信》


熊本県・波野村のオウム真理教修行キャンプ場。霧が立ち込める中22日午前6時半すぎ、熊本県警の警官を乗せたマイクロバスなど5台が林道を抜けて近くに到着した。

整列した警官隊から約30メートル離れた入り口で、若い信者ら約20人が見守る。7時すぎ警官隊約50人が歩いて入り口に向かい、信者に捜索令状を示したが「ノーコメント」。

7時7分、信者が鉄パイプ製のゲートを開け、警官が中へ。信者は抵抗する姿勢は見せない。詰め掛けた100人を超える報道陣に「オウムの土地です。中に入らないで」と信者の一人が大きな声を上げた。

若い信者の一人は「この世はふびんだと感じた。そういう世の中から離れるために修行がある。事前に警察が来るから進備しておきなさいと幹部から指示を受けた」と話した。場内では特にトラブルもない様子で、信者たちが、忙しく動き回る警察官を監視していた。《共同通信》


静岡県富士宮市の富士山ろくにある総本部でも熊本、山梨、静岡三県警の捜査員約200人がバスや十数台の捜査車両で姿を見せた。

午前7時すぎ、捜索に。すぐ近くの建物の入り口で、トレーナーや、ジャージーを着た若い信者ら2、30人が「宗教弾圧をやめろ」の大合唱する中、約30分後やっとたたんだ段ボール箱を抱えた捜査員が敷地内に入ったが、建物入り口で「暴力ではないか」と抗議する信者らと押し問答する一幕もあった。《共同通信》

【オウム真理教・麻原彰晃教祖】「(強制捜査は)宗教弾圧だ」

熊本県警などの強制捜査を受けたオウム真理教の麻原彰晃教祖は22日午後5時半から、捜索が終わった静岡県富士宮市の教団総本部で約1時間にわたり記者会見し「オウムを追放しようとする明らかな宗教弾圧だ」と、警察を厳しく批判するとともに「日本が第二次世界大戦に突入した時にも宗教弾圧が行われた。マスコミはこのことをもっと真剣に考えるべきだ」などとオウム真理教をめぐるマスコミ報道にも不快感をあらわにした。《共同通信》




【プロ野球・沢村賞】近鉄・野茂英雄投手

プロ野球の沢村賞選考委員会は22日、東京都内のレストランで開かれ、近鉄のルーキー、野茂英雄投手(22)を1990年受賞者に選んだ。

47年に制定された沢村賞は昨年からパ・リーグの投手も選考対象となり、野茂は初のパからの受賞者となった。新人では66年の堀内(巨人)以来、24年ぶり5人目。表彰式は31日に行われ、賞金300万円が贈られる。

沢村賞はプロ野球草創期のエース、故沢村栄治投手(巨人)を記念して設けられた賞。野茂は今季、シーズン21試合二けた三振のプロ野球新記録を樹立したのをはじめ、最多勝利、防御率1位、勝率1位、最多奪三振の四タイトルを獲得した。

選考委員会の別所毅彦座長は「先発、完投で三振をいっぱい取る。沢村さんのイメージにぴったりの投手が出た。5人の委員の満場一致」と説明した。《共同通信》

【中山太郎外相】国連決議、憲法枠が歯止め

国会は22日、国連平和協力法案に盛られた自衛隊の海外派遣問題の論戦の舞台を参院予算委員会に移し、午前10時すぎから、社会党の佐藤三吾、矢田部理両氏が政府の一見解をただした。

中山外相は、国連平和協力隊への参加という形での自衛隊海外派遣の歯止めについて「国連決議が最大の問題点で、また武力による威嚇、武力の行使はやらないという憲法の枠内が2つの原則だ」と述べ、国連決議と同法案に盛られた武力の不行使の原則が自衛隊海外派遣の無原則拡大の歯止めになるとの考えを表明した。

矢田部氏が、19日の衆院予算委員会で政府が示した統一見解について「国連決議を踏み外し、何でも協力できることになる」と撤回または出し直しを求めたのに対して答えた。

また外相は湾岸諸国に展開している多国籍軍への資金援助の法的根拠について「国連安保理決議を受けてイラク軍のクウェートからの撤退、外国人人質の解放などで実効性確保のため支出した」と述べた。

海部首相は、①経済制裁の実効性が得られない場合、国連は次の段階として軍事制裁を決議する。そこに入る前に経済制裁によるイラク軍撤退の実効性を確保するのが重要②米国だけでなくヨーロッパ、アラブ、アジアの一部の国も国際社会の大義に基づき多国籍軍をつくっている—と指摘、米軍を中心とする多国籍軍への協力の正当性を強調した。

矢田部氏の統一見解出し直し要求に対して外相は「出し変える用意はない」と拒絶した。《共同通信》

【海部俊樹首相】自衛隊の装備拡大ない

参院予算委員会は22日午後、国連平和協力隊に部隊参加する自衛隊の装備や武器の範囲をめくって、野党側が政府の姿勢を追及した。海部首相は「海上、航空の輸送業務に使う自衛隊の装備は補給艦、輸送機以外には考えていない」と述べ、野党側が懸念を示した護衛艦などの派遣に発展させることはないことを明言した。公明党の峰山昭範氏が「国連平和協力法案では、自衛隊は保有するすべての装備を持って行ける書き方だ。護衛艦も派遣できる」と、法案上の歯止めがないと追及したのに対し答えた。

自衛隊員の携行する武器について、社会党の矢田部理氏がただしたのに対し、首相は「法案に明文上の規定はない」としながらも①法案2案で武力の行使を認めていない②3条で平和目的に任務を限定している—などを挙げ、小型武器限定の歯止めは掛かっていると強調した。

さらに、首相は携行武器の歯止めについて、同法案を審議する国連平和協力特別委員会での答弁で明確にするとの考えを示した。

一方、中山外相は武器使用について「あくまで個人の判断だ」と述べ、平和協力隊員の現場での判断にゆだねるとの立場を表明した。

共産党の上田耕一郎氏が新たな国連決議がないまま米軍を中心とする多国籍軍がイラクとの武力衝突に突入した場合、平和協力隊が輸送協力などをできるかどうかをただしたのに対し、外務省の柳井条約局長は「法律的には武力行一使と一体となる行動にならない限り協力できる」と肯定的見解を示した。

しかし工藤内閣法制局長官は「国連決議660、661の実効性を確保するため(の行動)と読めないなら、この法律は動くはずはない」と消極論を展開。結局首相が「法制局長官の述べた通りだ」と答えたが、外務省と法制局の答弁が食い違いを見せた。

また、社会党の佐藤三吾氏が、昭和29年の参院本会議での自衛隊海外出動禁止決議に関連し、参院としての有権的解釈を出すよう求めたため、審議は中断。理事懇談会で協議した結果、平井予算委員長が土屋議長に対し早急に結論を出すよう要請し、議長も応じたため収まったが、この間、約2時間半にわたり、審議は中断した。

質問にはこのほか宮沢弘(自民)、乾晴美(連合参議院)、足立良平(民社)、下村泰(参院ク)の各氏が立ったが、しばしば紛糾、中断し、審議は深夜に及んだ。《共同通信》

【イラク・フセイン大統領】仏人質の全員解放を指示

国営イラク通信によると、フセイン・イラク大統領は22日、国民議会に対し、フランス人人質全員の解放を討議するよう要請するメッセージを送った。大統領はこの中で「(討議要請は)フランスおよびイラクに友好的な各国との友好関係維持へのイラクの意思を確認するものであり、特にブッシュ(米大統領)の攻撃的手段とイラクに対する武力行使を拒絶する自由なフランス国民の姿勢を評価した措置だ」と述べた。

事実上の大統領命令であり、戦略拠点に置かれた「人間の盾」を含むフランス人人質約330人全員が近く解放されることはほぼ確実。

外交筋は今回の措置について、クウェートから無条件撤退した後ではイラクに対するあらゆる形の譲歩が可能となると示唆したミッテラン大統領の国連演説などフランスの独自の外交姿勢をイラク側が評価すると同時に、これを西側のイラク包囲網の分断のテコにしようとのイラク側の戦術とみている。

外交筋は特に、同日NHKで放映されたインタビューでフセイン大統領が日本の姿勢を対米追従と非難し、戦争の危険が去るまで日本人人質の解放はない、と対照的な発言をしたことに注目している。

ミッテラン大統領の国連での提案は①イラクのクウェート無条件撤退②クウェートでの自由選挙実施③パレスチナ問題を含む中東和平国際会議開催④中東の包括的軍縮交渉―などを骨子としており、危機回避後のイラク・クウェート交渉を通じたクウェートのイラクへの譲歩などをにおわせている。

イラクは直ちにこれを歓迎する姿勢を表明。サウジアラビアのスルタン国防相も21日、初めてフランス提案を高く評価する意向を示した。

フランス案はこれまでに先進国側から入された唯一の和平へのイニシアチブだが、イラクに人質をとられているフランス以外の各国は政治的問題を棚上げにした民間中心の“人道”代表団のバグダッドもうでを活発化させ、イラク側から小出しの人質解放を勝ち取ってきた。

日本からも佐藤文生前代議士を団長とする日本アラブ友好協会代表団、猪木寛至(アントニオ猪木)参院議員らが相次いでイラクを訪問、人質解放をイラク側に訴えている。《共同通信》

【フランス】国連決議順守変わらず

イラクのフセイン大統領がフランス人人質全員解放の方針を打ち出したことについて、エリゼ宮(フランス大統領府)スポークスマンは22日、「何が発表され、あるいは行われようとも、国連安保理決議の完全な実施に取って代わることはできない」と述べ、フランス人人質が解放されても、国連決議順守を基本にした、フランスのペルシャ湾岸危機に対する政策に変化はない、と言明した。

だがイラクが23日中にも開く国民議会でフランス人人質の全員解放を了承することはほぼ確実で、フランスの国連決議順守表明にもかかわらず、イラクの“分断戦術”が対イラク包囲網に微妙な影響を与えることは間違いない。

イラクのアル・ハシミ駐仏大使は22日、フランスのテレビに対し「国民議会は一両日中にイラクの戦略拠点にいるフランス人も含め、人質全員の解放を承認するだろう」と言明した。

イラクがフランス人人質の全員解放に踏み切った場合、フランスの立場は政治的に微妙となることが予想される。

イラクは22日、英、米人人質の病弱者など一部解放の可能性を示唆したほか、スペインの王党派日刊紙ABCも同日「イラク政府との契約が終了したソ連人労働者は、望む時に立ち去ることができる」としたサレハ・イラク国民議会議長の発言を報じた。《共同通信》




10月22日のできごと