平成2707日目

平成8年6月6日(木)

1996/06/06

【京都・京北病院】筋弛緩剤で「安楽死」か

京都府京北町の京北病院=Y院長(58)=で4月、入院中の末期がん患者に対し院長自らが、呼吸不全を起こさせる筋弛緩剤を投与し、直後にこの患者が死亡していたことが6日、明らかになった。京都府警捜査一課は院長が「安楽死」させた疑いもあるとみて、殺人容疑で院長から事情を聴くとともにカルテの提出を求めて捜査を始めた。

Y院長は「本人の意思確認はないが、殺人という意識は全くない。(法の)裁きには従う」としている。本人へのがん告知はしていないという。医師の薬物投与による「安楽死」は、平成3年の東海大「安楽死」事件以来で、終末医療の在り方、安楽死、尊厳死の要件についてあらためて論議を呼びそうだ。

Y院長によると、この患者は同町内に住む40代の男性会社員で、院長とは20年来の知人だった。6年9月の住民検診で胃がんが見つかり10月に入院、手術したが、昨年秋には肝臓に進行がんが見つかり、今年4月1日、最後の入院をした。この際、家族とは口頭で①延命治療はしない②苦痛は取り除く−という合意をしていたという。

4月下旬には、腸閉塞がひどく、腹部の病巣が皮膚を突き破りそうな状態になり、鎮痛剤のモルヒネを注射してもけいれんが治まらなくなったため、院長はモルヒネの投与量を増やし鎮静剤の静脈注射をしたが、功を奏さなかった。 血圧が極度に落ち込み、患者の妻が「もう苦しませないで」と泣き叫んだため、院長が筋弛緩剤を点滴の中に入れて投与することを決断。自らが点滴を開始した。数分で患者は死亡したという。

Y院長は「生から死へのスムーズな移行も医師の仕事だ。殺人という意識は全くない。本人、家族と薬で安楽死させるという合意があったとは、言えないが、あの状況では仕方なかった。捜査には協力を惜しまないし(法の)裁きには従う」と話している。筋弛緩剤のことは家族に約1カ月後に話したという。

「私は医師として、信念を持ってこの行為をしました」。Y院長は6日夜、京北町役場で会見、自らの行為を振り返った。

Y院長と患者は20年来の友人だった。入院中、患者は、のたうち苦しみながら死ぬがん患者を多く見ていた。 院長は「奥さんの強い要望で、患者に末期がんを告知できなかった。安楽死についても患者本人と言葉で合意を交わしたわけではなかったが、しかし患者は他の患者の苦しみ方を見て『もし自分なら、早く楽にしてほしいよ』と言っていました」と語った。

続いて「安楽死が法的に認められてない現状で『あなたの死の苦しみを取り除いてあげる』という約束ができるでしょうか」と、真っ赤に充血した目でつぶやいた。

報道陣から「家族の合意はあったのか」と質問が飛ぶと「死の10日ほど前、奥さんから、苦しんだらとにかく苦痛を取ってと頼まれた。自分としては(合意は)あったと思う。死ぬ間際に人工呼吸など蘇生術をすることに、どういう意味があるのかと常々疑問に思っていた」という。

「もし筋弛緩剤を投与しなくても、患者は間もなく亡くなった。他の医者でもそうしたはずだと今も確信している。しかし、患者の凄惨な苦しみに一瞬、われを忘れていたかも」と当時の心中を振り返り、最後に「多くの人の死の苦しみを見て安楽死は認められるべきだと思う。生から死へのスムーズな移行も医師の務めだ」と言い切った。《共同通信》



【関電・黒部ルート】第1回見学会に14人が参加

富山県の秘境・黒部峡谷に関西電力が発電所の工事用として建設した「関電・黒部ルート」の第1回見学会が6日、一般から公募した14人が参加して行われた。見学会は黒部川流域の観光開発を図るため、工事用の同ルートの一般公開を目指す富山県が関電に呼び掛けて実現した。

富山県は見学会を足掛かりに同ルートの一般開放を目指しており、関電との間で「黒部川流域調査検討委員会」を設置、安全性の確保など総合的に検討している。しかし、環境保護団体などは自然破壊につながると強く反対している。《共同通信》

【住専法案】衆院特別委で可決

住宅金融専門会社(住専)処理法案、金融関連法案など6法案は、6日午後の衆院金融問題特別委員会で、自民、社民、さきがけなどの与党3党の賛成多数で原案通り可決された。新進党が「審議不十分」と抗議する中、与党側が採決を強行した。

これを受けて衆院議運委理事会は7日午後2時からの本会議開会を決定した。6法案は同日中に衆院を通過、参院に送付される。参院は10日の本会議で趣旨説明する予定で、与党は19日までの会期内に成立させる方針だ。《共同通信》

【政界談話室】

○・・・橋本龍太郎首相は6日、衆院金融問題特別委員会が休憩に入ると、8分間で昼食をとり、衆院本会議へ向かう過密日程。首相は「体育会出身だから。生存競争が厳しいんだ」と、剣道で鍛えた体力をアピールしたが、記者団から「食後の一服は」と水を向けられると「当然」とニヤリ。「衆院議院運営委員会が各委員会室を全面禁煙にする方針を固めたが」との意地悪質問には「ポイ捨てや、他人の嫌がる所で吸うのはいけない」と正論でコメントしたものの「絶対に許さないというのも異常じゃないかな」と不満たらたら。愛煙家の首相には会期末が待ち遠しい?

○・・・社民党の佐藤観樹幹事長はこの日の記者会見で、住専処理法案について「社民党は自民党以上に住専処理スキームを守ろうという姿勢が強かったが」と指摘され、「国民に負担を掛けたくないという気持ちはあるが…」とぽつり。村山前内閣でスキームを決定、書記長だった久保亘氏を蔵相に送り出している立場だけに歯切れが悪く「追加負担は、もう少し時間をかけて」「基本スキームを変える方法を見いだせない以上、責任ある対応をする必要があった」と弁明。苦しい表情の佐藤氏は「新進党も解決するための対案を出していない」と、いつしか矛先を野党に。《共同通信》



6月6日のできごと