平成588日目

平成2年8月18日(土)

1990/08/18

【イラク】国内の外国人を「人質」に

国営イラク通信は18日未明、サレハ・イラク国民議会議長名の声明を発表し、イラクに対する戦争の脅威がなくなるまで、国内にいる米国、英国など「攻撃的な国」の外国人を拘束する、と発表した。この中に日本人が含まれるのかどうかは不明。

クウェート侵攻以降、外国人の出国を厳しく制限してきたイラクが、初めて米英人などを“人質”として利用する意図を公式に明らかにしたもので、国際社会で強まる対イラク経済制裁、軍事圧力への対抗手段とみられる。各国が激しく反発するのは必至で、“人質”問題は今後のペルシャ湾情勢の展開に大きな影響を与えそうだ。

同声明は、フセイン大統領が議長を務める革命評議会が開かれた直後に出された。

それによると「イラク国民は、侵略戦争の脅威にさらされる限り、これら攻撃的な国の国民を(イラクの)客とすることを決定した」と述べた。特に米国に対しては「イラクに敵対視、不正な立場をとり道を誤った」と名指しで非難した。

またアラブ諸国の中で親米的姿勢をとるエジプト、サウジアラビアなども対象に含まれる可能性がある。クウェート侵攻直後に発足したイラクの“かいらい”政権である「クウェート暫定自由政府」は5日、経済制裁の動きに対し「国内に自国民が在留し、資産があることを忘れるな」と警告。

また米、英国人がクウェートからバグダットに移送されたことなどから、イラクが西側外国人を人質代わりに利用するのではないかとみられていたが、これまでイラク側は「予防的措置をとった」(アジズ・イラク|外相)として明確な狙いは示していなかった。

クウェートには、米国人が約2500人、英国人が約4000人、日本が約270人おり、またイラク国内に西側各国とも数百人が残ったままで出国できない状態になっている。《共同通信》




【米・ブッシュ大統領】イラクの人質作戦を非難

ブッシュ米大統領は18日、イラク政府がイラク、クウェートに残留する米国人約3000人を含む外国市民を軍事施設に収容すると発表したことについて「全く受け入れられない」と述べ、イラク政府に対し直ちに外国人の出国を認めるよう要求する一方、自国民をイラクに拘束されている他の諸国と協議し新たな対イラク措置を検討する方針を表明した。

米メーン州ケネパンクボートで休暇中のプッシュ大統領に同行するホワイトハウス当局者によると、米軍予備役招集についての大統領決定は一両日中にも行われる見通し。

招集の規模は、最大8万人にも及ぶとの報道もあり、いわゆる「人質問題」を絡めた湾岸情勢は一段と緊張の度を加えよう。

イラク国民議会議長が外国人市民を事実上の“人質”とする声明を発表して以来、半日沈黙していたプッシュ政権は、18日のイラク政府の「外国人家族に関する声明」を受け、フィッツウォーター大統領補佐官の声明を発表、「無実の市民をイラクの自己利益追求のための手足として使うことは、国際法と国際的行動規範に反する」と厳しく非難した。声明は、イラク側の二つの声明に対しブッシュ大統領自身が「大いに困惑し、深く懸念している」としている。

また声明は、イラク政府に「国連安全保障理事会議長が17日、イラクとクウェートに残留する外国市民の置かれている状況に「憂慮と不安」を表明し、国連事務総長に「適切な措置」をとるよう要請したことに「留意」するよう求めている。

【エキスポランド】ヒグマ脱走、500人避難

18日午前10時40分ごろ、大阪府吹田市の万博公園内にある遊園地「エキスポランド」の「くま牧場」で、飼育中のヒグマ1頭が観覧用の囲いから出て飼育係の作業区域内をうろついているのを飼育員が見つけた。

エキスポランドは牧場内にいた親子連れ2人を含め園内にいた約500人を園外に避難誘導する一方、飼育係が麻酔やりを使って午後2時ごろ、クマを捕獲、クマ舎に戻した。

混乱やけが人はなく、エキスポランドは捕獲後から営業を再開したが、「くま牧場」は数日間休園の予定。《共同通信》

【米・ヤイター農務長官】安倍氏らと会談

来日中のヤイター米農務長官は18日夜、山梨県富士吉田市内のホテルで自民党の安倍元幹事長、加藤政調会長らと夕食を共にしながら約2時間半、会談した。会談は加藤氏の呼び掛けで三氏の家族を交えて行われた。

焦点の日本のコメ市場開放問題については加藤氏が「きょうは家族同士の会食だし、コメの話はよそう」とくぎを刺したこともあり、コメをめぐる論議は一切出なかったと一されている。これに先立ってヤイター氏は山中湖近くにある後援会事務所に金丸元副織理を表敬訪問したが、会談の一内容は明らかにされていない。

加藤氏によると、安倍氏らとの夕食会での話題は中東情勢やソ連問題など国際情勢が中心。加藤氏がイラクに対する米国の経済制裁について「食糧も入るのか」とただしたのに対し、ヤイター氏は「もうやっている。ただ、間にヨルダンが立っているので…」と述べ、ヨルダンルートがあるため食糧の全面禁輸は難しいことを説明した。《共同通信》

【中山太郎外相】サウジ・サウド外相と会談

中山外相は18日午後(日本時間同日夜)中東五カ国歴訪の最初の訪問国サウジアラビアのジッダ入り、同午後3時(日本時間同午後9時)すぎから、市内の迎賓館でサウド外相と約1時間10分会談した。

この中でサウド外相は、イラクのクウェート侵攻について「国際秩序に対する挑戦であり、地域の問題を超えた世界的な問題だ」とイラクを強く非難した。その上でサウド外相は、日本の可能な範囲であらゆる協力を要請、具体的に①サウジアラビアの安定確保のため運輸面での協力②対イラク経済措置により困難が大きくなっている国への支援–を求めた。

これに対し中山外相は、サウジアラビアの立場を支持する考えを表明するとともに「最大限の支援を考えたい」との意向を伝え、具体策については帰国後、海部首相に報告した上、早急に対応する考えを示した。また中山外相は、今回の海部首相の訪問延期措置について理解を求め「国連総会直後の10月上旬に訪問を考えたい」と正式に10月上旬訪問の意向を伝えた。

サウド外相は今後の中東情勢の見通しについて①イラクは総力を挙げて予備兵も含め(兵力を)動員している②さらなる侵攻の可能性もあるし、軍事的脅威も減っていない―と指摘、イラクの軍事展開に強い危機感を表明した。同時にサウド外相は、イラクはイスラエルの占領地問題などに目を向けることによって一部アラブに影響力を与え、ただでさえ不安定な地域に痛手を増やそうとしているとの考えを示しながら「当事者であるサウジアラビアを支持してもらいたい」と中山外相に支援を要請した。

中山外相は「日本の基本的「な問題として憲法の考え方、国内法制があるので、その範囲内で考えたい」と、憲法の枠内での最大限の支援を約束した。《共同通信》

【海部俊樹首相】外務省首脳と協議

海部首相は18日午後、滞在中の都内のホテルに栗山事務次官、渡辺外務審議官ら外務省幹部と有馬内閣外政審議室長を招き、政府が取りまとめを急いでいる中東情勢に対する貢献策の策定状況やイラク、クウェートの在留邦人保護問題を中心に報告を受けた。

この席で外務省側は、現段階での貢献策案として①医療・運輸・通信関係の国際緊急援助隊の派遣②多国籍軍に対する財政支援措置として、非軍事的後方支援分野での米軍チャーター機の経費分担③紛争周辺国に対する経済・技術支援―などの内容を説明した。また、貢献策を今月中に決め、公表することで一致した。

邦人保護ではイラクによる在留邦人の出国禁止通告という厳しい情勢を踏まえ、外一務省が粘り強い外交交渉で問題の決着を図る方針を示し、首相も了承した。

貢献策案は外務省内に設置されたプロジェクトチームが、ほぼ全省庁から意見を聴取してまとめた。このうち国際緊急援助隊は1987年9月の「国際緊急援助隊派遣法」により、それまでも実施してきた海外での災害援助を法的に裏付け、地震などの大災害に対する救助、医療、復旧面で要員を派遣して援助活動を行っている。

ただ、派遣目的が「災害」に限定されているため、今回のような「戦争」の危機が迫っている地域に要員を派遣するには同法改正が必要となる。政府はイラクとの緊張が続くサウジアラビアへの要員派遣を優先的に考えており、秋の臨時国会で同法を改正する方針。




8月18日のできごと